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2018年01月20日23:18

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ジェローム・ベル 『Galaーガラ』

2018/1/20土 15:00- さいたま芸術劇場

構想・演出:ジェローム・ベル

出演(埼玉版キャスト):
相澤陽太、新井悠汰、入手杏奈、梅村千春、
Elhadji Ba、大北 岬、オクダサトシ、金子紗采、
川口隆夫、木下 栞、佐々木あゆみ、竹田仁美、
BIBIY GERODELLE、百元夏繪、星 遙輝、堀口旬一朗、
矢崎与志子、吉田駿太朗、吉村 計、李 昊


とある方から勧められて、とりあえず見ておこうと行ってきました。

なるほど!これは、一度観ておくべき作品、というか公演だな、と・・・。感動した!涙出た!という感想をネットでも多く見かけましたが、私はそれと同時にいろいろと考えさせられました。まだ頭がまとまっていないのですが、熱いうちに感想を残しておきます。

出演者は16人。アマチュアやダンス素人が出るとの触れ込みだったのですが、埼玉版キャストはむしろプロの中に素人が混じっているという感じだったような。そのためか、ダンス公演としての完成度は思ったより高かったです。

今日は約80分のステージでした。

最初は、劇場の写真から。様々な劇場が登場するのですが、今まで上演してきた劇場なのでしょうか?その後、パフォーマンスが始まります。ステージ下手に大きな掲示板みたいなものがあって、ここに指示が書かれている。今日の最初の指示はバレエ、その次はBOW(お辞儀)、そしてマイケルジャクソン(だったと思う)。出演者が一人ずつ、この指示に従って即興のパフォーマンスをします。

衣装はまちまちで、一見してバレエダンサーと分かる人もいるけど、動きを見ていくうちに、ああこの人は日本舞踊の人だ、この人は体操だ、、、などと動きで徐々にバックグラウンドが分かってくる人も多い。ダンス界の大御所、ドラァグクイーン、バトントワラー、などその道を極めたプロの方々が多くて、次に子供/ハンディキャップがある方など社会的弱者がいらして、いわゆる普通の方は少数派だったように感じました。

出演者のバックグラウンドは全然違うから、同じテーマで似たような動きをしても、個性はバラバラ。最初に受け取るメッセージは、メンバーの多様性です。

そのうちにメッセージが変わり(間いくつか飛ばしてますが)、COMPANY COMPANYが始まります。誰か一人が自分の得意なダンスを踊って、他の人達がそれを真似して一緒に踊るという指示。海賊のアリのバリエーションとか、ものすごく高度なバトンの演技とか、日本舞踊とか、ドラァグクイーンのセクシーダンスとか、子供のひたすら走り回るダンスとか、そういうのをみんなが物凄く一生懸命に一緒に踊ろうとする。誰もが上手くできるわけじゃなくて、失敗だらけなんだけど、でも、みんなで一つのことをやっているのがとっても楽しそう。それぞれ違っていて同じことはできないんだけど、一緒にやろうっていうだけで楽しいよね!幸せだよね!これが、最後に受け取るメッセージ。

出演者が楽しんでいるのが伝わってくると、客席も拍手したり掛け声かけたりして盛り上がります。自分も参加したような気分になり、最後は多幸感で涙がにじむ。まずは、そういう公演でした。

ワークショップを見てるみたいだなと思ったんですが、あとでパンフを読んだらやっぱり、パリ郊外でのアマチュアとのワークショップが元になってるんですね。なるほど。

終演後の観客の拍手は凄く大きくて、うん、これ感動する人は多いよね、これまで絶賛されてきたのが分かる、と思いました。構想と演出だけで、振付はしないし、出演者も場所ごとに変わるのに、特定のメッセージを伝えられるジェローム・ベルって凄い。

とは思ったのですが、なんか違和感が。

いやこれ、お金払って観るものなの?と。誤解のないように補足すると、パフォーマンスが値段に見合ってないということを言いたいのではなくて、「喜びにあふれた多様性が共同体を成立させる」(←パンフより)この感動は、お金払って劇場で観て満足してていいものなの?そうじゃなくて、私達が日々の生活でそれを感じられるようにするべきじゃないか。

今回提示された多様性って何だろうってことも。ここで表現されてたのはあくまでダンスの文脈でみた多様性であって、社会の多様性じゃない。

さらに、社会的弱者、具体的には知的/身体的なハンディキャップがある人のダンスに拍手が大きかったんだけど、その拍手は何だろうとか。応援する意味の拍手であって、素晴らしいパフォーマンスに対する拍手ではない。それって観客がパフォーマーに対してする拍手とは違う。ベルは多様性を感動的にするために、この人達の存在を「使って」いるんじゃないか。

なーんてことをいろいろ考えさせられる公演でした。たぶん、本当の意味を理解するにはもっといろいろな知識が必要で、大衆受けする作品と見せかけて実は理屈屋さん向けの作品。凄いですねジェローム・ベル。

舞台好きの方は、ぜひ一度はご覧になってみることをオススメします。2回は観る必要ないけど。
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