2018/1/13土 13:00- シアターコクーン
原作:『PLUTO』(浦沢直樹×手�犲Ｃ� 長崎尚志プロデュース 監修／手塚眞 協力／手�爛廛蹈瀬�ション)
演出・振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
上演台本:谷賢一
森山未來＜アトム＞
土屋太鳳＜ウラン／ヘレナ＞
大東駿介＜ゲジヒト＞
吉見一豊＜お茶の水博士＞
吹越 満＜アブラ―＞
柄本 明＜天馬博士＞
ダンサー：上月一臣、大植真太郎、池島優、大宮大奨、渋谷亘宏、AYUMI、湯浅永麻、森井 淳、笹本龍史
芝居はほとんど観ないのですが、私のご贔屓の振付家の一人・シェルカウイが演出・振付ということで興味を持ったプルートゥ。2015年の初演を観たときは二度観たい作品とは思っていなかったのですが、2018年はヨーロッパツアーも予定されているということで改訂されているのではと思い、ほぼ完売の土日チケットを後から何とか手に入れて行って参りました。手塚治虫と浦沢直樹が結構好きという原作ファンでもあります。
楽しかったです！初演のときよりも満足度高かったな。
初演との違いを詳細に把握はできなかったのですが、特に後半の人間関係が複雑なところが分かりやすくなっていたように思いました。あと、ダンスシーンは結構増えていたような。ダンスが冗長と感じるほどではないですが。
初演とキャストが変わっていたのは、ウラン／ヘレナ（初演は永作博美さん）、アブラー（初演は松重豊さん）、そして主役ともいえるゲジヒト（初演は寺脇康文さん）。ゲジヒトとヘレナの夫婦は若返っているので、あのキャラ達の静かな深みが果たして表現できるのかしら？と心配していましたが、二人ともとてもよかった。太鳳さん、ダンスだけじゃなくて演技も本当に上手いですねー！すんばらしい。
森山さんのアトムは、前回よりももっと、淋しい感じがしたかな（いいと思う）。私はダンスから彼を知るようになったのですが、日本では本当に貴重な、実力と一般の方の間での知名度が両方高い若手俳優・ダンサーだと思います。
あと、吹越さん、流石だなぁと思いました。本当に複雑な・・・悪魔的であり、でも、温かな血の通った人間的でもあり、人とロボットの間にもある・・・というキャラクターを、説得力を持って演じていらっしゃいました。
他のキャストもみんな秀逸。ブラウ1589やテディベア姿の狂信的なAI・Drルーズベルトの声を演じた吉見さん、柄本さんも実にお見事。あの2つのキャラの得体のしれなさってこの作品の肝の一つだと思います。
そして、ダンサーさん達！今回、ピンで踊れるダンサーさんも何人も入っていて超豪華。特に私が最近ご贔屓の湯浅永麻さん、サハドの過去の証言者の役もついてて驚きました！初演のときはダンサーの動きはマニピュレーター（ロボット役の方々についていて、その体の動きがコントロールされていることを表現する）としての印象が一番強かったのですが、今回はむしろステージセットとしての印象が強かったです。
作品について。
初演のときと同じ感想になりますが、プルートゥはかなり長編の漫画で主要な登場人物も少なくはなく、プロットも単純ではありません。原作を忠実にたどりながらもよくこれだけ短くしたなという部分に原作ファンとしてはまず感心。作り手が原作を心からリスペクトしているのが伝わってきました。
特徴的なのはステージセット。漫画のコマの形をしたブロックがいくつかあって、それを組み合わせることでステージの景色がいろいろ変わっていきます。このブロックを動かすのはダンサーの役割。舞台がやれ日本だドイツだトラキア共和国だ、過去だ現在だ、とあちこちに飛ぶので、抽象的なセットにした方が、かえってストーリーを理解しやすいし場面転換にも時間がかからないという判断も入っていそう、と思いました。
あと、原作の漫画がステージ上に投影されるシーンも多数。これとってもシェルカウイらしい（TeZuKaのときもこういうことしてた）し原作ファンにとっては楽しいのですが、原作知らない人にとってはどうだったかな？
ブラウの表現はやっぱり見事だなぁと思います。おもちゃみたいなロボットだな、と思われる方がいるかもしれないけど、原作に本当に忠実なんですよ！そして頭の部分と手の部分を違う人が操ってまるでロボットが生きているように見える仕組み、これ、文楽をヒントにしたのじゃないかしら。プルートゥは姿を見てがっかり、という方がいらしたかもしれないけど、これまた原作もその通りで・・・。本当に、原作へのリスペクトに溢れた舞台作品に仕上がっています。
最後の反陽子爆弾のくだりは布の使い方は面白いなと思うんですが、演出というか台本自体にもうちょっと工夫が欲しかったかなあ。確かに漫画もあっけない終わり方ではあるのですが、舞台だと最後に何かカタルシスっぽいものが欲しくなりますね。
今回あらためてプルートゥを見て、ああこの舞台ってデジタル時代の演出な感じがするなあ、と思いました。舞台と客席が違う次元にいるような感じがあったせいかな。このストーリーはSci-Fiだし、同じ次元にある感じがすると、感情を持つロボットは人間に見えちゃうだろうなと思いました。その感覚が絶妙だなと思います、シェルカウイ。
2015年「プルートゥ」初演時の感想はこちら
http://kikoworld.blog.fc2.com/blog-entry-57.html
2012年2月シェルカウイ振付のTeZuKa（テヅカ）の感想はこちら
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1825671118&owner_id=2438654
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