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2017年12月30日00:40

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ジャッキー×インド映画=ほぼジャッキー映画「カンフー・ヨガ」を観た。

 今期最大の困惑作品。どうしよう……。

●洋画「カンフー・ヨガ」(原題:kungfu yoga)

【あらすじ】

古代、天竺と唐の間に起きた騒乱の末、伝説の秘宝が消えた(中略)考古学者のジャック(ジャッキー・チェン)の秘宝を巡る旅が今始まる!


【最高の素材と否応が無しに上がりまくるハードル】

「カンフーとヨガが出会う時、1400年の秘宝が蘇る!」(公式キャッチコピー)

 そしてメインビジュアルには広大な宇宙をバックにヨガのポーズを取るジャッキーチェンと、ついでにタイトルロゴにはカンフーとヨガの構えを取る二つのシルエット。「カンフー・ヨガ」という直球すぎるタイトルと、PVでインド映画よろしく、大衆とともに満面の笑みで踊るジャッキーチェンの姿! 第1印象は「すげえのが来た」だ。もうバカ丸出しの、そんでもってそんなバカ映画ファンのための最高のクリスマスプレゼントが来たんだと。これで観に行くなという方が無理な話である。

 この通り、この映画は最高のスタートを切ってみせた。題材からして良い意味で知性の感じられない、小中学生がその場のノリで考えたようなネタを、巨大なアジア資本にのって大作として作られてしまう。これはきっと今年最大のB級娯楽映画になるに違いない! そう信じて観に行ったのだが……映画を見終えたあと、微笑み忘れた顔で出ていく自分の姿がそこにあった。


【良くも悪くも先が見えないカオスな珍道中】

 OPである天竺と唐の間で行われた合戦、これが何故か全編フルCGで超人的な武将が兵士を蹴散らすさまは「三国無双」のOPムービーを見ているかのよう。「これってカンフー・ヨガだよな?」と思いつつも、日本語版ジャッキーでおなじみ石丸さんのボイスで現実に引き戻される。タイトルから予想もつかない意表を突きすぎるOP、思えばこれが暗雲立ち込める旅路の始まりであった。

 適当に切り上げたあらすじを見て察してほしいが、本作はいわゆる秘宝探索もので、よくある運動神経が異様に優れた考古学者が、悪の組織に追われつつアドベンチャーする話で、要は頭空っぽにして見れるのが魅力のはずだった。劇中でも「まるでインディ・ジョーンズだ」とか白々しいセリフもあるし間違いない。ただ、どうにも秘宝の話がまるで頭に入ってこない。

 ジャッキーチェンが中国を代表する学者で、カンフーの達人、ここまではいい。むしろこれだけいい加減な設定だから適当に流せばいいのに、思ったより秘宝に関するうんちくというか、観ている側が興味のないであろう解説パートが多い気がした。「伝聞では将軍は滝の中に逃げたから、下流を探そう」とか「中国の古代星座は27つあり……」とか、どこか真面目に調査パートをしっかりやろうという思惑が、こちらが観たいものと上手くかみ合ってない感覚。

 だって「カンフー・ヨガ」なんだから、「古代の将軍は秘宝の在処をヨガの奥義に託した。この悟りのポーズの指先に財宝は眠る」とか、「天竺と唐が接触し、カンフーとヨガが合わさり最強の拳法が生まれた、その秘伝書を手に入れるべくアメリカの軍隊が動いた」とか、もっとふざけた内容でいいのに。このままだとミイラ不在の「ハムナプトラ3」になっちゃうよ!

 が、秘宝を巡る旅としてはかなり頑張っていて、全面氷の氷原地帯から富裕層だらけのドバイに、そしてインドから謎の遺跡へと、目まぐるしく変わる舞台と風景は世界旅行をしているようで楽しかった。もっとも、なんであっち行ったりこっち行ったりしてたのかは、ちゃんと映画観ていたはずなのによく覚えてないんだけど。


【一級のアクションと、欲を言えばもう一捻りを】

 という不満を随所で解消するためか、定期的に起きるアクションパートは流石の一言。銃があるのに何かと理由を付けて肉弾戦になるのはお約束で、ジャッキーのカンフーは歳を経て動きのキレこそ落ちたものの、逆に最小限の動きで的確に敵を打つ老練な動きへと変化していて面白い。またサブキャラも一般人のくせに全員カンフーの心得があり、戦闘訓練を受けているはずの敵の組織のザコとも渡り合ってしまう。あとジャッキー映画でよく見る「非戦闘員の女性(お荷物)が、キャーキャー逃げ回りつつなんとか撃退」も、さらにキレのある殺陣として昇華されていて、この辺は本当に見事。特にインドの大道芸広場でのヘンテコわやくちゃ乱闘は、おそらくこの映画のベストパートじゃなかろうか。

 が、そういったカンフーアクションは今までのジャッキー映画でも通ってきた道なので、そうなると本作独特のエッセンスが欲しいところだが、そこで「カンフー・ヨガ」という最高の出オチを持ってきたのに、ストーリー的にもアクション的にもイマイチ生かし切れてないのが勿体ないと思った。

 具体的にどう不満かというと、スマブラのWiiフィットトレーナーみたいな変な格闘技を観たかったのは自分だけじゃなかったはずだ。だって「カンフー・ヨガ」なんだから。ジャッキーがヨガと出会ってカンフーをMIXさせた新しい戦闘スタイルを身に着けてくれてもいいじゃないか。少林寺がサッカーと出会う映画とか見習ってほしい。最高のギャグを見逃した本作の罪は重い。


【冒険の果てに手に入れた秘宝とは……】

 エンディングにまつわる重大なネタバレだが、PVで期待したジャッキーのダンスシーンは一体どこへ? 全編あんな感じで愉快なインド映画じゃないの? と期待している人が(自分含めて)いたと思うので、そこだけネタバレするとエンディングで踊ります。軽快に鳴り響く音楽、これみよがしにゾロゾロ増えていくバックダンサー、それまでの展開を全て吹き飛ばすような最高の「これがやりたかっただけだろ感」が場内を包む。思えばこの最高のダンスを見るためだけの長い1時間半だったのかもしれない……そんな悟りの境地が開けてくる感動のシーンだ。

 が、同時に「これが全編でもっとふんだんに使われていれば」という気もしてくる。あの退屈な遺跡パートや、一瞬クスリと笑えるけど全体的に見ればぶつ切りで浮いてしまったシーン(ジャッキーがヒロインにいいところ見せようといきなり木人拳を始めるシーン、狼の群れを追い払うためにいきなり組手を始めるシーンetc)のつなぎに使えれば……きっと全編アドレナリンあふれる怪作になっていただろうに……。

 そんなモヤモヤした気持ちにトドメをさしたのがスタッフロールで、最後の1〜2分ぐらいでまだクレジットが流れているのに、ネタが尽きたのかBGMが止まって、それから無音のまま映画は終る。製作者側としては「もうそろそろ終わりだし、これぐらいいいだろう」という判断だったかもしれないが、こちらとしては「最後の1分も間を持たせられないのか」という残念な気持ちが勝ってしまった。

 総じて言うならば、ちぐはぐな映画だろうか。ところどころで見れば見ごたえのあるシーンもあるし、パワフルでユーモラスなジャッキーも存分に見れる。ただ、映画の5割ぐらい「ここいる?」って感じだし、バカに振り切っているかと思いきや地味なシーンも多い。賑やかなビジュアルやPVを改めて見て見ると、本作の見所をかき集めた一種のPV詐欺だったんじゃないかと思ってしまうほど虚しくなる。

 もっとも、映画.comでは平均以上の評価だし、カオスな作品としてそれなりの評価もされている様だが、個人的には「この題材ならもっと面白くなっただろうに」という肩透かし感が強く、ちょっと人には勧め辛いなと思いました。

 なお、年内の締め映画がこれでいいんだろうかと思い、家に帰って積んでいた「コードネームアンクル」を観たらちゃんと面白かったので、何とか年は越せそうです。
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