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2017年12月29日18:47

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エルネスト


 

 キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと共闘した日系人の生涯を、オダギリジョー主演、阪本順治監督で描いた日本とキューバの合作映画。フィデル・カストロらとともにキューバ革命を成功させ、1967年にボリビア戦線で命を落としたエルネスト・チェ・ゲバラ。医者を志してキューバの国立ハバナ大学へ留学した日系2世のフレディ前村ウルタードは、キューバ危機の状況下でゲバラと出会う。彼の魅力に心酔した前村はゲバラの部隊に参加し、ボリビアでゲバラとともに行動する。ゲバラからファーストネームである「エルネスト」を戦士名として授けられた前村は、ボリビア軍事政権へと立ち向かっていく。オダギリが主人公の前村を演じ、日本からは永山絢斗が記者役で出演。(映画.comより)





 こういう日本人がいたこと、知りませんでした。まして写真家でもあったゲバラ氏が独断で広島を訪ねたこと、また「これだけのことをされて、君たちはどうしてアメリカに対して怒らないんだ」と素直な疑問を口にしていたことなど、知らないことだらけでした。自分は、ベネチオ・デル・トロの「チェ・ゲバラ」の2部作や「モーターサイクル・ダイアリーズ」も見ましたし、そこそこ知っているつもりでした。恥ずかしい。

冒頭は、理想に燃えて医学部に進学した前村さんなど、若き医学生たちが描かれます。奨学金を得て進学してきた彼らは、より優秀です。それで、政変著しいキューバにおいて、ゲバラもドクターだったからか、あるいはゲバラ自身で将来のある若い人たちに会う機会を積極的に作っていたのか、ともかく彼らはゲバラの話を聞く機会を得ます。そしてその熱い話と人柄に惹かれた前村さんは「これから自分がすべきことは?」と尋ねます。すると「自分のすべきことなんか、人に聞くな」と諭されます。「理想を強く持っていれば道は開ける」そんな意味のことも言ってたと思います。いや、本当に、「人に聞くな」のインパクトが強かったです。まったくそうですよね。

母国ボリビアで政変が起きたときも、居ても立ってもいられず、学校を休学して「母国での政治活動に参加する」と言いだし、学校長に「国は君たちの優秀さに未来を賭けてお金を出している。それを裏切るつもりか」と諭されます。結局折衷案として、僻地での予防接種や基本の単位を取得することを条件に、休学を許可してもらいます。

それでも、理想に燃える人生というのは障害も多く、うまくはいかないものです。母国ボリビアで死ねたことがせめてもの救いかもしれません。彼は志半ばにして、ボリビア軍の兵士に捕まり、処刑されてしまうのです。まだ25歳の若さでした。悲しいですね、これほど優秀な若者がこんなに簡単に亡くなってしまうなんて。

私は、この映画のおかげで、日系にこんな若者がいたことを知り、とても勉強になりました。ただ、一観客として(あくまで素人目線で)言わせてもらうと、ただ事実を羅列しただけで映画全体のメリハリに欠け、話全体がわかりづらい感じになっていたように思います。阪本順治監督の作品は、「闇の子供たち」のように大きな衝撃を受けたものもあるのですが、「KT」やこの作品のように、名作のはずなのに印象が散漫なものもあるように思います。もちろん、受取手(私)の能力にも問題があるのでしょうけれど。

しかしながら、オダギリジョーの熱演には目を見張るものがありました。スペイン語も、吹き替えてあるのかと思うほど自然で、また、普段はあれほど存在感のあるスターでありながら、この映画では真面目で感じのいい青年を自然な感じで演じきっていました。うまいものですね。今作は、オダギリジョーを見るだけでも価値があるかもしれません。機会があれば、是非。

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