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2017年12月10日12:00

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(書評)杉田誠(著)「総点検・真珠湾50周年報道」(森田出版・1992年)

(書評)杉田誠(著)「総点検・真珠湾50周年報道」(森田出版・1992年)
https://www.amazon.co.jp/%E7%B7%8F%E7%82%B9%E6%A4%9C-%E7%9C%9F%E7%8F%A0%E6%B9%BE50%E5%91%A8%E5%B9%B4%E5%A0%B1%E9%81%93%E2%80%95%E4%BD%95%E3%81%8C%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%8B-%E6%9D%89%E7%94%B0-%E8%AA%A0/dp/4795278059/ref=cm_cr-mr-title




総点検 真珠湾50周年報道―何がどこまでわかったか

総点検 真珠湾50周年報道―何がどこまでわかったか
杉田 誠著
エディション: 単行本




5つ星のうち 5.0


出版後25年を経た今読んでも多くの事を教えられる名著の中の名著,

2017/12/8




総点検 真珠湾50周年報道―何がどこまでわかったか (単行本)



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 戦争の直接原因を作った陸軍、海軍が敗戦によって解体されたあと、この悲惨な戦争の直接の責任を負う省庁は外務相だけになった。当時、陸軍、海軍が専横をきわめていたことはたしかだが、しかしそれでも、外務省がもっとたしかな政策をたてていれば太平洋戦争は回避できていたことはたしかだ。まして事務的ミスによって、事前通告を実行できなかったという失態については、国民にいくら詫びても詫びきれるものではない。その外務大臣が終戦の日に靖国神社に参拝しないとはどういうことなのか。外務省の誤った政策によって戦争が避けられず、そしてその失態によって「騙し討ち」となって最大限に拡大した戦争において、死ななくてよかったであろう多くの将兵、市民が死に、そして祀られている靖国神社に外務大臣が参拝しないでよいのだろうか。死んだ将兵や市民に礼をつくさなくてよいのだろうか。外務大臣に就任する者はこの立場を理解し、礼をつくしうる者でなければならない。
 以上のことは、総理大臣についても政府の代表として同じことが言えるが、直接の省庁の長たる外務大臣が参拝せぬゆえに、靖国神社はあたかも軍国主義の象徴かのような印象を国民や諸外国に与えることになってはいないか。

(本書27ページ)

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 この本は、真珠湾攻撃(1941年12月8日)から50年目の1991年に、真珠湾攻撃について、日本国内で為されたテレビ報道、雑誌の特集、出版された書籍などを、翌年の1992年に、1941年生まれのジャーナリスト・杉田誠氏が総括した一書である。
 1992年の本であるから、出版されて25年の時間が流れて居る。しかし、真珠湾攻撃から76年が経った今日読んでも、極めて多くの示唆に富んだ、名著である。本書は、第1部「総点検・真珠湾50周年報道」、第2部「主要な論点は何であったか」、第3部「その他の紹介すべき史実、見解」の3部構成で成り立ち、1991年の時点における日米両国での真珠湾攻撃についての認識、その時点(1991年)までの日米両国での研究が明らかにした事実などが、まとめられて居る。又、その中では、アメリカ国民に真珠湾攻撃が「だまし打ち」であったと言ふ誤解を与える原因と成った駐米日本大使館の宣戦布告通告の遅延問題が、事細かに検証されており、その点でも、貴重な研究書と成って居る。
 真珠湾攻撃については、1990年代後半に至り、ハル・ノートを書いたハリー・デクスター・ホワイトが、実は、ソ連の協力者であった事が旧ソ連の情報関係者の証言などから明らかに成って居る。杉田氏がこの本を書いた1992年には、その事実は、まだ確認されて居なかった。従って、本書は、ソ連情報機関がハル・ノート作成に関与して居た事実には言及して居ないが、その段階で書かれた本としては、本当に、見事な内容である。
 杉田氏は、ルーズヴェルトが、日本軍の真珠湾攻撃を知って居たかどうか?の問題については、1941年12月6日に、スチムソン、ノックス、マーシャル、スタークの4人を呼んで開いた会合に注目する。そして、真珠湾攻撃の直前、ルーズヴェルトが開いたこの会合の存在が、記録から抹消されて居る事実に注目して、「この会議を歴史の記録から消したこと、そのことじたいが、真珠湾攻撃に関する何らかの情報を得ていた、という決定的間接的証拠となる。」(本書167〜168ページ)と述べ、ルーズヴェルトが真珠湾攻撃を知って居た可能性は相当高いと見る立場を取って居る。
 1991年までの日米両国での真珠湾攻撃に関する議論を見事にまとめ、それらを公平に概観、分析した名著である。真珠湾攻撃に関心を持つ人は、是非、読んで欲しい。

(西岡昌紀・内科医/真珠湾攻撃から76年目の日(2017年12月8日(金))に)




http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/9018883.html


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