mixiユーザー(id:14921690)

2017年11月28日06:25

209 view

至高の人、底辺に立つ

昨夕は義父母が義父の実家であったという法事から帰り、途中で買った土産物を持参して我が家に届けてくれた。チビたちはまだ保育園で家内は就労中だったため僕ひとりの出迎えであった。
一緒にチビたちを迎えに行きひと目会おうという運びであったので時間調整に義父母はテレビを点けて観始めたのであったがこれが実はエラいことであった。

通常我が家でテレビを観る時はテレビの音量目盛りを20程度にしてうるさくないよう近隣に配慮をしているのであるが、耳の遠い古希まであと数年の義父が音小さいなあと音量を上げた際の目盛りはなななんと33の大音量であった。
傍でテレビを観ていた義母はこないだまでは義父のテレビ大音量に辟易していたはずが一緒になってああ聞こえる聞こえると言い始めたではないか。さては義母も耳が遠くなったか?
更に義母がこう言ったのに唖然とした。
「テレビが小さいから音も小さいね」。

おいおいおい。そりゃあお宅の47インチの大画面に比べれば拙宅の32インチは小さかろうが、そもテレビの大きさで音量の大小が決まるものでもなかろうが(-_-)。
そうしてふたりは近隣が気になるほどの大音量で録画のドラマを観だして喜んでいた。挙句義母に至っては急ぐからと言って1.5倍速で観始めたところ、傍からは演者のセリフがまったく理解できないほどの早口となりこれ本当に義母には理解できているのかと疑った。
案の定義父がこれじゃ早口でよくわかんないよと言い始めたところ義母は、
「別にいいの。このドラマあんまり面白くないし」。

だったら観るなよ(-_-)。まあ義父母たちは悪い人たちではないのであるが一事が万事こんな調子なのでボクときどきすんごくくたびれます(T_T)。
あ、お義父さんお義母さん、小布施の栗かのこのおみやげをありがとうございました。
法事が済んで配布されたお花もたくさんいただいた。なんでも本家の三十三回忌だったので法事というよりはお祭りだったそうです。田舎の人たちってすごいよね。

昨日録画したNHK教育の「ハートネットTV」を久々に観た。障碍者や差別やいじめといった社会の暗部にスポットを当てる貴重な番組ながら観るのは久しぶりだった。
愛読A日新聞の視聴室欄で紹介されていた番組のタイトルはこうだった。

「革命の障害表現 劇団態変 金満里」

なんと身障者だけの舞台パフォーマンス集団がありその代表を追ったドキュメンタリーであった。観ていて心がヒリついた。
劇団の名が「態変」である。これを主宰するは在日コリアン二世の女性金満里さん64歳である。
四肢不全や重い脳障害などで身体に不具合のある障碍者たちがあえて身体の形状が判りやすくなるレオタードを身にまとい舞台で前衛舞踊を行う舞踏集団である。

ドキュメントとスタジオで金さんを囲んで案内人と鼎談するという番組進行であったので、金さんが意図するところの話をしっかり聞くことができてたいへん有意義であった。
金さん自身が重い障碍者であり3歳の時にポリオに罹患して以来首から下がほとんど機能しないという状態である。

幼少より障碍者施設に入れられそこでは邪魔者扱いされるなどしてそれは辛い不遇の時を経験したとあり観ていて心苦しかった。当時はいまほど身障者へのケアも理解もなく本当に「醜い邪魔者」扱いの冷遇であった。そういう時代であったのだ。
その辛さをバネに自身の生涯を障碍者の人権獲得のために捧げようと決意して当時障碍者向けの人権団体に所属して活動に加わったものの思うような成果を得られず苦悶していたとあった。

そこで逆転の発想を得て自身が醜いのであればそれをあえて見世物にして世に訴えかけようと劇団立ち上げの一世一代の大勝負に出たのであった。ここでいう大勝負とはもちろん自身たちの存在意義を問う闘いであった。発足当初は世間から気味悪がられてしまい辛い船出とあったが、岩をも通す一念で活動をひたすら真摯に行った結果現在ではそのパフォーマンスを高く評価されるにまで成長したとありすごいし偉いと思った。

金さんは言う。美と醜は表裏一体であると。醜いからこそ追求できる美があるはずだと。
その精神の気高さと強さを知りただただ敬服に至った。
金さんはさらにこうも言った。世間は差別に満ちている、と。われわれ健常者が二足で普通に歩くこと自体からすでに差別は始まっていると。耳と心が同時に痛んだ。

昨年起きてしまった津久井やまゆり園の凶悪事件にも触れていた。
あれは一殺人鬼が起こしただけのものではない。我々障碍者に対する差別や無関心が起こしたものであり世間の誰もが加害者なのだ、と。そう言い切った彼女の覚悟に朝も早よから涙が出そうになった。

そうだよね。我々は普通に生活して普通に日々を送っているが、さて健常者って何であろうかと考えたことなどそうそうない。健常が普通であり普通が当たり前となっているが実はそれ自体がすごいことなのだ。

そう感じたら思い出した。かつての日記にも書いたことがある事柄だ。
あの名作漫画「寄生獣」の作者岩明均先生の出世作「風子のいる店」の一話である。奥手で引っ込み思案で吃音が少しある女子高生風子(ふうこ)が喫茶店でのアルバイトを通して世間と向き合い成長していくという佳作だ。

ある日風子がちと怖い会社員風の男にびくびくしつつ吃音もしながら給仕したところ、
「もっとしゃんとしろ!この半人前!」
と辛辣な嫌味を言われてしまい風子はひどく傷つくのであった。

そこでそれを傍で見ていた一見チンピラ風ながら店の常連の若い兄ちゃんが風子に助け舟を出すべく男にこう言った。

「じゃああんたの片足が仮になかったとしたら、あんたは何人前になるんだ?」

僕はこのひと言を得てからああ差別こそこの世で最も卑劣な行為であるなと認識したのだった。
世間では四肢や知能にハンデがある人達を指して障碍者と言うが、僕に言わせれば風子を「半人前」と言った男の方が心にハンデのある障碍者に思えたものだった。

翻って劇団主宰の金さんである。最近も重い障害をもつふたりの男性を劇団に招き入れた。入団した彼らも勇気を得てのことであり偉いが彼らに対して言った金さんの言葉も偉かった。

「さらけ出せ。笑われろ。そこに我々の存在意義があると知れ」。

金さんこそがまさに賢者であり至高の人であるなと感銘した。
朝からとても良い番組を拝見できて今日という日は早くも良き一日となりました。
金さんそして障害と向き合い闘う皆さんの益々のご活躍を祈念いたします。

こちらが金さん。

フォト フォト フォト

そしてパフォーマンス。

フォト フォト

こういうのを同じNHK教育の公演番組で舞台上映してくれるとありがたいが、まだ日本という国がそこまで成熟していないのであるからして当分無理であろう。
いつかそういう世の中になることを僕も希望します。
若人よ。目を背けるな。それを括目せよ。

義父母がくれた花束を家内が花瓶に活け直した。

フォト

ちゃちゃっとやっつけの仕事であるがそこはそれさすが池坊歴十ン年だけあって綺麗に活けてあります。かあちゃん、あんたはエラいハート

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する