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2017年11月20日21:55

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PL記録:ゆうやけこやけ(狐の社で)リプレイ風小説 その3

妖(あやかし)。
様々な種類の妖が存在しているが、大別すると2種類となる。


−−自然から生まれた妖。
狐や狸、山々や大海原。岩や木々が意思を持った者など。
彼等・彼女等はその多くは長い刻を経て自然に成った妖達である。

太古より人間たちは、そう言った超常の者達に対して敬意を払ってきた。
それは時に『神』として祀り上げられる程の信仰となるほどに。

神を敬い、恐れ、感謝を捧げる。
人間たちは暮らしの中に神への祈りを組み込み、神を敬いながら生きてきた。
神達もまた、その関係を善しとして在り続けた。


−−人間から生まれた妖。
やがて人間達は山を拓き、川の流れを変え、海を埋め始めた。
様々な道具を作り出し、町を作り、国を作っていった。
その中で古い妖達は不要とされ、時に邪悪なものとして祓われることもあった。

ここで新しく現れ始めたのが『人に類する妖』である。
人から妖に成った鬼女や、古い道具が成った付喪神、修行を経て成った仙人の類など。
人間自身や、人間に生み出された物から妖が生まれ始めた。

彼等の多くは『人間に悪さをするモノ』『人間を手助けするモノ』として生まれた。
良くも悪くも人間と共に『在るモノ』として彼等は存在した。



『敬われるモノ』と、『共に在るモノ』。
それは、『相手から関係を求めるモノ』と『自分から関係を求めるモノ』でもあった。



===


 

 

かつて尾三輪と呼ばれた土地に、一匹の化け狐がおった。
やがてこの化け狐は長い刻を経て、『狐神』と呼ばれるようになったという。
この地に住んでおった者達は社を拵え、狐神を祀った。

彼女は『夕香』と名乗り、地の名前と合わせて『尾三輪 夕香』と呼ばれた。
人々は彼女を土地神として敬い、彼女を大事に扱ってきた。
夕香もまた、土地神として土地を善きように治めた。

人々は田畑を広げ、家屋を建て、村を作っていった。
戦国の世が終わり、泰平の世が始まる頃には『一名』と呼ばれるようになっていった。

夕香もまた、その発展を大いに喜んだ。
山の上にある社からは、村が大きくなってゆく様子がとても良く見えた。
家が建ち、田畑が広がり、店が建ち、学舎が建ち−−
この頃からだろうか、人間由来の妖もだんだん増えていった。


村はどんどん大きくなっていった。
しばらくして、下の山に八幡神社が建てられ始めた。
『鈴音』と呼ばれる狐神は土地神の夕香を敬い、夕香もまたそれを受け入れた。

八幡神社から、夕香の社へ。
人々は八幡神社を通って夕香の社を訪れ続けた。
夕香は村人だけでなく、鈴音という友を得たことをとても喜んだ。

夕香は己の在り方に満足していた。
彼女は土地神として土地を見守り、そこに生きる者達から敬われる。
500年もの昔から、ずうっとそうやって生きてきたのだ。


−−だから知らなかった。
自身を敬うものが居なくなった時、どうすれば良いのかを。
そうしていつしか、彼女は独りになっていた。
 



===


 


−−ぼんやりしているうちに、狐と狸の化かし合いは終わったみてぇだ。
子狸は、『すごい、すごい!』と夕香を褒めて懐き、
夕香もまたそんな子狸を受け入れて、とても楽しそうに笑っている。

(いや、そりゃ500歳と2歳じゃ勝負にならねぇってもんよ)


何とも言えない気持ちを火男の面に込めて、二人(二匹?)の様子を見やる。
だがまぁ、どちらも楽しそうにしてるから、コレはコレでいいのかねぇ。
外人も俺っちと同じようにその様子を微笑ましく見ていた。

しかし、幽霊ちゃんの方を見ると、何やら複雑そうな表情をしてるじゃねぇの。
ん、ん、ん。人の感情を面で表現するのが能面の役割でぃ。
その能面から成った妖怪の俺っちにかかりゃ、その感情を察する事もできらぁ!

−−その感情は、『共感』だろうか。
幽霊ちゃんは、子狸と戯れる夕香を見て何かを感じ取ったに違いない。
それは、きっと幽霊ちゃん自身が『今こうして在ること』と関係している。
黒髪縦ロールに、ドレスを着込んだ幽霊ちゃんを見ながら、そう思った。


 

化かし合いも終わった辺りで秋の木枯らしがビュウっと吹いた。
まだ10月の半ばだけども、山の上の方は結構寒ぃのね。
俺っちの体は人体模型だから、寒さなんて感じねぇけどサ。

このまま外に居ても外人と子狸が凍えるだけなので、社の中へ入れてもらう。
外からチラッと覗いた時もボロっちいなと思ったが、中に入ると予想以上だった。

「客人を持て成すにはちとみすぼらしいが、すまんの」

夕香はそう言いながらペラッペラになった座布団を差し出してくれる。
もはやこれは座布団ではなく布切れではなかろうか、という状態だったが。

まぁ、無いよりかはマシということで座布団に座る。
ささくれだった床板に直に座ってしまったら、大臀筋に傷が付きそうなんでな。
この人体模型は学園の備品だから、傷付けると理科の先生に怒られちまうんだ。


車座になった俺っち達は、夕香と様々な話に花を咲かせる。
己の出自の事だったり、他の街の話だったり、親兄弟のことだったり。

夕香はその一つ一つに頷きながら、楽しそうに笑っている。
その途中、夕香の服装があまりにも古めかしいという話が出てきた。

「これはうての普段着よ。 見ておれ、これが正装よ!」

一瞬のうちに、夕香の服装が变化する。
それはとても美しい十二単衣で、神々しさすら感じるほどであった。
夕香はフフンと得意げに胸を張る。確かにすげぇなコレは。

だが、俺っちと幽霊ちゃんは面と首をそれぞれ傾げる。
その様子を見た夕香がどうして傾げておるのかと尋ねてきた、が。
 

「いやねぇ、凄いっちゃ凄いんだけども、ちょいーっと似合ってねぇなと」
「な、なんじゃと!」

俺っちは思ったことを言っただけだが、夕香は憤慨している。
いやぁ、凄いんだけど可愛らしい面をしている夕香にゃあんまり似合ってねぇよ。

学園に通う子供達ですら、最近はメチャクチャお洒落な格好をしていやがる。
似合う、似合わないはあるものの、基本的に自身に合った服を着ているのだ。

一方で夕香の服装はとても豪華で凄いものの、夕香には合っていない。
本心を隠して見栄を張っているかのような、張りぼて感が拭えねぇんだ。


と、思っていたのはどうやら俺っちだけみてぇだ。
同じく首を傾げていた幽霊ちゃんは、羨ましく思っていただけらしい。
いいなぁと幽霊ちゃんが言うので、夕香は着物をヒョイッと幽霊に着せようとした。

だが、着物は幽霊ちゃんの体を通り抜けて床に落ちてしまう。
ドレス姿の幽霊ちゃんはしょんぼりした顔で床に落ちた十二単衣を見ている。

「そうか、うては物に触れられぬのか−−」

夕香もまた、そんな幽霊ちゃんの弱点に気付いたのだろう。
床に落ちた十二単衣を再び着るべきか、悩んでいるように見える。
うーん、しかし物を通り抜けちまう体質じゃぁどうしようも−−

と、俺っちが面を抱えていると外人がスッと立ち上がった。
何をするのかと思っていると、折り紙を使って人形を折り始めたではないか!

人形は、まるでひな祭りのお雛様のような着物を着ており、とても良い出来であった。
外人はそのまま幽霊ちゃんを呼び、この折り紙に憑依してみてはどうかと提案した。

幽霊ちゃんは最初はオドオドと、でもえいっと折り紙に憑依し−−
ピコピコと、とても嬉しそうに人形の手足を動かした。

(なんでぃ、外人もなかなか粋な事をするじゃねぇの)


〜 その4に続く 〜
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