日本外傷学会雑誌 Vol. 31 (2017) No. 3 p. 381-386
亜急性期に血腫が増大する急性硬膜下血腫の予測因子の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjast/31/3/31_381/_article/-char/ja/
数日前にネットで見つけた研究報告です。専門家向けなのでちょっと難しいのですが、ざっと斜め読みしただけでも、有益な記述がいくつかあったので抜き出しておきます。ちなみに、この研究報告における「亜急性期」の定義は、発症から4日〜20日のことです。
| 結語
| 急性硬膜下血腫で亜急性期に血腫が増大する予測因子は�々睥陲任�
| ること，��糖尿病の既往があること，�７貅陲�厚く正中線の偏位があ
| ることが考えられた．実際の症例としては，高齢者で血腫が厚いが，
| 症状が軽微であるため亜急性期まで保存的に加療可能であった症例が
| 亜急性期に血腫が増大して手術に至っていた．
| つまり，高齢者で血腫が厚いが症状が軽く亜急性期まで保存的に経過
| をみることが可能であった症例が亜急性期に血腫が増大していた．
| 脳圧が高ければ血腫の溶解時に脳が腫脹して硬膜下腔は縮小してくも
| 膜の破綻部分は圧迫によって修復されると考えられるが，�々睥陲杷�
| 萎縮があること，��脳の損傷が軽微であること，�Ｇ昇箪�や脳内血腫
| がないことなどから脳圧が低い状態にあり，脳腫脹が起こらず圧迫に
| よるくも膜の修復が起こりにくいと考えられる
| 高齢であることは脳萎縮を伴っており50歳と比較して80歳では硬膜下
| 腔は6〜11％増加すると報告されている．さらに，高齢で脳萎縮がある
| ため軽微な外傷でも頭蓋骨で脳表を損傷しやすく，血腫貯留スペース
| があるためある程度血腫が存在しても症状が出現しないか，または軽
| い症状である．
脳圧の上昇は、脳組織の破壊につながるマイナス要因なんですが、脳圧によって傷の修復が促されるというプラスの側面もあるのですね。傷口を指で圧迫して止血するのと同じ原理です。うちの母親の場合、脳の萎縮で脳圧の上昇が抑えられたことは、不幸中の幸いだったのですが、傷の修復・血種の縮小という観点では、マイナス面もあった――と。
さらに、脳が委縮していると、脳が頭蓋骨にぶつかって脳表を損傷しやすいというのも、言われてみれば、確かにそうですね。脳みその硬さは木綿豆腐くらいだそうですが、容器との間にスキマがあれば、ぶつかった時に壊れやすいです。
手術後の医師の説明では、血種の増大もやや見られたとのことですが、この研究報告を読む限りでは、高齢者で急性期の症状が軽い場合、亜急性期に血種が増大するのは、そんなに驚くような現象ではなさそうです。
| 亜急性群は亜急性期に多くの症例で手術（特に穿頭術）を行ってお
| り，適切な時期に診断し穿頭術を行うことで予後良好であったと考え
| られる．
とのこと。
母親の場合は、穿頭術（穴を空けるだけ）ではなく開頭術ですが、適切な時期に手術をしたことになると、考えてもよさそうですね。
ネットをていねいに探すと、他にも気になる論文が見つかるのですが、読むのが大変だったりします。(^^;;
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