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2017年11月12日12:00

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表現規制では自殺を食い止められない

■共通趣味装い中高生接近=「SNSの友人」態度一変−絶えぬ被害、専門家警鐘・座間
(時事通信社 - 11月11日 15:00)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4854803

■政府、座間事件受け防止策 Twitter規制も検討対象へ → Twitterでは「ズレてる」と反発も
(ねとらぼ - 11月10日 19:23)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=4853845

■政府、ツイッター規制検討=座間9遺体事件で年内に再発防止策
(時事通信社 - 11月10日 13:05)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4853119

■山本一太氏「座間の事件はアニメの影響」発言を謝罪 「アニメ好きな政治家として一世一代の失言」
(キャリコネ - 11月09日 13:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=210&from=diary&id=4851356

■自殺志望アカウントを開設する人たちの言い分…本当に「#死にたい」わけではない
(日刊SPA! - 11月08日 16:33)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=81&from=diary&id=4850039

 座間事件(地名を入れるのは座間の住民に対して悪いって見方もあるが、白石事件とも呼べないんだよな。一応、未だ容疑者の段階だし)の発覚から十日が経とうとしている。被害者の身元は全員判明したが、事件の全容の解明にはまだほど遠い状況だ。
 残虐な事件が起きるたびに繰り返されるのは、「信じられない」とか「前代未聞」といった言葉だ。確か光市母子殺人事件でも、神戸連続児童殺人事件でも佐世保の両事件でも同様の発言をしていた人は多かった。宮崎勤事件も宅間守事件も今思い返してみても全く「信じられない」事件だったろう。古くは横溝正史『八つ墓村』のモデルになった「津山30人殺し」という凄惨極まりない事件もある。
 冷静に考えれば、「信じられない」なんて、みんな毎回何も信じる気がないのか、じゃあ信じてる事件って何なんだという気がしてくる。「前代未聞」が何十回続くのか、口癖のようにそれをすぐに口にする人はなぜそこに言葉の矛盾を感じないのだろうか。
 被害者の女性たちに対して、「ネットで知り合った正体も知れない男の部屋にノコノコと上がり込むことがおかしい」と、被害者の側に責任があるように呟く連中も後を絶たない。これまた恐らくは「身内や生身の人間には相談できない理由」があったのであろうと考えられる被害者たちの事情(実際に被害者たちの周辺で自殺の兆候を感じていた人間は殆どいなかった)を顧慮する想像力に欠けた発言である。
 顔が見えない、初対面の相手だからこそ、ネット上の「言葉」だけで信頼してしまう。それは二次元世界のファンタジーに我々が幻想を抱くのと同質の心理だ。山本一太議員が「アニメや漫画、ゲームの影響」と言ってしまったのはうっかりにも程があるが、人間は誰しもリアルよりも虚構に共感するものである。その事実に即して考えるならば、目の前の苦しみから自分を解放してくれないリアルよりも、虚構の言葉に誘われてしまう心理も理解できなくはない。

 そういった安易な言葉を口にしてしまうのは、それだけ事件の本質について考えたくない、考えようとしていない、できるだけ距離を置いていたいとする心理の表れだろう。実際は人類の残虐な犯罪は枚挙に暇がないほどである。戦争だってそうじゃないか。

 白石容疑者の供述が二転三転している点も事件に謎をもたらしている一因ではある。殺害に至った動機が当初は「金目的」というものだったが、被害女性に暴行を働いていたことも告白するようになった。やはりこれまでの猟奇的な殺人事件と同様に、快楽殺人だと見なしてよいように思う。
 白石容疑者は、何人殺せば死刑になるかをネットで検索していたらしい。だとすれば、二人、三人殺した時点で、死刑は免れないということは理解していたはずだ。しかしそれが犯行の抑止に繋がった様子はない。だとすれば、死刑を覚悟した上で、三人殺すも四人殺すも一緒と悟って、かえって勢いづいてしまったのではないか。実際、彼は「こんなに(犯行が)見つからないものだと思った」と発言してもいる。
 白石容疑者の被害者を誘い出す口車は次第に巧くなり、遺体の解体作業の手際も上達していっている。それは彼を劣等コンプレックスから解放し、自信を持たせるに充分だったように思う。犯罪の連続性が自身のアイデンティティの確立に繋がっていくのは、シリアル・キラーに典型的に見られる傾向だ。

 座間事件で何か「前代未聞」な事実があるとすれば、それはやはりSNS、Twitterを利用した犯罪であったという点だろう。事件発覚当初、わずか2ヶ月間で9人を殺害したというそのスピードの速さに驚嘆した人は多いと思われるが、それを可能にしたのがTwitterである。Twitterのない昔であるならば、犯人は被害者を物色するのにかなりの時間を要していたはずだ。しかし、インターネットの発達は、犯罪をもコンパクト化し、パソコンの前に座った状態のまま、獲物を自身の部屋に誘い込むことを可能にしてしまった。そして警察は、社会は、この急速に発達した技術を悪用した犯罪に対抗しうる手段を見出だせないまま、手をこまねいているのが現状である。

 そうした世間の犯罪に対する危惧感が、「ネット規制を」という声に繋がっていくのは、一見すると自然な流れであるかのように見える。政府のネット規制を推進する動きに賛同する向きもあることだろう。しかしそれもまた「信じられない」と同様に、安易な発想であることは論を待たない。
 今やインターネットそのものを廃止することは不可能だ。だとすれば、仮に一つのSNSを規制したところで、また別のSNSが生まれる。そしてそこでまた自殺願望の書き込みが、彼ら彼女らを死へと誘う煽りの文句が続くことになる。事実上、規制は不可能であると言っていい。
 そもそも、規制することが表現の自由を侵害するのではないか、また自殺や犯罪の抑止に繋がるとは言えないのではないかという議論もある。私はそれに賛同する立場だ。たとえそれが客観的に見て自殺を助長するような書き込みに見えても、それだけで表現されたものを行政が規制するような手段に出てよいものなのか。それが本当に「危険」なもので、誰かの権利を侵害するものであると断定する判断が簡単に下せるものなのかどうか。

 Twitterには既に「死にたい」って自分の感情を吐露する一言すら呟けなくなるのか、という憤懣を述べる呟きが数多く投稿されている。その程度の発言が規制の対象となるのならば、自殺サイトに限らず、普通のコミュニティや個人の日記にまで、「検閲」の対象が広がっていく危険性がある。そうなればそれはもう戦前の治安維持法の復活であり、我々の人権が全て行政の支配下に置かれることを意味する。
 これまで憲法の理念に反したマンガやアートに対する規制条例が各自治体で制定され、拡大解釈されて、いくつものマンガが悪書指定を受け、処分されている。マンガ即犯罪の原因という短絡的な思考だ。
 それらの表現規制に対する反論も幾度となく繰り返されている。表現と凶悪犯罪との直接的な因果関係を証明するデータは存在しない(むしろ無関係だと証明するデータの方が多い)というものが代表的な意見だが規制賛成派は、なぜかそれらのデータを完全に無視するのだ。客観的なデータよりも「自身の感覚」の方を優先する。自分がダメだと思うからダメだと確信する。自己愛型の人間にはよくあるパターンで、そうした人間が政治に関わるようになると、規制が問答無用で実行されることになるのである。
 それは裏を返せば「支配欲」の表れであり、「いじめ」がなくならない原因と同質のものだ。いじめの加害者の多くがそれをいじめと認識せず、それどころか自分に「正義」があると証言している点に注目すべきである。
 因果関係が明確でないにも関わらず、「○○が悪い」と決めつけて差別、迫害する。ナチスのユダヤ人迫害、ホロコーストもそうして起きた。今、政府が実行しようとしているネット規制も、事件を言い訳にしてネット規制を強化していこうとする権力の濫用の一環だと認識した方がいい。

 規制賛成派の人々に、最後に引用した記事の女性の言葉は届くだろうか。自殺サイトで「死にたい」と呟くことが、必ずしも死に直結するわけではない。むしろ死の呪縛から解き放たれる可能性を示唆している。
 過去に渡辺淳一の小説『自殺のすすめ』や、ベストセラーになった『完全自殺マニュアル』も、自殺を推奨するために書かれたわけではない。「自殺について真正面から向き合うこと」が、自らの命と向き合うことの端緒になったことを、多くの読者が指摘している。
 表現規制派にはそうした「反作用的な自殺防止効果」が理解しがたいようだが、断言しても構わない、表現規制はかえって自殺願望者の行き場を塞いで、にっちもさっちもいかない状況に追い込むことになる。
 行政がやるべきことは、サイトの監視や検閲ではなく、自殺願望者の心の拠り所となるフィールド作りのはずなのだが、正直、何をどうすればよいか、見当もついていないのだろう。無策な政治家ほど、規制に走るのは、これもまた歴史が示している事実なのである。
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