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2017年11月08日22:57

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クッレルヴォ!

本日は定時退庁日につき定期演奏会会員の下記演奏会に来ました。

○都響第842回定期演奏会Aシリーズ
開演:2017年11月8日(水)19:00
会場:東京文化会館
曲目:シベリウス/クレルヴォ交響曲
メゾソプラノ:ニーナ・ケイテル
バリトン:トゥオマス・プルシオ
合唱:フィンランド・ポリテク男声合唱団
管弦楽:東京都交響楽団
指揮:ハンヌ・リントゥ

今日は一曲だけという潔いプログラム。

最初から、この曲はこんなに無骨だったっけ?という感じのごろごろした肌触りの出だし。洗練という感じは全くないが妙に心をざわつかせる。
やがて凄まじい木管の上下行のパッセージが寒風のように吹きすさぶ。(立場上クラリネットが1st2ndとも凄い。)あとで人に聞いたところによれば全体の速度が常より大幅に速くてパッセージがより厳しく聴こえたようだ。
最初無骨と思ったのはフィンランドの厳しい自然のことなのではないかとふと思った。
第3楽章で合唱が入ります。男声合唱。男声合唱っていいね。特にこの曲にこれほどふさわしいものはない。のっけの一声からノックアウト。行ったことないけどこれがフィンランドの厳しい自然の岩音なのかと思う。
歌詞はフィンランドの英雄クッレルヴォが実の妹を半ば強姦するお話。強姦の瞬間はシンバルの一撃。寒い中で暖かい響きは合意の上を思わせるがその後兄妹間の近親相姦であることがわかったあとのメゾソプラノの連綿とした歌唱に涙する。初め別の少女二人の時はわざと下手に(がさつに)歌ってたんじゃないかというくらい妹の歌が心に沁みる。そのあと短い間奏後には妹はもうこの世の人でなく兄の自分を責める慨嘆がバリトンで呵責なく歌われて心が痛い。
妙に楽天的な出征の第4楽章のあとついに本気の第5楽章が訪れ合唱は絶唱となりオーケストラは嗚咽のような咆哮を聴かせる。

まあ驚いた演奏だった。シベリウスの若書きで初演後すぐお蔵入りして改訂されずに蘇演され筆致が無骨そのものだがそれ故主人公たちの若気の過ちのようなことが痛いほど伝わる上、シベリウスも書いているうちにだんだん書法が練達して来たのか曲の密度も完成度も濃密となりそこに過ちを犯した主人公が成長するにつれて自分の罪深さを否応なく感じるようになり自死に至るということが手に取るように感じさせる演奏だ。特に前半かなり速かったのが後半速度は低下するが音楽は激しくなって時折入る全休止(ゲネラル・パウゼ)がクッレルヴォの思惟の重さを反映するような長さを感じさせてそこに岩だらけの厳しい無言の地形のようなフィンランドの情景が思わず目に浮かぶような見事な演奏であった。
全休止の無音に息を呑むように付き合った今日の聴衆にも拍手したい。

アンコールで男声合唱入りのフィンランディア。まさにカタルシス。
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