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2017年11月05日22:47

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輝くもの天より墜ち

『輝くもの天より墜ち』(PlainD20)のTRPGセッションGMを務める。このシナリオを回すのは2度目。プレイヤーはサークルメンバー。前半は4人だったが、途中参加者がいたため後半は5人。

前置きとして書いておくが、一昨日から今日までの3日間、学生時代のサークルメンバーが集まり、2泊3日におよぶTRPG漬けの合宿が行われた。この集まりは年に一度くらいの割合で実施しているが、参加者全員が見知ったメンバーであることと、いずれも熟練のTRPGプレイヤーであることから、かなり高い割合で濃密なTRPG体験を味わうことができる。そして、今回はここ数年で最高の盛り上がりとなった。

今回のシナリオは「交流」「協力」「成長」を三本柱とした冒険活劇であり、そこそこオーソドックスな中世ファンタジー世界を舞台に、辺境の村の見習い自警団員の青年たちが、金竜の子供を拾ってしまったことで一国の命運を左右する事件に巻き込まれることになる。

前回同じシナリオを回したとき、一介の村人たちが国家レベルの問題にまで首を突っ込むことになるそのスケール感のギャップに参加プレイヤーが戸惑っていたなどの反省点があったため、今回はあらかじめそのスケールを伝えておいた。また、それ以外の細かい設定や演出にも手を加えておいた。まあ、回数を重ねるからには、それ相応にブラッシュアップしていかなければね。

このシナリオのポイントは「交流」「協力」「成長」の柱をGMが明示していることだ。この意味を理解できるプレイヤーは、キャラクターメイク時に、他者との交流を苦手とし、積極的に協力しあうこともない、未熟な人物像を作り上げる。なぜならセッションのクライマックスまでにそれらを改善・成長させることが物語としてのカタルシスとなるからなのだが、不慣れなプレイヤーはそのあたりを察せないことが多く、常に正しい行いをするキャラクターを選びたがる。今回はきちんとそのツボを抑えた4人の青年たちが出揃った。わたしはこの段階で早くもセッションの成功を予感した。

実際にセッションが進んでいくと、4人の青年たちは失敗を経験し、それでも大口を叩き、そして大切なものを失い、それらすべてを糧にして成長していった。その様はGMとして物語を俯瞰するわたしにとってとても感動的なものだった。展開自体はシナリオ本来の狙い通りとも言えるが、序盤に演じたシーンを伏線として、それをなぞったり、あるいはあえて逆のパターンを演じてみせるプレイヤーたちの確かな力量に舌を巻く。このような脚本と演出の能力を持つプレイヤーの参加は、GMにとって何ものにも代えがたいものだ。

そして、中盤からは4人の青年たちの中に1人の大人が加わることになった。それまでのジュブナイル的な味わいに、円熟期を迎えた大人の政治的背景を踏まえたビターなエッセンスが加わり、GMがあらかじめ想定していた以上の物語に膨らんだことに、わたしは喜びを覚えずにはいられなかった。

とくに、クライマックスにおいて、世間ずれしているがために打算的にならざるを得ない大人たちに対して、主人公のひとりである青年が啖呵を切ったシーンでは、思わず目尻に涙がにじんでしまった。実は序盤にもその青年が大人たちに対して啖呵を切るシーンがあったのだが、そのときはただ勢いだけの責任を伴わない戯言に過ぎなかった。しかし、クライマックスではそこに信念と責任が込められていたのだ。わたしにとってそれはアニメ『プラネテス』に登場するヒロイン・タナベの序盤と終盤の違いに重なるものだった。(『プラネテス』は大人の視聴にも耐えうるアニメ史に残るレベルの名作なので、観ていない人にはぜひ視聴していただきたい)。

同じシナリオを回した前回はノーマルエンディングまでしかたどり着けなかったのだが、今回は見事にグッドエンディングを迎えることとなった。そして、たんにゲームとしてのグッドエンディングを迎えただけでなく、わたしにはこのセッションが間違いなく今年一番の出来だと思えた。また、セッション終了を告げるGMの挨拶と共に、プレイヤーたちから割れんばかりの拍手をもらえたことが、それがわたしの一方的な感想でないことを示しているようだった。今回のサークルメンバーは、普段から辛口の評価をする面々である。そんな人たちが感想会でも絶賛してくれたことが、思わず身震いしてしまうほど嬉しかった。

ただし、わたし自身が常々口にしていることなのだが、セッションの成功の大部分はプレイヤーたちによってもたらされたものだと思う。なぜなら、たとえGMがどんなに頑張ったとしても、プレイヤーがセッションを成功させるために力を尽くさなければ、そのセッションは失敗に終わるからだ。なにせ、セッションの成否を計るバロメーターの大部分は参加者がどれだけ楽しめたかということに占められるのだから……。

それを踏まえたうえでGMにできることは、プレイヤーが楽しめる土台をつくること。プレイヤーのモチベーションを高めるために、ドキドキ・ワクワクするような仕掛けを用意すること。それは、わたしが実践していることで言えば、ワールドマップやキャラクターイラスト、BGMなどの小道具、そして緻密で現実的な設定、あるいは繊細で情緒的な描写を用意することだったりする。もちろん、面白いシナリオを用意することはそれ以前の問題だ。

今回はその土台にプレイヤーたちが最大限に応えてくれた。そして、プレイヤーのひとりが感想会で「今回は出し切った」と言ってくれたことがとても印象的だった。今回のような成功体験を味わうと、また可能な限り最高の素材を用意してプレイヤーを迎えたいという意欲が沸き上がってくる。こんなポジティブサイクルをずっと回すことができたのならと切に願う。

さて、あと2ヶ月で今年も終わりとなるが、果たして今回のセッションを超えるセッションに参加することはできるだろうか? 新作のシナリオはあるのだが、仕事が忙しくなってきたことが懸念材料だなぁ……。
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