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2017年11月05日00:21

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堕ちて行く

■冷蔵庫に遺体保管か=「2人入れた」血液反応−アパート9遺体・警視庁
(時事通信社 - 11月04日 17:30)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4844676


 下には下が居る。

 下を見ればきりがない。

 

 人間は、人間に限らず生き物は、産まれて生きて必ず死ぬことになる。命を全うして死んでいくということ。死なないという者はいない。

 死は、敗北、なのだろうか。死は、解放、なのだろうか。定かなことは何も言えないけれど、殺人や自殺など感情と欲望の果てにある孤独な醜い死は、罪だ。欲望の親玉は、死、なのだろうと思う。

 一人の人間の人生において永遠に謎だと思われることとして、生まれることと死ぬことと異性のこと、がある。体験を振り返れないことと体験出来ないことがその理由。

 死は謎ではあるが、白石隆浩というこの男の周囲にまとわりつくようにして存在する複数の、死、は人間がよく生きて迎える寿命としての健康な死とは明らかに異質だということは誰だって感じるところだと思う。
 
 現時点で9人の人間を殺した本人が死にたがっていたということ。殺された9人のうちほとんどが自殺志願者だったこと。そして実際に生きていた9人の人間を殺して、死、に至らしめたということ。また、殺された人間が抗わなかった可能性も多分に含んでいること。この事件にまつわる、死、にはことごとく闇がつきまとう。胃袋を素手で柔らかく握られるような気持ち悪さがどこから眺めても湧いて来て、救いようがない。どこにも救いようがない。おそらく、殺した者と殺された者たちの周辺事情がさらに明らかになって来ても闇が深くなるだけといった状況が横たわっている予感しかしない。そして、どこにでもある安い賃貸アパートに住み話しかければ挨拶ぐらいはできる一見普通のおとなしそうなお兄ちゃんがそんな状況だったということが現在の日本の社会状況を暗に物語っているような気にもなり憂鬱になる。

 今の世の中は物も食べ物も異常に豊かで娯楽も異常に発達している。おまけに売り上げを出さないと暮らせない背景から手を変え品を変え人心の下世話なところを刺激して購買意欲をあおるような仕組みが氾濫してしまっている。欲望はただ街を歩いているだけでもあおられる。
 職業人として何かで一人前になり人に認められるようになるには技術の習得や競争が必須となる。この傾向が強くなればなるほど人々は一人になりがちとなる。競争や技術の習得に参加しないものは誰かに使われて暮らすが思うような暮らしにたどり着くことはまれで自分を押さえつけて暮らすようなことになってしまうことの方が多い。
 いずれにしても社会から要求されることは多く、速い対応も求められる。応えるためにそれぞれが頑張って暮らす。
 現代人は追い立てられるような暮らしの中で一方に娯楽や贅沢を並べられて目まぐるしく暮らしていくのだ。成功には程遠い暮らしを余儀なくされたまま。

 このような背景の中にそれぞれがそれぞれの分の愛を背負って或いは愛とは無縁に産まれ落ちてくる。


 自分に負ける。勝負に負ける。快楽に負ける。不和が孤独を生む。嘘をつく。人をだます。逃げる。隠れる。恥じる。あきらめる。開き直る。

 不安、焦り、罪悪感、悲しみ、怒り、感情が欲望を呼ぶ、欲望が孤独を呼ぶ、愛を忘れ去る。
 すべてが連鎖しあって暮らしを黒く覆っていく。闇が濃くなっていく。やがて全てを呑み込まれる。闇に生きるようになる。

 どんどん、どんどん、人間は簡単に堕ちて行く。日々、新しく堕ちて行く。


 白石隆浩だから堕ちて行ったわけではなく、人間は条件がそろえば誰でもあっという間に堕ちて行くものだと思う。堕ちて堕ちて負け続けて、欲望や快楽の果てには孤独と死が、親玉、としてぽっかりと口を開けて甘美な誘惑を放ちながら待ち受けているのだと思う。

 愛は伝わるものだけど、愛していないということもまた同じように伝わっていく。不和や無関心は孤独を生む。怠けや敗北もまた孤独を生む。感情と欲望の悪い連鎖はどこからでも始まる。社会がどうしたらこういう救いようのない状況を産まなくなるのか。考えたいがこんな救いようのない状況を突き付けられると黙り込むより他なくなる。テロも同じだ。

 インターネットもパソコンも便利ではある。あらゆるものを検索して調べることが出来る。人間の趣味嗜好についても容易に選別収集することが出来る。世の中は清濁明暗いろいろあったとしてもまじりあっているからこそ平穏無事としていられる。暮らしが潤うような種類のものならまだいいけれど、それがまた、人間の心の救いようのない魔の世界も同じように結び付けて増幅させてしまう。人間の何がどんな風に伝播していくのか注意して見て行くべきだがインターネットの実相は、煩悩の数に人口をかけて技術で何乗かしたような状況。いいことも悪いことも何もかもが地球の隅々まで走り巡って膨張していく。実際の人間がこんな風に右往左往するぐらいなら地球規模で電源を切っちゃった方がましというもの。インターネットは人間の意識の化け物だ。手に触れる、目に映る範囲で人間らしい速さで暮らしていたって落ち着いて静かに暮らすのは難儀な事なのだから。


 この男はとにかく堕ちるところまで堕ちてしまった人間の一人。無残だと思う。


 
 
 

 

 

 


 
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