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2017年11月04日00:11

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新国立劇場バレエ くるみ割り人形

新国立劇場オペラパレス

音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付: ウエイン・イーグリング
美術: 川口直次
衣裳: 前田文子
照明: 沢田祐二
指揮: アレクセイ・バクラン
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱: 東京少年少女合唱隊

2017/11/3金祝 13:00-

クララ/金平糖の精:米沢唯
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:ワディム・ムンタギロフ
ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫
ねずみの王様:井澤駿

2017/11/3金祝 18:00-

クララ/金平糖の精:小野絢子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大
ドロッセルマイヤー:菅野英男
ねずみの王様:奥村康祐


新国立劇場バレエの今シーズンオープニング、新制作のくるみ割り人形を2キャスト、マチソワで観てきました。公演自体の満足度は高かったです。でもそれは圧倒的に素晴らしいダンサーのおかげ!特に主役2組はすんばらしいものを見せてくれました!反面、イーグリングの振付はとても褒められたものじゃないというのが本音です。

作品の内容は置いといて、まずは素晴らしかったダンサーさん達について。

マチネの部から。

唯ちゃんとワディムが主演。もう何と言ってもワディムが素敵過ぎました・・・!このくるみでは最初の方から王子役がドロッセルマイヤーの甥としてパーティーに登場してるんですが、踊ってなくてもワディムのところにスポットライトが当たっているよう。髪も少し短くしたせいか、いつもにまして顔が小さくて手足が長く見える。幼いクララ(パーティーシーンは子役)が彼に一目ぼれするっていうストーリーなんですが、それも無理ないね!見てる方も惚れるよ!っていう感じでした。ワディム、リフトやサポートも本当に安定していてしかもパートナーを思いやってる感じがあって。そしてほんっとーにエレガント。跳躍時の彼の空中姿勢の美しいこと!更に貫禄もあって、とにかく彼が舞台にいる間は他の人に目がいかないくらいのオーラがありました。これ観るだけでもこのステージ見に来た甲斐があった!

そして唯ちゃんも、凄くよかったです。私、彼女の大ファンというわけではないのですが、クララはよく似合ってる。きっと彼女自身が本当に少女のような人なんだろうな。素の彼女が役に投影されていました。でも最後の金平糖のパドドゥではまるで女王様みたいな威厳もあった。彼女、相手によって凄く表現の幅が変わるダンサーだなと思います。格上の男性ダンサーともっと踊ったらいろいろ引き出されそうなのに、新国だとチャンスが多くなくて残念だな。

主役に次ぐ重要な役、ねずみの王様に井澤くん。イケメン封印で骸骨みたいなねずみのマスクをかぶってコミカルな役を好演してました。彼はベートーヴェンソナタのときに演技が上手くなったなぁと思ったけど、この役で観ても同じことを思いました。今後が楽しみ。

ドロッセルマイヤーの貝川さんは凄く存在感があって、どこかミステリアスな雰囲気もあり、ワディム王子と唯ちゃんクララを導く役としてぴったりでした。彼はリフトやサポートも上手いなあ!雪の踊りや花のワルツのコールドは流石新国のクオリティ(この感想はマチソワ通じて)。美しいラインと確かなテクニックを持つダンサー達のきれいに揃ったダンスで魅せてくれました。ディヴェルティスマンではアラビアの本島さんが綺麗でした。あと花ワルのツートップの寺田さんと細田さん素敵でした!

ソワレ。

絢子姫と雄大君のペアは国宝級だわ、と思わされた公演でした。特に凄かったのが一幕最後のパドドゥ。王子とクララが初めて踊るという、ストーリー上はなんてことないものなのに、ロミジュリのバルコニーのようでした。もの凄く高度なリフトも音楽に乗せて流れるようにこなし、絢子姫の感情表現も素晴らしくて、客席も二人の気持ちの高揚に巻き込まれる感じ。余りに素晴らしくて、思わず涙がにじんでしまった・・・。私の周囲で鼻をすすっていた人が他にもいたので、結構涙した人は多かったのではないかしら。

それ以外のシーンでも二人は完璧でした。初日は結構大変そうなところもあったという話も聞いたので、その後仕上げてきたのだろうな。

私が絢子ちゃんを凄くいいと思うのは、テクニックが凄くあるのにそれを感じさせないエレガントさ。それは、抜群の音感と柔らかで繊細な上半身の使い方から来てると思うのです。そして、女らしいのに意志が強くて現代的な内面を感じるところも個人的なツボ。唯ちゃんの方が、むしろ古風なメンタリティを感じるんですよね。私は女友達にも古風な人が少なくて^^;

福岡君、体をよく絞っていたし、相変わらず凄い跳躍力だなぁと思いました。ポジションも常に正しくエレガント。ワディムと比べたら分が悪いのは当然だけど、日本でこういう風にクラシックを踊れる男性ダンサーはほとんどいないんじゃないかと思います。あと何より絢子ちゃんとのパートナーシップが本当に素晴らしい!

主役二人以外にも、流石ファーストキャスト、という配役でした。

ねずみの王様の奥村君が最高!!!とにかくノリノリで結構難しい振付をこなしながら、茶目っけたっぷりに悪役を演じてました。井澤君もいいと思ったけど、奥村君の方がアドリブ的な要素が多かったような。とにかく可愛くて可愛くてたまらないハートカーテンコールで、隣りの絢子姫にねずみの王様としてガジガジ絡んでて、苦笑する絢子姫に「うざいわ!」風に払いのけられてたのには笑った。いやーいいねー。こういうことできるってことは演技ができるってこと。今後が楽しみです!

あとアラビアの木村さん、超素敵でした。彼女は舞台にいるだけで華があるなぁ、と思います。蝶々の細田さん、難しい振付を素晴らしい音感で踊ってらして感動しました。細田さんはルイーズ役もやってらして演技うまいなぁと思った。マチネは同じ二役を池田さんがやってたんだけど、彼女は悪くないけどこれといって特徴がなくて印象に残らないんだよなあ。まあ、まだこれからの人なんでしょうけど。あ、あと、母親役のモトジー、美しいし演技が細かくて凄くよかった。彼女も本当に華があって立っているだけで目を引きつける人。


続いて、作品について。

イーグリングの振付は、私は全く好きになれませんでした。新国のダンサーが踊ったからまだ楽しかったけど、そうでなければ物凄くつまらなかったのではないかと思ってます。

舞踊言語の貧しさをリフトやマスゲームで誤魔化してる感じがしてしまった。あと、そのリフトもあまり効果的に使われてなくて難しいのに気持ちの高揚が伝わるようになってなかったり。

あと、ストーリーが全くないんですよね。一つ一つのパどころか、各パートの意味もほとんど考えられてないように思いました。「くるみは、少女が大人になった素敵な夢を見るってストーリーで、いろんな国の踊りが見れればいいよねー」的な発想で、何となく気分のままに作ったのではなかろうか。まあ、ENBで観たイーグリング版とストーリーやセットの一部(クララのおうち)が一緒だったから、それを焼き直すというイメージだったのでしょう。見る方もそういう気持ちで臨まないと、ストーリーを求めたり、意味性を感じようとしたりすると、つらいと思いました。

ただなあ、百歩譲ってそういう気持ちで、ショーを見てる気持ちで観てたとしても、ディヴェルティスマンの振付が面白くないのが致命的で・・・。あれがもっとまともな振付だったら、評価はかなり変わってくるだろうに。

くるみは、いろんな振付家が名作を作っているから、こちらの期待も高くなって、なぜ新制作でこういうちゃちなものを、、、と思ってしまう。今回はバレエファンがターゲットの作品ではない、ということなのかもしれないですね。

そのしょーもない作品を救っていたのは、ダンサーの力が大きいけど、衣装と美術のおかげもありました。特に衣装は素敵だったな。オーソドックスなんですが、色遣いとかが洒落ていて、あと品がいい。花のワルツがオレンジのポピーのイメージだったのが斬新でした。スカートの形も可愛い。一幕のドロッセルマイヤーの青いマントの内側に星がきらきらしてるのも、彼が両腕を広げると宇宙が広がるみたいで役のミステリアスさを増幅してた。あと、中国の衣装はドラゴンボールみたいで可愛いし現代的!

そしてバクランさん指揮の東フィルもよかったです。途中でちょっとコケたところあったけど、あのくらいだったらご愛嬌。バクランさんとオケにはマチネもソワレも結構大きな拍手がありましたね!

今日はマチネもソワレもほぼ満席でした。バレエ団の狙い通り、子供を連れた家族連れが多かったし、あと、男性も多かったな。お父さん的な人だけじゃなくて、踊ってる人。バレエ教室関係の人がたくさん来ていたのでしょうか。マチネは変なタイミングで大きな声でブラヴォーが飛んだり拍手が起きたりして、お客さんのマナーがイマイチでしたがソワレはそんなことはなく集中して観られました。バレエ好きな人は絢子&雄大の日をとってるってことなのかなあ。

バレエファン以外の客がくるっていうのはいいことなんだけど、そのターゲットが家族連れってことになり、今回みたいに頭使わないお気楽な作品が増えるなら、私はあまり新国に来なくなるかもなぁとぼんやり思いました。今所属している素晴らしいダンサーさん達だって、彼らの力や経験を考えると、そういう作品ばっかり踊るのは退屈なんじゃないかしら。何よりも、家族連れを一年に何度も劇場に呼ぶなら、チケット代を下げないと難しいと思う。そしたらバレエ団の経営はより苦しくなるのでは。そういうこと、あそこの運営をやってる人達は全部考えてるのかな・・・。と、ダンサーの素晴らしいパフォーマンスには感動しながらも、帰路はいろいろ考えることになった公演でした。

自分用のメモとして、2013年の末にロンドンで観たENBのくるみのあっさりした感想をへのリンク。タマラが踊ってた。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1919802153&owner_id=2438654
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