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2017年09月26日13:16

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【創作】竜喰いのリド  episode1-A:鈴木健太と選ばれし仲間たち【その3】

【創作まとめ】
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【前回】
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「では転生者について解説を続けさせてもらうよ。さっきは僕なりの仮説を話したけど、実際のところはどういった原理で転生しているのかは解明されてないんだ」
「寿命が残った状態で死んだってやつか?」
「うん、そう。ただ、あながち外れてはいないと思うけどね。あと転生者の特徴としては、この世界で死んだ際、遺体が残らない」
「死んでも遺体が残らない? どういうことだ?」
 肉体は実在している。
 物にも触れるし、お茶だって味わえる。
 俺の五感が肉体の存在を証明している。
「転生者が死ぬとね、体が光の粒子になって消えてしまうんだ」
「えーと、意味わかんねえわ」
「これに関しては、この世界に転生された魂と空気中のエーテルが結び付いて肉体を構成しているのではないか、という説が濃厚とされている」
「なんだよ、その『説』って」
「知人に転生の原理や転生者について研究している人が居るんだけどね、まだまだ解明されてない事が多いんだよ」
 さすが冒険会社社長、色んな人脈があるんだな。
 この人との繋がりを大事にしておけば、色んな事が解るかもしれない。
「その研究者にも会ってみたいな。自分の身に起きたことを詳しく理解しておきたいし」
「かまわないよ。忙しい人だから、アポを取っておくよ」
「お願いします」
 何から何まで世話になる形になるが、状況をしっかりと把握するまでは仕方ない。
「あと、転生者には『スキル』と呼ばれる特殊能力が備わるんだよ」
「スキル?」
 なんかゲームみたいだな。
 空でも飛べるのか?
「ああ、これは人によって異なるんだ。例えば僕の場合は人の感情が色で解るんだ」
「どういうことだ?」
「なんていうかね、その人の感情がオーラみたいにボヤッと体から滲み出てるように見えるんだよ。楽しかったら黄色、怒っていたら赤、みたいにね」
「ほほう、それでさっきから俺の心を読んでいたということか?」
「さすがに細かい内容までは解らないよ」
 社長としてクライアントと交渉する際、相手の感情が見えるというのはかなりのアドバンテージではないだろうか。
 少なくとも話している内容が真実か嘘か、文字通り見破れるわけだから。
「そこでスズキ君、この世界に来てから何かそれっぽいこと無かったかい?」
「それっぽいことか……」
 急に言われても解るわけがない。
 なんせこの世界に来て起こった出来事と言えば、無駄にカッコイイ名前の山賊に襲われたことと、リンゼたちに助けられたこと。そしてブックマン社長と出会ったことだけだ。
 特殊能力と言われてもパッと思い付かない。
 少なくとも相手の感情が色で見えることはない。
「うーん、思い付かないな。山賊に襲われたた時、いつもより体が動いたってくらいだな」
 山賊から逃げる際、突進からのステップで相手を避ける動きが、事前に思い描いた通りの理想的な動きで出来た。
 そう言えばカリファからの突っ込みも華麗に避けてたな。
「それじゃないかな」
 その事を話すと、ブックマン社長は一つの仮説を立てた。
「僕が予想するに、心で思い描いた動きをそのままトレース出来るんじゃないかな」
「なんか地味だな」
 俺も相手の心を読めるとかの方がいいんだが。
「そんなことないよ。例えば剣の達人の動きを見たとする。それを覚えているだけで、再現出来るんだよ?」
 なるほど、それが本当ならスゲエな。
 俺はソファーから立ち上がり、目を瞑ってある動きを思い出す。
 それは何度も何度も見た光景。
 達人のその技を思い描く。
 全身を捻りしゃがみこむ。
 そこから最大限にバネを活かした回転アッパーを繰り出す。
 捻りを加えた拳は周囲の空気を巻き込み、さながら小さな竜巻と化し天を穿つ。
「翔竜撃ッ!」
 ような気がした。
 ゲーマーである俺が最もやり込んだ格闘ゲーム、ファイティングソルジャーズの主人公、竜也の必殺技た。
「おおッ! 凄い技のキレだね!」
 繰り出した翔竜撃にブックマン社長は拍手をしながら驚いてくれている。
 だが驚くのはまだ早い。
 竜也の必殺技はこれだけじゃない。
 俺は何かを脇に抱えるように両腕を折り畳むと意識を集中する。
 見て驚け、これが竜也の代名詞とも言える真の必殺技だ。
「覇道撃ッ!」
 両の掌を勢いよく突き出し叫ぶ。
「……なかなかの掌底だね!」
「…………」
 どうやら気弾は出ないようだった。
 魔法があるくらいだ。
 気弾だって出ると思うだろ? なあ!?
「ふむ、社長の言うとおり、『トレース』が俺のスキルのようだな」
 気弾が出なかったことを悟られないように、俺は冷静にこたえる。
 し、失敗なんかしてないんだからね!
「気弾というものが何なのかは解らないけど、思い通りとはいかなかったみたいだね」
「こういう時は思考を読まないで!」
「いやいや、それでも凄い能力たよ」
 達人の技かと聞かれると微妙な気はするが、2Dから3Dへと進化した格闘ゲームは、技の動きを細かく表現している。
 そしてゲーマーの俺はゲームをやり込み、その動きは完璧なまでに目に焼き付けている。
 あらゆるゲームが俺の力となる。
 転生前がファミコン時代じゃなくて良かったぜ。
 さすがの俺も、ドット絵の再現は難しいからな。
「たしかにこのトレース能力は使えるかもしれないな。戦闘はともかく、色んな技術を見るだけで習得できるわけだからな」
「まあ達人の技術を、見ただけで細かく覚えるのは難しいかもしれないけどね。それでもスズキ君はセンスがあると思うよ」
「まあな。ところで他に転生者の特徴はないのか?」
 スキル能力だけでもかなりの特典だ。
 しかし貰える特典は何でも貰う。
 これがニートゲーマーの流儀だ。
「うーん、そうだねえ。重要なことはざっと話したけど、あとはせいぜい異性にモテるってことくらいかな」
「モテる……だと!?」
「あ、うん。これも何でモテるのかまでは解明されてないんだけどね」
「めちゃくちゃ大事なことじゃねーかッ!」
「そうなのかい?」
 生まれてこの方、年齢イコール彼女居ない歴。
 そりゃそうさ、いくら世界ランクに入る凄腕でも、引きこもりゲーマーに彼女なんて出来るわけがない。
 外に出なければ女の子と出会うことすら出来ないのだからな!
「どれくらいだ?」
 俺はブックマン社長の肩をガッシと掴む。
「え?」
「どれくらいモテるんだ?」
 モテる(個人差があります)。
 では意味が無いからな。
「うーん、僕みたいなパッとしない男でも、社員みんなから好意を抱かれてると実感してるよ」
 なに言ってんだ、この冒険会社社長は。
「いやいやいや、アルトリアやリンゼやカリファが居るにしても、他のむさっ苦しい男共にモテても意味無いだろ!」
 そう、ここは冒険会社。
 その性質的に男が多いに決まっている。
 アルトリアは秘書だからまあいいとして、女で冒険者してるリンゼやカリファが稀なだけだ。
 そう何人も居るわけがない。
「うちは僕以外、全員女性だけど?」
「…………?」
「…………?」
「なんだってえええ!?」
 冒険会社の社員が全員女の子だと!?
 この世界の男共はどうなってんだ?
 それとも男が女を守る時代が終わったってことか?
 なんせ世間では女性の立場がかなり強くなってきたからな。
「ん? いや待てよ。女性社員といっても、アルトリアとリンゼとカリファしか居ないんだよな?」
 それでも3人からモテるってのは羨ましい。
 リンゼも『ちょっとエッチだけどいい人』って言ってたしな。
 セクハラされてもまんざらじゃないのかもしれない。
「いや、うちの会社は大陸中に支社があって、全社含めるとだいたい250人は在籍しているよ」
「そんだけ居て、なんでここには3人しかいねーんだよ!」
 支社が何社あるのかは知らないが、もっと居てもいいだろ。
「ここにも30人ほど在籍してるんだけどね。今は東の砦に竜が出現したらしくて、大半をそっちに派遣してるんだよ」
 30人。
 いや、全社含めるなら250人からモテるのか。
 気弱なオッサンに見えるがこの男、かなりのやり手なのかも知れないな。
 だが転生者が異性にモテるのなら、俺だって同じことが、いやそれ以上のことが出来るかもしれない。
 胸が高鳴るぜ!
「よし、俄然燃えてきたぜ異世界生活! ってさっきサラッと聞き流したけど、この世界には竜も存在するのか」
「さすがに危険だからスズキ君は関わらない方がいいよ」
「見てみたい気もするが、さすがに危険そうだもんな」
 ドラゴンと言えば、ゲームでも中盤以降の強敵だしな。
 異世界初心者の俺にはまだ早いか。
「さて、一通り転生者に関する話をさせてもらったけど、スズキ君はどうしたい?」
「ん? どうしたいって?」
「選択肢はいくつかある。まずは一つ、僕に保護されてこの会社で働く。二つ、保護を断って別の生活をする」
「三つ、この会社に引きこもってニートになる」
「それは無いね」
 いくつかあるとか言いながら、二択じゃねーか。
 ここは冷静に考えた方がよさそうだな。
「質問いいか?」
「どうぞ」
「この会社で働くってのは、どんな仕事になるんだ?」
 転生者特典のスキル能力があるとはいえ、元は引きこもりゲーマーだ。
 事務とかならまだしも、戦うとか無理だからな。
「冒険者だね」
「いや無理だし!」
 ほら見ろ、言わんこっちゃない。
「社長が戦う人間じゃないように、俺だって戦う人間じゃない」
「でもスキル能力を見る限り、戦えそうだけど?」
「いやいや、戦えそうと、実際に戦うのとは全然違うだろ?」
「慣れの問題だと思うけどな」
「だいたい俺が居た世界では、戦いとか無縁な世界だったんだ。何の訓練も無しに戦えるわけないだろ」
 そうだ、ゲームでは百戦錬磨の俺でも、リアルファイトとなれば話は別だ。
 痛いのも嫌だし、人を傷つけるのにも抵抗がある。
 未開の地の探索とかも、インドアな俺にはとてもじゃないが、出来そうにない。
 冒険者など到底無理だ。
「ではここを出ていって自力で生活するってことでいいのかい?」
「強制的に戦うよりはいいかもな」
 日本でも働いたことの無い俺が、いきなり冒険者とか出来るわけない。
 ここまで親切にしてもらって心苦しいが仕方ない。
「文無しでかい?」
「うっ!」
 足元を見やがる。
 俺はこの世界に来たばかりで、ここの通貨を持ってないからな。
「金を貸してくれ。必ず返すから」
「こちらの親切を断るのに? どうやって返す気なんだい?」
「そりゃ、他で安全な仕事をしてだな」
 さっきまで気弱なオッサンに見えていたブックマン社長が、今では俺を一握りで捻り殺せそうなくらい大きく見える。
 侮っていた。
 気弱そうに見えても、冒険会社を牛耳る男だ。
 ただの気弱な男のわけがない。
「スズキ君、君は転生者だ。そう、身許を証明するものが何も無い。そんな人間が、簡単に、安全な仕事に就けると思うかい?」
「そ、それは……」
「僕は何も一生ここで働けって言ってる訳じゃない。冒険業は危険だが実入りはいい。いくつかの依頼をこなして資金を稼ぎ、その後独立すればいいじゃないか」
「…………」
 ブックマン社長の圧力に声が出なくなる。
 本当にこの男が、さっきまで気弱に見えていた男と同一人物なのか疑いたくなる。
「この世界は資金力さえあれば、誰も何も言わない。同じ転生者である僕が冒険会社の社長をしていることが証拠さ。ルールも法律も、何も解らない異世界を一人で旅をするよりも、僕の提案を飲む方がいいと思うよ」
 話を聞く限り、ブックマン社長の提案は悪くない。
 だが俺に冒険者なんて出来るのだろうか?
「それに、僕の提案を断り、明日の命も怪しい君に、何の担保も無しにお金を貸すなんて無理だよね。でも僕の提案を飲むなら、ここの寮を使っていいし、食事も保証しよう。僕はただ、同じ転生者の君を助けてあげたいだけなんだ」
 ここまで圧倒的圧力をかけておきながら何をぬけぬけと、と思うが他に手がないのも事実。
 ここを飛び出しても彼の言うとおりで仕事にありつける保証もない。
 仮に仕事を見つけられたとしても住み込みをさせてもらえるかもわからない。
 この世界の今の季節がどんなものかは解らないが、少なくとも引きこもりニートだった俺が野宿に耐えられるとも思えない。
「わかった。よろしく頼む」
 状況的に考えて、詰みだった。


seen8

 冒険会社シャインウォールに入社することになった俺は、まずは冒険者ギルドに登録することになった。
 まさか日本では引きこもりニートゲーマーだった俺が、転生初日に就職するなんてな。
 人生何が起きるかわかったものじゃないぜ。
「アンタがうちに入社するなんてね」
「ケンタさん、これからよろしくお願いしますね」
 新人の俺は、先輩社員となるリンゼとカリファと組むことになった。
 ブックマン社長の話だと他にも社員が居るそうだが、今は全員出払ってるらしいので仕方ない。
「ああ、よろしくな。ところで冒険者って詳しくはどういった仕事なんだ?」
 俺の世界では冒険者なんて職業はゲームや物語の中だけの存在だった。
 未開の地を探検して、時には魔物と戦い、財宝や名誉を手に入れる過酷な仕事だ。
 というか、平和な日本で引きこもりゲーマーをしていた俺とは無縁過ぎる。
 ぶっちゃけ、俺の認識で合ってるのかさえ自信はない。
「まずギルドに様々な依頼が来ます。それを会社が受注して、依頼に適正な社員を選出して仕事に取りかかります」
 困惑する俺に、リンゼが丁寧に教えてくれる。
「依頼ってどんなのがあるんだ?」
「依頼の内容は様々です。モンスターの討伐や山賊や盗賊の捕縛、護衛や物資の運搬、他にも人探しなんかもありますね」
「人探し? そんなのも冒険者がするのか?」
 まるでなんでも屋だな。
「さすがに人探しは長期の依頼になりますね。でもうちの会社は大陸中に支社があるので、割りとやりやすいですよ」
「なるほど、組織として適材適所ってやつか」
「はい、適材適所ってやつです」
 リンゼはニッコリ笑って答えてくれる。
 可愛い。
 さっきは勢いでカリファにプロポーズしてしまったが、リンゼも悪くないな。
「着いたわよ」
 カリファの言葉に建物を見上げる。
 デカい。
 見たところ木造二階建てで出来ており、敷地面積にしても相当ありそうだった。
「一階は冒険者同士の交流の場でもあって、食堂兼酒場になってるわ。ギルド登録や依頼の受注は二階でしてるの」
「へいへい、んじゃ二階に行くか」
 カリファの説明に俺は階段を上っていく。
「ちょっと、お姉ちゃんと態度が違うじゃない」
「そうか?」
 まあリンゼは丁寧に教えてくれるからな。
 そりゃ教えてもらう立場として態度が変わるのも仕方ない。
 だが待てよ。
 ブックマン社長の話によれば、転生者はモテるらしい。
 ひょっとしてカリファは妬いてるのか?
「カリファ、教えてくれてありがとう。可愛いよ」
 試しにウインクしてみる。
「なに引き吊った顔してんの?」
 やったことの無い行動なんてとるもんじゃない。
 カリファには俺の真意が伝わらなかったようだ。
「登録はあちらのようですね」
 リンゼの受付で登録用紙を係員から受けとる。
「では記入していきますので、質問には素直に答えてくださいね」
「ああ、頼む」
 この世界の読み書きが出来ない俺の代わりに、リンゼが登録用紙の内容を読み上げてくれる。
 名前、住所(会社の寮の住所で登録する)、特技等、俺は順調に答えていく。
「では最後に、好みの女性のタイプをお答えください」
「好みのタイプか……ってええッ!?」
 リンゼの顔を見ると真っ赤に茹で上がってる。
 振り向くとカリファも同じように顔を赤く染め上げている。
 明後日の方向を向いているが、横目でチラチラと目が合うので興味津々なのが丸わかりだ。
 なるほど、これがモテるってやつか。
 悪くないな!
「ていうかそれ、登録とは関係無い質問だろ?」
「そそそんなことありませんよ。ハニートラップ系の依頼への耐性とか測るみたいですよ」
 嘘つけ、どもってるじゃねえか。
「で、どっちなのよ?」
「何がだ?」
 カリファが俺を睨み付ける。
「私とリンゼお姉ちゃん、とっちが好みのタイプなのよ!」
 いつの間にか二択になっていた。
 うーむ、難しい質問だぞ。
 片方を立てると、もう片方が立たない。
 何で俺、ギルド登録に来ただけで修羅場ってんだ?
「清楚で優しいリンゼも、元気で可愛いカリファもどちらも好きだ」
「なッ!?」
「えッ!?」
「ただ、今日出会ったばかりだし、どちらを選ぶなんて俺には出来ない。どっちも山賊から命を助けてくれた恩人なのだからな」
 片方からは飛び蹴り喰らったけどな。
 今、焦って答えを急いではいけない。
 俺の男の勘がそう告げていた。
 まあモテた経験が無いから、上手い対処方法が解らないだけなんだけどな。
「ま、まあいいわ。そういうことにしといてあげる」
「では書類を提出してきますね」
 どうやら二人に好意を抱かれているようだ。
 いったい、いつそんなフラグが立ったんだ?
 美少女ゲームの世界では一級フラグ建築士である俺にも全くわからん!
 これが転生者マジックってやつか!?
「これで登録は完了しました。ケンタさんも私たちと同じ三等冒険者ですよ」
 戻ってきたリンゼが嬉しそうに報告してくる。
 そうか、これで俺も三等冒険者か。
「ってお前らと同じ階級なのか?」
「そうよ」
「お前ら下っぱじゃねーか」
 一番下の階級で先輩面してたのかよ。
 竜退治の選抜から抜けてた時点で薄々予想してたけどな。
「仕方ないじゃない。登録したてはみんな三等傭兵から始まるんだから」
「実は私たちも今回の依頼が初めての仕事なんですよ」
 先輩どころかまさかの同期!
 俺たちのチーム、大丈夫なのか?
「ちなみに階級ってどれくらいあるんだ?」
「そうですね。下から三等、二等、一等、ここまでを初級と纏めます」
 リンゼが丁寧に答えてくれる。
「そこから中級、上級、特級、超級になります」
「ということは、全部で七段階あるってことか」
「そうなりますね」
 リンゼはニッコリと微笑み頷く。
 道のりは長いが、この笑顔と一緒に歩んでいけるなら悪くないと思えた。
「これで登録完了って、実技試験みたいなのは無いんだな」
「元々は腕に自信のある人がなる職業ですからね」
「私たちもアルトリアさんからは、一等冒険者並の実力があるって言われてるのよ」
「マジか。てことは、三等冒険者相当の実力者は俺だけってことか」
 なんせ俺は戦闘経験ゼロだからな。
「そこは私たちがフォローしますから、安心してください」
 リンゼが任せろと言わんばかりにたわわな胸を叩く。
 おお、揺れたぞ!
「アンタくらい、私が魔法で守ってあげるわよ」
 カリファも同じように胸を叩く。
 出来ればローブをめくってから叩いていただきたい。
「ところで俺たちの初依頼って何だ?」
 一等冒険者級の仲間が二人居るとはいえ、最初は簡単なのがいい。
 楽で簡単なのが。
「アンタを助けたせいで取り逃がした、暁の山賊団の捕縛よ」
「あー、あいつらか……ってなにぃ!?」
 初依頼が山賊団退治だと!?
 しかも三人で?
「いきなり対人戦とかヘビーだな」
「そうでもありませんよ。彼らは訓練を受けた兵士ではありませんし、基本的にはならず者の集団です。技術の伴わない人数など、訓練を受けた私たちにとっては赤子の手を捻るようなものです」
 そこまで実力差があるものなのか?
「あの、俺もどちらかと言うとならず者側の実力なんですけど?」
「問題ありません。ケンタさんは私たちが守ってみせますから」
 頼もしい言葉だが、男が女に言われると少し惨めな気分になるな。
「今度会ったら絶対に叩きのめしてやるんだから!」
 カリファはシャドウボクシングのように拳を振るっている。
 お前、たしか魔法師だったよな?
「ただ、問題が無い訳でもありません」
「何かあるのか?」
 実力的に負ける心配がないとすれば、一網打尽に突き進めばいいんじゃないのか?
「暁の山賊団のアジトの場所が、まだ不明なんです」
「だから、その調査から始めないといけないってことか?」
「はい」
 それは面倒臭そうだな。
 調査も冒険者の仕事なのか。
「しかもケンタさんを助けた戦いのせいで、相手側に討伐隊が手配されていることがバレてしまっています。早くアジトを見つけて叩かないと、逃げられる可能性もありますので」
「つまり時間が無いってことだな?」
「はい」
 まいったな。
 こりゃ登録を済ませた後は寮でゆっくり過ごすっていうプランは無いようだ。
「何かいい方法はないのか?」
「こればっかりは足で探すしかありません」
 想像しただけでげんなりしそうだった。
 足で探すって、昔の刑事ドラマかよ。
 どれだけ範囲があると思ってんだ。
 しかも時間制限付き、なかなかの骨が折れそうな依頼だぜ。
「暁の山賊団のアジトなら案内してあげましょうか?」
 突然背後からかけられた声に振り向くと、そこには見知らぬ男がたっていた。


その4へ続く
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