mixiユーザー(id:946351)

2017年08月15日16:53

342 view

昨夜の「コード・ブルー」は安達カラー?

今夜の「コードブルー」第5話は、「他人の痛みはわからない」とか「起こったことは全て自分の責任ととらえる」とか……、妙に哲学チックな命題(テーマ)がチラチラしていたのですが、これまでよりも脚本の安達奈緒子さんのカラーが強く出ていたような印象を受けました。

特に後者、レスキュー隊員のセリフは、安達さんカラーだけでなく、倫理学テイストを濃厚に感じさせるセリフだったので、ちょっと書き出しておきます。

負傷したレスキュー隊員を誤診した有岡大貴が、そのレスキュー隊員に「あの状態で全員助けられなくても誰も責めないですよ」と(自己弁護的に?)言ったときの、レスキュー隊員のセリフ。

「でも、レスキューの現場に条件のいいときなんてない。だから何か起きたとき、言い訳をしようと思えば、いくらでもできる。資機材が足りなかった。通報が遅かった。だから救えなかった。そう言えば許されるだろう。でも、そんな言い訳をする人間に命を預けたいと思うか。人は、起きたことは全て自分の責任だと言い切れる人間に命を預けたいと思うものだ。俺の仕事はそういう仕事だ。ドクターヘリだってそうでしょ?」

倫理の本質は「非合理的だけど意味(価値)がある」という点にありますが、上記のセリフはそれの具体バージョンという感じです。合理的に考えたら「人間に自由意志などなく、すべては自然法則の結果だ」と言えなくないが、それでも「自分に自由=責任があるかのように生きる」ことには価値がある――という議論によく似ています。

安達さんは、職業倫理に関するセリフが多い人ですが、職業全般に通じる倫理よりも、個別の職業ごとに存在する職業倫理について書くことが多いように思います。このセリフも救命職に限定した職業倫理として語られています。

ちなみに、彼女の出世作「大切なことはすべて君が教えてくれた」では、三浦春馬の先輩教師だった西村和彦にこんなセリフがありました。(記憶で書くので不正確です)
「俺はイケメンじゃないから、女生徒は俺を男として見ない。でも、この仕事をする上では長所だと思っている。大切なのは人として向き合うことだから」
このセリフは、そこそこ合理的だったりしますが、印象的なセリフでした。(^^;;

レスキュー隊員の話に戻りますが、このテーマはこのシーンの後、ケガの後遺症で仕事ができなくなった調理人(丸山智己)のエピソードで変奏されていました。仕事ができなくなって奥さんに離婚された丸山智己が、自分自身を納得させるように「こうなった俺が悪いんだ」と言っていました。

蛇足になりますが――、世の中には非合理的な精神論を振り回す人がたくさんいます(どこかの高校野球の監督とか)。ただ、そういう人たちは持論が合理的だと思ってるケースが多いので、「非合理的だけど意味がある」という議論とは、ちょっと違うんですよね。閑話休題。

もう一つのテーマの「他人の痛みはわからない」ですが、ドラマ全体ではこちらの方がメインのテーマだったみたいです。冒頭のナレーションで登場して、「人は幸せになるために結婚するんじゃない。つらい毎日を2人で乗り越えていくために結婚する」というセリフを経由して、終盤のナレーションの「その痛みを分かち合いたいと思ってくれる人がいる」でオチをつけていました。この辺の作劇は、ロジカルかつ緻密ではあるのですが、視聴率や一般的な人気には結びつかないような気がします。説教臭いのは許容できるとしても、ドラマとしては地味。

ところで、この第5話は有岡大貴の小芝居がやたらと目につきました。レスキュー隊員のシーンでも、セリフを言う前に「うわっ」と言っていましたが、ああいうのは台本にはなさそうですね。

2 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する