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2017年08月13日09:36

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『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』(原題:東柱)

 韓国映画趣味で『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』(原題:東柱)を鑑賞。

 映画館は7割くらいの入り。一番大きなハコでこれだから、お客さん多いのね。上映延長になった理由が分かった。



<<<<< 以下、ネタバレ有り。未見の方は読まないように!>>>>>




 あらすじ:

 従兄弟で同学年の宋夢奎(ソンモンギュ)とともに独立運動をしたとして、治安維持法違反の疑いで警察の厳しい取調べを受ける尹東柱(ユンドンジュ)。夢奎との関わりを問われ、昔を思い出す...

 旧制中学在学中の東柱と、従兄弟で同学年(1917年生。ちなみに文益煥も同じ村で同学年)の夢奎。夢奎は世界革命思想にかぶれていたが、クリスチャンホームで育った東柱はそれよりキリスト教に心惹かれていた。

 そんなある日、東亜日報の新人文藝欄で夢奎の短編小説が入選。東柱は詩を書き、夢奎は散文、と2人で学生雑誌を出す。

 その後、京城(現在のソウル)に行き延禧専門学校(現在の名門・延世大学校。日本で言うと慶応に相当する有名大学)に入学。ここでも2人が中心となり雑誌を出す。

 この頃、夢奎は活動に熱心になり、上海臨時政府の金九に会いに行ったり、二重スパイのイフンを暗殺したりしている。捕まった夢奎に東柱が面会に行ったり。ただ、このあたり、警察の主張なので真偽不明? 映画では夢奎は取調べで否定している。確かにそういうことをしたかったが、力及ばず出来なかったのだ、と。

 卒業式でキレた夢奎は、東柱を誘い、創始改名した上で日本に留学する。東柱は平沼氏に。二人は京都帝大を目指すが、夢奎のみ合格。落ちた東柱はミッションスクールである立教に入学。立教では尊敬する恩師・高松先生と、その養女?に出会う。幸福な学びの日々だったが、教練を拒否したため軍人ににらまれ、東柱は京都の同志社に転学する。

 京都時代、独立活動家だった夢奎は東柱を引き込まないよう配慮し始めるが、時既に遅し。1943年に夢奎は逮捕され、ほどなく、東柱の詩の英訳版を作った恩師の養女と会っている最中に、東柱も逮捕されてしまう。冒頭の取調べに戻り、捏造された調書に署名捺印を強制され、2人は懲役2年の判決を受ける。、

 45年2月10日に東柱は福岡刑務所で獄中死。夢奎も同年3月10日に獄中死。


 感想:

 韓国の国民詩人とされる尹東柱の生涯を、旧制中学校時代から白黒で描いた作品。虚実ない交ぜだけど、極端な美化も極端な反日色も無いと思う。

 韓国の一部は
「尹東柱は禁じられていた朝鮮語で詩を書いたから逮捕されたのだ」
と誤解しているけれど、ちゃんと独立運動による治安維持法違反での逮捕として描かれているし。かと言って、勇敢な独立運動の志士もしくはリーダーという描き方でもないし。

 また、日本人の善玉(恩師高松教授)も出てくるし。代用血液(実態はほぼ海水)の人体実験で獄中死したのだ、という設定でこれは真偽不明だけれど。収監から2年経たずに死亡していること、多数の注射はされていたことなどは史実なので、何らかの「不適切なこと」が獄中であったことはそうなのだろうと思うし。

 ちなみに、彼の詩が世に出たのは高松教授の養女?(日本人)の功績みたく映画では描かれているけれど。実際は、彼が延禧専門学校卒業時に、自選詩集『空と風と星と詩』
(映画の邦題の由来。彼のキリスト教信仰を考えると、
 原文のハヌルは空ではなく天と訳した方が正しいかも)
友人に配布した詩が、戦後(韓国独立後)、韓国で「再発見」されたのがきっかけらしい。つまり、ここでも、日本人が善玉として描かれている。高松先生以外は日本人役者を使ったのか?日本語も自然だし(取調べ担当刑事役は在日コリアン)。

 ちなみに、正しい時系列は、
  → 1917年間島(現在の中国東北部延吉とその周辺)生まれ
  → 旧制中学時代など、童詩を作りカトリック雑誌に発表。
  → 1938年延禧専門学校入学。ここで朝鮮語を専攻し朝鮮語で詩作。
   彼の知られている詩の大半はこの時期の作品。
  → 1940年、創始改名。平沼東柱に。
  → 1941年卒業
  → 1942年4月。親の勧めで東京留学。立教へ。独立運動計画?
  → 同年9月京都に移り、同年10月に同志社大に転学。
  → 1943年7月に逮捕
  → 1944年冬に起訴、3月末に懲役二年の判決。45年冬に死亡
  → 日本敗戦後、彼の詩が発見される
だそう。

 ただ、彼の詩自体は、そんなに大した詩なんでしょうか。詩で感動したことが一度も無い私には、よく分かりません。「禁じられていた朝鮮語で詩を書いたため逮捕され、若くして獄中死した独立運動家が書いた」という逸話が売りで世に出ただけの、凡庸な詩にしか見えない。。。私は詩ごころが無いので、客観的な評価は出来ませんスミマセン。

 彼が関わっていたとされる独立運動も、そんな大それたものではなく、正義感に燃える若者が友人同士で熱く政治を語り合っていた、ムカつく教練の軍人には逆らってみせていた、程度のものにしか感じない。それで逮捕されてしまう日本の治安維持法が大問題なんだけど。具体的な行動はほとんど無し(上海云々は日本警察による捏造?)。今なら「SEALDs」よりずっとショボイ感じ。


 キネ旬的5段階評価では、私は星3つくらいの映画に感じました。
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