ネットで「日本の技術者は安く使われ過ぎ。他国並に高給で遇せ、さもなければ人材が流出して当然」という意見を散見する。でも、これ2つの要因があって、対処は簡単ではない。
まず、現在、日本の技術者が安く見えるのはアベノミクス第1の矢(超金融緩和)で円安になったことも大きな要因のひとつ。為替レートが3分の2になったからね。つまりドルベースで見れば日本人の賃金は3分の2になったんだから、そりゃ安く見える。
この点を改善するには、円高にせざるを得ない。でもそれには超金融緩和を止めることになるのだけど、言われている通り、良い出口戦略が無い。迂闊に急ブレーキをかけると、株価が暴落したり金利が急騰しかねない。なので、止める場合であっても、ソロソロと慎重に行う必要がある。とても難しい。
第二に、他国は首切りも賃下げも日本よりは容易。つまり、海外企業は、その技術者の旬の時期にだけ、高給を払える。旬が過ぎれば賃下げしたり解雇出来たりする。四半世紀前、韓国サムスン電子に半導体技術を売った日本の技術者たちは、多くは数年で解雇されてるよね。
それに対して日本は、一度高給を出すとよほどのことが無い限り、定年までそれを維持し続けないとイケナクなる。定年退職時、多額の退職金も支払うし。世間の監視が緩い中小企業は首切ったりするけれど、ある程度以上の大企業だと世間の目があるので出来ない。なので、そういう大企業が解雇するには嫌がらせしたりリストラ部屋送りにしたりしてその社員が自ら辞めるのを待つことになるんだけど、これは経済的・精神的なコストがとても大きくなる。ここまでやっても、やっぱり世間から非難されるし、(事実上)解雇される技術者にとっても、より不幸だし。
賃金を下げるのも、組合が猛反対するなど、とても難しい。それどころか、年功序列で少しずつ賃金が上がったりするし。
また、サラリーマン技術者だと給与体系を逸脱する高給を出すのは制度上難しかったりもするし。なので独立させ子会社社長として高給を取らせたりもするけれど、本人が嫌がったりして限界がある(技術者としての実力と経営者としての能力は別だしね)。
なので、今の日本企業では海外企業と対抗できるほどの高給は出せない。
以上、日本の技術者に高給を出せるようにするためには、
1) 超金融緩和を止める
2) 金銭補償解雇制度の導入と、賃金の下方硬直性の打破を行う。
年功序列賃金制度や、退職金制度も見直し。
などが必要となるので、とても難しい。
※ 要するに、1)がアベノミクス第1の矢の漸次縮小。2)が第3の矢推進ですね。
ログインしてコメントを確認・投稿する