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2017年07月12日23:58

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我々はいつから水着回に夢を見るようになったか

ニコニコが海の日にアニメ“水着回”のみ19本を8時間一挙放送 ありがとう海の日、フォーエバー海の日
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=4663610

 アニメの「水着回」が話題になるのって、どれくらい昔に遡れるのだろうか。
 そもそもアニメに限らず、映像の中で初めて水着が登場するのはいつのどんな作品なのだろうか。
 映像そのものは現存していないが、記録に残る最古の「水着美人」は葉山三千子。映画は『アマチュア倶楽部』と言って、製作・原作・脚本は、何と文豪・谷崎潤一郎である。日本文学史を齧ったことがある人ならご存知だろうが、葉山は谷崎の義理の姪で、しかも愛人だった。『痴人の愛』の「ナオミ」のモデルは彼女だとされている。「水着美人」は、その発祥から、かなりスキャンダラスな存在だった。
 『アマチュア倶楽部』の公開は1920年。何と大正9年である。第二次大戦前は、水着シーンなど、風紀紊乱と見なされて、撮影なんて不可能だったんじゃないかと思い込みがちだが、「大正デモクラシー」の空気は、水着シーンによる「性の解放」をも齎していたと判断していいように思う。

 次に「水着シーン」と言われて思い出すのは、戦後すぐの映画、今井正監督の『青い山脈』における杉葉子の水着シーンだ。当時、水着から伸びたスラリとした彼女の美脚にドキドキしたと告白した著名人は少なくない。しかしそれは水着に性的な魅力を感じたというだけのことではない。彼女の水着が何を象徴していたか、これに答えられない映画ファンはいないだろう。もちろん「民主主義」である。
 言論統制、思想弾圧から一気に解放され、「自由」の空気を思い切り吸うことができるようになった日本人は、まずは「恋愛」を解禁した。今の若い人は想像もつかないと思うが、戦前は若い男女が連れ立って歩いていても、憲兵に見とがめられたりしてたんだよ。
 『青い山脈』が大ヒットしたのは、ヒロインの水着が拝めるというだけのことではない。誰もが「自由」の空気を見に浴びたいと思った。その願いが、映画に観客を引き寄せたのだ。
 けれども、その後の映画での水着シーンに、そうした「人間の自由」を感じ取ることは難しくなっていく。それは、水着が「長く続くシリーズ」のテコ入れ的役割を担わされることが頻繁になっていったせいだ。、『若大将』シリーズで、舞台が海やら南国になるとヒロインは決まって水着にさせられる。そしてその流れが、テレビドラマにも影響を与えていく。

 普通の実写ドラマの水着回というのはテレビ創世期からあっただろう。しかし、当時の映像の多くが失われてしまっている現在、その「元祖」が何という番組であるかを確定するのは困難だろう。私が記憶している一番古いドラマの「水着回」は、『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」でのアンヌ隊員(ひし美ゆり子)の水着姿であるが、これが特撮ドラマの元祖かと言われると、そう断定することが憚られる。それ以前にもあったとしても全然おかしくはないが、たとえば『月光仮面』などに水着回はあっただろうか。

 これがテレビアニメとなると、もうどれが元祖か博捜しないことにははっきりしたことは言えなくなる。
 テレビアニメ第一号『鉄腕アトム』で、ウランちゃんが水着になったことがあっただろうか。もう記憶の彼方過ぎてよく分からない。ゲストヒロインなら、第22話「海蛇島」で南洋の少女がビキニ姿だった記憶はあるが。1963(昭和38)年のことだから、これが一応はテレビアニメの水着回の元祖なんじゃないかと思う。

 ただ、オタクが「水着回」と言う時には、ただキャラクターが水着になったということではなくて、お約束のサービスというかテコ入れ回というか、そういう「狙った」感があるものを指すので、そうなると「真の元祖」はもう少し時代が下ることになるのかもしれない。
 実は高校時代、文化祭で、「アニメの水着ヒロイン特集」なんてのを文芸部のみんなで企画展示したことがあったのだが、その時には『マジンガーZ』の弓さやかや、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪、『勇者ライディーン』の桜野マリ、『機動戦士ガンダム』のセイラ・マス、『ルパン三世』の峰不二子ら、当時集められるだけの水着シーン(もちろんテレビからの直接撮影である)を展示した。1970年代の後半から「水着回」はアニメの定番となっていたのだ。
 オタクの関心を惹くようになったという点では、この時代のヒロインたちを「元祖」と呼んだ方がいいように思う。

 ハーレムアニメ、萌えアニメがブームになってくると、こうした「水着回」はどんどん露骨になって行って、エピソードの頭から最後まで水着だらけの乳揺れ三昧で、以前のようなファンにとっての「ささやかな喜び」的な印象はなくなってしまっている。
 本当にシリーズに一回だけ、それも数カット程度という貴重な水着シーンを愛でる風情が失われてしまったのは、かえって寂しいことのように感じてしまう。この水着特集、見ようかどうしようか迷うな。
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