国民の皆さん安心して下さい

6.25、朝鮮戦争開戦の日。

韓国人の掲示板やTwitterでは、
何かの不祥事に際して政府や企業の責任者が
嘘バレバレのデマカセ発表を
行っているのを見つけると、すかさず
初代大統領・李承晩(이승만　イ・スンマン）
の演説画像を貼って

「国民の皆さん安心して下さい！」

"국민 여러분 안심하십시오!"
（クンミン　ヨロブン　アンシマシプシオ!）



という言葉が添えられる、定番ネタがある。


日本でいえば、安倍総理の
東京五輪招致演説における

「状況をアンダーコントロール」
「汚染水を完全にブロック」

みたいな感じで使われるコピペで、
朝鮮戦争開戦直後の6月27日に
李承晩大統領が放送で国民に呼びかけた
以下の演説が元ネタになっている。

「同胞の皆さん、
安心してソウルを保ってください。
敵は敗走しています。
政府は、大統領以下、
全員が普段と変わらず中央機関で執務して、
国会でも首都ソウル死守を決定しました。
国軍の総反撃に敵は撤退中です。
我が軍は昼食は平壌で、
夕食は新義州で取る予定です。
この機会に、私たち軍は敵を鴨緑江まで追撃し、
民族の宿願である統一を達成するでありましょう。」

李承晩のこの演説が非常に悪質なのは、
この時点で李承晩は既にソウルにおらず
僅かな側近だけを連れて大田まで逃げ出しており、
そこでこの演説を収録して放送させたという点だ。

国会がソウル死守を決議したことを
大統領の所へ報告に行った時、
既に青瓦台（大統領府）の執務室は
もぬけの殻だったという（笑）

李承晩は、自己の政府要人もソウル市民も
全部投げ捨てて命からがら逃げ出し、
それにも関わらず、自分がまだ
ソウルにいるかのように偽装して
市民に向かって
「避難せずに市内にとどまってろ」
と呼びかけたわけだ。

そして翌6月28日には、
多数の市民が車や徒歩で通行中だった
漢江大橋の人道橋を韓国軍に爆破させて、
民間人に多数の犠牲者を出した。

全ては、朝鮮人民軍の足止めを狙った
李承晩一味の悪魔のような計略だったが、
狡智虚しく、首都ソウルは同日陥落した。

韓国の社会派魔法少女アニメ
『フラワーリングハート』では、
悪役のトランプ王子は、李承晩が爆破させた
漢江大橋近くの河川敷に、いつもいる。

非常に意味深である。




朝鮮戦争停戦後、李承晩は、
かつての朝鮮神宮の跡地である南山に
自分の巨大な銅像を建設した。

李承晩退陣後に銅像はいったん撤去されたが、
最近、有志の手によって
サイズは小さくなったものの、
南山の李承晩像は再建が為されたと聞く。

ちなみに『フラワーリングハート』では、
この南山は、トランプたちが運用する
「絶望エナジーの送受信基地」になっている。



おのれの権力維持のため、
朝鮮戦争での韓国側戦没者数を上回る
約100万の自国民を虐殺した、李承晩。

多大な犠牲を払った内戦の
戦争責任の一定部分は彼にもあり、
決して、単純な北の南侵戦争とのみ
あの戦争を捉えるべきではないと私は考える。

なお、『フラワーリングハート』の主人公、
ジン・アリちゃんの一族も、
朝鮮戦争に先立つ1948年の済州島4.3事件で
島内の家の70％を焼き尽くされ、
島民の5分の1が李承晩に虐殺された
済州島民の出身（ということは済州秦氏？）
という設定である。