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2017年06月21日02:33

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『三大怪獣地球最大の決戦』の壮大なるリメイク

■ハリウッド版『ゴジラ』モスラ×ラドン×キングギドラの怪獣対決が撮影スタート!
(シネマトゥデイ - 2017年06月20日 17:36)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=14&from=diary&id=4629863

 怪獣映画に関心を示すのはもしかしたらアニメオタクよりも少ないんじゃないかという思いを抱きつつ(『シン・ゴジラ』を観て「怪獣映画だと思ってバカにしてたけど観てみたらとんでもなかった」って感想、たくさんあったしな)、やっぱり怪獣対決頂上決戦がいよいよ実現するのかと思うと、マジ泣きしそうになるほど嬉しいのである。
 とは言え、これを劇場でちゃんと観ることができるのかどうかという点になると、いくつかの障碍が眼前に立ちはだかっているのであって、その最たるものが私の場合は妻なんだね(笑)。妻は「初代ゴジラが一番いい」派で、怪獣プロレス物はむしろ嫌いな方なのだ。けれども、作品がシリーズ化されるとどうしても怪獣を複数出さなきゃいけなくなって、全部対決がメインになってしまうために、これまでもこの手の作品に誘うのはなかなか一苦労なのであった。
 でも、なんたって今度の作品は、実質的に昭和ゴジラシリーズの総決算だった『三大怪獣地球最大の決戦』に登場した怪獣たちの再集合である。更にはこの先、予定されている『ゴジラvsキングコング』の前哨戦でもあるのだ。観ないわけにはいかないのだが、はてさて、妻の感興を呼び起こすほどの材料、情報がまだまだ足りないので、頭を抱えている最中なのである。
 「またまた金星人が出るよ!」と言ったら観てくれるかもしれないが(苦笑)。

 今、『三大怪獣地球最大の決戦』を観たら、サルノ王女(若林映子)の「私は金星人です」に大笑いするお客さんも多いかもしれない。公開当時だって、現実にそんな人間が現れたらたいていは笑われていたと思うが、宇宙友好協会(CBA)のように、マジで宇宙人の来訪を信じていた人々もいたので、あながち冗談話だったとも断言できない背景がある。
 この、「自称宇宙人」が人間社会でトラブルを巻き起こすという設定は、安部公房が『使者』という短編を1958年に発表(後に『人間そっくり』と改題して長編化)したのが初出だと思う。それを三島由紀夫が真似て『美しい星』(1962年)を執筆し、そして『三大怪獣地球最大の決戦』(1964年)のサルノ王女へとつながっていく。
 宇宙人が人間に擬態して地球にやってくる話は欧米にもあるが、普通の地球人が宇宙人を名乗る(そして最初、それが真実かどうかは分からない)というアイデアは、アイデンティティ・クライシスを哲学的テーマとすることの多い日本文学の特徴の一つと呼んでもいいものであった。だからこそ、UFOブームが起きた50〜60年代、安部公房や三島由紀夫は、単純な「宇宙人は実在するか」という視点ではなく、「地球人はなぜ宇宙人を求めるのか」という哲学的視点で、地球人を逆照射しようとしたのだ。
 『三大怪獣』では、安部や三島が感じていた「脅威」がキングギドラという「宇宙怪獣」に集約されてしまったために、「人類の自滅」というモチーフがかなり希薄なものになってしまっているが、ゴジラも、ラドンも、モスラも、そもそも怪獣たちの出自が、人間の科学に対する盲信、拡大する核実験と自然破壊を背景にしていることと考えあわせれば、キングギドラもまた、ただ単にいきなり襲ってきた「外敵」程度の存在ではないことに気付くはずなのである。
 キングギドラは、人類が築き上げた文明すべてに対するアンチテーゼだ。人類の存在自体を絶対否定する破壊者である。人間に、その存在意義を主張すべきどんな理由が、根拠があるのか? その思想は平井和正『幻魔大戦』に、宮崎駿『風の谷のナウシカ』に引き継がれることになる。キングギドラは、幻魔の、王蟲の祖先なのだ。

 キングギドラをただの古代怪獣とか、ミュータントだとか、その程度の設定にしてほしくない、やっぱり「宇宙超怪獣」として復活してほしいと思うのは、初代キングギドラがそういう存在だったからだ。モンスターバースの前作『ゴジラ GODZILLA』や『キングコング:髑髏島の巨神』でも、「地上は我々人類のものではない」という思想が語られていただけに、そのことをより強調するためにも、古代における覇権争いも「宇宙規模」だったということにしてほしい、と思ってしまうのである。
 今回、改めて四代怪獣が揃うのであれば、モナークのメンバーの中に、一人くらい「金星人」か「火星人」がいてほしいと思う。今どき、太陽系内の惑星はないでしょ、と仰るなら、レチクル座ゼータ星人でもいいから(笑)。

 ただねえ、『三大怪獣』に至るまでの怪獣シリーズにはまさしくモンスターバースと呼んでもいい歴史があって、ゴジラは当然、初代『ゴジラ』(1954)から数えて5作目、ラドンは『空の大怪獣ラドン』(1956)から2作目、モスラは『モスラ』(1961)『モスラ対ゴジラ』(1964)に続く3作目であり、それまでに観客に共有されてきた背景設定がしっかりあるわけよ。前述した通り、三大怪獣は全て世界の核実験の犠牲者なのだ。それがゴジラたちの「人間はみんな俺たちをいじめてきた(通訳:小美人)」に繋がっている。
 『ゴジラ GODZILLA』は、その核の暴走をアメリカ映画が自国の「罪」として描いた初めての映画となった。ラドンも、モスラも、もちろん元々は古代怪獣であるわけだが、原典通り、そういう怪獣であってほしいと願っているのである。

 予告はされていても企画がポシャッてしまうことも少なくないハリウッド映画で、予定通り『怪獣王ゴジラ』(という邦題にはならないと思う)が製作されていることは嬉しい。
 ラドン、モスラ、キングギドラの登場は『キングコング:髑髏島の巨神』のラストでも正式にアナウンスされていたことだが、実はティム・レボンが執筆したノベライズ版では、さらに興味深い記述がある。もうネタバレって時期じゃないから紹介しても問題はあるまい。

「彼は単一色のペンキが塗られた壁に、フィルムを投影し始めた。
 古代の洞窟壁画、腐食した彫刻、すり切れたヒエログリフに描かれたあらゆる形や寸法の、幻想的で恐ろしい生き物の写真だ。
 いくつかは認識できた――コングに似た生物が、巨大な有翼獣と戦っている。
 ほかの写真は、もっと謎めいていた。巨大なトカゲが後ろ肢で立ち、巨大なトンボと戦っている。
 ハンマーヘッドの野獣が、いくつもの尻尾の生えた骸骨状の鳥と格闘している。
 三つ首のドラゴンのようなもの、蛾とも蝶ともいえない姿のものもある。
 コンラッドは息を呑んだ。ウィーバーは何か言おうとしたが、声がしゃがれた。実際には言うべき言葉などなかった。
 全員が心の中で思っていた――。
 “王(キング)”はコングだけじゃない――。」

 「有翼獣」がラドンで、「トカゲ」がゴジラ、「ドラゴン」がギドラ、「蛾」がモスラだとは分かる。映画本編のラストシーンでも、これらは確認できる。けれどもそれ以外の怪獣は?
 巨大なトンボはメガヌロン(メガギラス)なのか。ハンマーヘッドの野獣や骸骨状の鳥とは新怪獣か、それとも『パシフィック・リム』とも世界観をリンクさせようとしているのか。
 レジェンダリーは、もしかしたら『ゴジラvsコング』の後も、シリーズを続けるつもりなのかもしれない。



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