2017/6/15木 19:00- 東京文化会館
音楽:ボリス・アサフィエフ
台本:アレクサンドル・ベリンスキー、アレクセイ・ラトマンスキー
(ニコライ・ヴォルコフとウラジーミル・ドミトリエフの原台本に基づく)
振付:アレクセイ・ラトマンスキー
原振付:ワシリー・ワイノーネン
美術:イリヤ・ウトキン
エフゲニー・モナホフ
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
<出演>
ジャンヌ(ガスパールとリュシルの娘):クリスティーナ・クレトワ
ジェローム(ジャンヌの兄):アレクサンドル・スモリャニノフ
フィリップ(マルセイユ生まれの青年):イワン・ワシーリエフ
アデリーヌ(侯爵の娘):アナ・トゥラザシヴィリ
コスタ・ド・ボールガール侯爵:イーゴリ・ツヴィルコ
ミレイユ・ド・ポワチエ(女優):マルガリータ・シュライネル
アントワーヌ・ミストラル(俳優):ダヴィッド・モッタ・ソアレス
ジャルカッス(侯爵に仕える老女):イリーナ・ズィヴロワ
ジルベール(マルセイユ義勇軍の隊長):アレクサンドル・ヴォドペトフ
フランス国王ルイ16世:ゲオルギー・グーゼフ
フランス王妃マリー・アントワネット:マリーヤ・ジャルコワ
ガスパール(農民):ユーリー・オストロフスキー
リュシル(ガスパールの妻):アンナ・アントローポワ
バレエ《リナルドとアルミーダ》
愛の神アモール:オルガ・カリーニナ
花嫁の幻影:ネッリ・コバヒーゼ
アルミーダの友人:アリョーナ・コワリョーワ
オルガ・マルチェンコワ
マルファ・フョードロワ
ヴィクトリア・ヤクシェワ
女神たち:エルヴィナ・イブライモワ
ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
クセーニア・ジガンシナ
ヤニーナ・パリエンコ
ダリーヤ・ボチコーワ
アナスタシア・グバノワ
狩人たち(侯爵の友人):バティール・アナドゥルディエフ
マクシム・スーロフ
マクシム・オッペンハイム
セルゲイ・クズミン
オーヴェルニュの踊り:オクサーナ・シャーロワ
ヴェラ・ボリセンコワ
イワン・アレクセーエフ
ヴィタリー・ビクティミロフ
マルセイユ人の踊り:アルトゥール・ムクルトチャン
アレクセイ・マトラホフ
ゲオルギー・グーセフ
国民公会の議長:アレクサンドル・ファジェーチェフ
儀典長:アレクセイ・ロパレーヴィチ
画家ダヴィッド:ユーリー・オストロフスキー
従軍商人:エウゲーニャ・サヴァルスカヤ
ボリショイ祭り、東京公演の千秋楽「パリの炎」を観てまいりました!いやーーーーー楽しかったー!!!!!
この作品、ガラ公演でパドドゥだけは観たことがあるのですが(そういう方、多いと思いますけど)、あのパドドゥは本当に作品のごく一部。全部観ると実によくできた作品です。今まで観たラトマンスキー作品の中で一番好きかも。
ストーリー自体はジャンヌとフィリップの若いカップルを主軸に、身分の差を超えたジェロームとアデリーヌの大人の恋愛、そしてフランス革命で蜂起する民衆の熱狂を描いたもので、単純なのですが、
・とにかく全編これでもかと踊りまくり
あの有名なPDDだけではありません。主役以外もコールドも最初から最後まで息つく間もなく踊りまくる。民衆のエネルギッシュな踊りに加えて、劇中劇では優美な踊り、民族的な踊り、などバラエティも豊か。
・その実とても演劇的。
ストーリーは単純なんですけど、バレエというよりミュージカルのようだな、と感じるシーンが多々ありました。踊らないシーンで群衆として出てくるとき、「コールド」ではなく「群集」という扱いで、一人一人がちゃんと違うキャラクターを演じるようになっていたからかな。舞台装置も大砲だ馬車だ櫓だと、ミュージカルっぽかったしな。ま、あと、単純に、フランス革命っていうとミュージカルと何となく結びつきやすいというのはあると思います。レミゼや宝塚の影響^^; でも、この演劇的な感じが、単なる踊りのショーでなく感じさせるいいスパイスでした。
・しかも最後のシーンで重たい問題提起。
パリの炎、テレビ放映されたのを録画はしてあるのですがちゃんと観てなかったんです。最後のシーン、前日ご覧になった方々の感想で知っていたものの、生で観ると背筋が寒くなりました。あのPDDが終わり、熱狂のうちに作品が終わるかと思っているところに、おもむろに天井から降りてくるギロチン、突然捕まるアデリーヌ、彼女を悼みながらも熱狂する群集に一体化するジャンヌとフィリップ、その群集に押し潰されるような状態で彼女の首を抱きながら慟哭するジェローム・・・。あの最後のシーン、バックが暗くなりステージ上に溢れんばかりにぎっちりつまった群衆がずんずん前に進んでくるところ、すっごく衝撃的な絵でした。フランス革命自体は民衆の解放なのだろうけど、そこで失われた命の中には彼女のような善良で罪がなく、誰かにとってとても大切な人だったケースもあったのだと。そういうことまで大儀のためと許されていいのか、と。そういう問いかけかな。現在の日本の不穏な政治状況を見ていると、誰だってこの群集の一人になってしまうか、あるいは、彼女のようになってしまう可能性があるよねと言われているようで、うすら寒い。ラトマンスキー凄いな。
さて、ダンサーについて。
ワシリエフ、だいぶ全方向に膨らんだ感じはあるけど、あの重たそうな体がバンバン高く跳ぶ様は実に痛快!バレエ用語が分からないのですが3回転するあのジャンプのシーンでは思わず客席で声立てて笑ってしまう人多数。回転も全く不安なし!いやはや、シムキンとはまた全然違う力強いテクニシャンで、こういうことできる人は今世界には彼しかいないんだろうなって思います。観られてよかった!
ジャンヌのクレトワ、テクニックは素晴らしいと思いました。連続フェッテもスミルノワ並に軸が動かなかったしあのスピードなのに手を上げてのダブルとか入れてたし!ただ、まだ、真ん中で思いっきりどや!って見栄切れるほどの自信が足りないかなー。まあまだ若いし、これからの人だと思います。
それにしてもこの役はオッシーで観たかったものよ、とつくづく思いました。もちろん、クリサノワもはまり役だと思う。ラントラートフもフィリップが出世役だったのね。そちらのキャストも観たかったです、、、いろいろ物入りなので諦めたんですが・・・。
アデリーヌのトラザシヴィリがすんばらしかった。この方、ジゼルや白鳥でも上手いなと思っていたのですが、演劇的なものになると魅力が10倍増しくらいですね。しっとりしてエレガント。ボリショイはノイマイヤーの椿姫もレパートリーに持っていますが、彼女のマルグリット、凄くいいと思う(まあプリンシパルじゃないと踊れないかもねですが、あの役は)。
そして、いけすかないボールガール侯爵を怪我降板のチュージンに代わり演じたツヴィルコが最高でした!ロットバルトやったときもこの人いいかも、って思ったけど、この公演観て確信した。私この人とってもダンサーとして好み!ちょっと粘りのあるコンテっぽい動きで空間の支配力が大きく、顔も美しくて、なんか妖しい色気がある。テクニックも高くて足先手先がすごくきれい。オットー・ブベニチェクを彷彿とさせるなあ。
それから劇中劇の「俳優」役を演じたブラジル出身のソアレス君♪ちょっとマチアスに似たラテン系の美しい顔立ちでスタイルもきれい、そして踊りも優美でお気に入りです。パリの炎では彼が出てくるシーンになると私の周りのお客様方は一斉にオペラグラスを構えておられて笑いました^^ まだ20才だそうで、今後が本当に楽しみ!女優役のシュライネルとともに、将来のボリショイを背負っていくダンサーなのではないかしら。何年か後には、彼らのあの役を観たことあるんだよってのが自慢になりそう〜とか、勝手に妄想してしまいました。
終演後はスタオベで、東京公演の千秋楽ということもあって紙ふぶきとともに「2020年にお会いしましょう」の垂れ幕が。ボリショイバレエはコンスタントに3年ごとに来てくれてますから、次はオリンピックイヤーになるんですね。NBSがこの年にはバレエフェスのスペシャル版をやると言っていたし、バレエファンにとっても散財な年になりそう。
ああ、ボリショイ祭り、とっても楽しかった!ダンサーやオケや主催者やその他スタッフの皆様、素晴らしい公演をどうもありがとうございました!
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