2017/6/4日 15:00- さいたま芸術劇場
◆Painted Desert
演出振付：山田勇気
衣裳：山田志麻
映像：遠藤龍
出演：
中川賢、石原悠子、池ヶ谷奏、リン・シーピン、
浅海侑加、チャン・シャンユー、坂田尚也、井本星那
◆Liebestod−愛の死
演出振付：金森穣
衣裳：宮前義之（ISSEY MIYAKE）
音楽：R.ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》よりPrelude & Liebestod
出演：井関佐和子、吉��裕哉
Noism1上演の金森さんの新作、愛の死をお目当てに、ボリショイ祭りの最中に日程をやりくりして行って参りました。
新作のLiebestod、とても良かった、と思います。何よりも、舞台奥の黄金の幕。ダンサーがこの幕に触れてできるさざ波のような模様が感情の高ぶりを表現する、その手法が実に見事。トリスタンの深くて壮大な世界観を十二分に現す、素晴らしい演出でした。井関さんが舞台上に一人になっているときも、幕を揺らしているシン―では、実は後ろから吉崎さんも幕を叩いていたそう。こちらとあちらの世界にいる二人がその間の幕を通じてお互いの想いを通わせている、ということですよね・・・。素晴らしい。金森さん、天才的です！
さて、振付も含めて作品が全体的にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」だったのか、という点に関しては、多少なりともオペラを好きな人間としては、完全にうなづけない部分もあります。金森さんも、オペラのストーリーを再現しようとしたわけではなく、純粋に音楽から感じるものを表現しようとしたみたいですし。特に、二人の幸せな恋愛の情景については、若干子供っぽいかな、と思う部分も。でも、男性がいなくなり、井関さんが一人になってからは演出も振付もオペラの世界と重なって見えました。あの金の幕たった1枚であのワーグナーの世界観を表現してしまうって驚嘆。
Noismの作品を観ると、最近は、作品の出来よりもダンサーの身体能力の高さや表現力に感嘆することが多かったのですが、今回のこの作品に関しては、井関さんも吉崎さんもとてもよかったと思うのだけど、それ以上に金森さんのクリエイティビティに脱帽という感じです。
以前、サイトウキネンのために創った中国の不思議な役人も素晴らしい出来だったし、金森さんって振付家としてだけでなく演出家として本当に非凡な才能の持ち主。是非オペラの演出をやっていただきたいものだわ・・・というか、できれば東京五輪の開会式や閉会式も彼にやっていただきたいというのがかねてよりの私の希望なのですが、今の感じではそれは無さそうで残念。
さて、前半のPainted Desert。こちらはNoism1の鍛え抜かれた肉体を持つダンサーが踊りまくる作品。テーマは、胡蝶の夢か、はたまた、失われつつある地球の環境への嘆きなのか。予習なく一度観ただけでは余り深く作品を理解できませんでしたが、シンプルな舞台美術でありながら照明その他で意味を創っていく演出手法がこちらも上手いな、というのが、ダンサーの素晴らしさと共に印象に残りました。
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