小出恵介個人の問題ではなく

■苦言、驚き、残念…活動停止の小出恵介に反応様々
(日刊スポーツ - 2017年06月10日 12:51)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=4614481

■【小出恵介活動停止】さんまさん、小出さんから謝罪あったことを明かす　プロデュースのネットドラマに出演
(産経新聞 - 06月10日 23:32)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=3&from=diary&id=4615009

■小出恵介への損害賠償問題「億単位」吉本は否定せず
日刊スポーツ - 2017年06月09日 19:58
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=4613652

■無期限活動停止の小出恵介、出演映画「愚行録」が上映中止に
(モデルプレス - 2017年06月09日 19:34)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=137&from=diary&id=4613618

■小出主演連ドラなど中止、億単位の損害か降板相次ぐ
(日刊スポーツ - 2017年06月09日 08:04)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=4612359

　先日も、橋爪遼の一件で似たような主旨の日記を書いたが、本当に、出演者やら監督やらの不祥事で、過去の出演作などを封印してしまう動きは止められないものかな。Twitterでは、たったワンカットしか出演していない『シン・ゴジラ』が、これで永久にテレビ放送できなくなるのではないかと心配する声が上がっていたが、やはり出番が少ない『のだめカンタービレ　最終楽章』が放送中止に至っている状況を考えると、あながち杞憂に過ぎないとも言い切れない。物事は一度妙な弾みが付くと、何でもエスカレートしていくものだから。

　こういうことを書くと、頓珍漢なやつが「自分は不祥事を起こしたやつが出ているドラマなんか観たくない」と言って絡んでくるのだが(前回もいた)、観たくなきゃ観なきゃいいでしょうよ、そんなの個人の勝手だから。私が問題にしているのは、そんな個人の主観、勝手な感情を、いかにも「公憤」であるかのようにスライドさせて、作品自体の価値を貶めて圧殺しようとする風潮があることはおかしかろう、そんなのは改めなければいけないよね？　ってことなのだ。
　別に、小出恵介を擁護したいわけじゃないよ？　このまま彼が引退することになったとしても、それは仕方のないことだと思う。けれども、過去作まで「なかったもの」にすることはいくら何でもやりすぎだ。彼のフィルモグラフィーを見ていけば分かるが、これは日本映画史に残すべき、といった名作にも、何本も出演している。それらを全て封印してしまうのか、テレビ放送だけではなく、DVDなどまで販売中止にしてしまう可能性だってあるんじゃないかと、危惧しないではいられなくなるのである。

　そこのミステリファンのあなた、古沢良太の本格ミステリ最高傑作『キサラギ』がもう永久に観られなくなるとしたら、どう思いますか？　ケータイ小説の代表作で、そのトンデモ展開で涙どころか爆笑を誘った『恋空』が雲散霧消してしまうとしたら？　吉田修一原作、行定勲監督『パレード』は、ベルリン映画祭で批評家賞まで受賞している。それがもしも幻の映画になってしまうとしたら？
　「出演者の不祥事があったのだから仕方がない」で済ませられる問題ではないんだよ。一本の作品として昇華されたものを、一部の不適切な要素だけを取り上げて圧殺してしまう風潮にこそ、異を唱えるのが本当の「公憤」だろうと言ってるんだよ。

　こんなことで、と言ったら女性蔑視になっちゃうから言いにくくはあるが、たとえばかつて三船敏郎は不倫して子供まで作る(三船美佳ね)というスキャンダルを起こしたが、もしそれで作品が封印されてしまうとしたら、黒澤明監督の世界的な傑作の数々、『野良犬』も『七人の侍』も『用心棒』も『天国と地獄』も『赤ひげ』も、この世から全部消し去ってしまうことになっちゃうわけだよ。そんな理不尽な措置があってたまるかってことでね(あの頃の三船さんは不倫を恥じるどころか堂々とテレビに出て子供ができたことを喜んでいて、テレビ局も全く突っ込めなかった。もちろん出演作が封印されることもなかった)。
　やったことは悪いが、俳優の行為と、作品の評価、特に放送や映画館での上映と販売の問題とは別、そういう認識で対処しないと、映画そのものが日本から消えていくよ。清廉潔白や正義を求める感情が行き過ぎると、人間の存在自体を否定することになりかねない。これはそういうヒューマニズムの否定すら孕んでいる問題なのだ。

　ああ、でも黒澤映画に出演した俳優で、ご存命の方も多いけれども、その人たちが仮に不祥事を起こしたら、日本の今のバカなテレビ局や映画館は、やっぱり作品を封印しちゃいそうな気がするなあ。まずありえないことではあるが、仲代達矢さんや、山崎努さん、加山雄三さん、寺尾聰さん、香川京子さんといった方々が不祥事を起こしたら、後期の黒澤映画の大半が観られなくなってしまうわけだね。
　神木隆之介君がスキャンダルを起こしたら、日本映画興行収入ベスト３の『千と千尋の神隠し』『君の名は。』『ハウルの動く城』が全て幻の映画になってしまうのだ。
　この件に関して、はるかぜちゃんが、「自分なら未成年ってバレない自信があるな」と冗談を呟いていたが(最近、めっきり大人びてきているのである)、もしも彼女がむにゃむにゃしてしまったら、過去の出演作、それこそむにゃむにゃなんてあり得ない過去の出演作まで、封印してしまうのだろうか。『エウレカセブンＡＯ』や『マジックツリーハウス』、『おおかみこどもの雨と雪』が観られなくなるよ！(アニメファンには脅威だが、一般人にはピンと来ないネタで申し訳ない)

　そういう例を考えて、今、テレビ局や映画館が行っている封印作業がいかにデタラメであるかということを理解してほしいと思うのである。どうせそのうち封印も解除されるでしょ、と甘く考えてはならない。封印に反対する人間が何らかのリアクションを起こさないと、言いたかないがある種の「運動」を起こさないと、なし崩しのまま、封印が解けないってこともありうるんだからね。