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2017年06月10日09:16

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いっそのこと、「宇宙に恋する三人の女たち」なんてタイトルにしたらどうか(却下)/映画『ドリーム』邦題変更

「ドリーム 私たちのアポロ計画」邦題変更 「ドリーム」に
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=40&from=diary&id=4613527

 Twitterでは「史上最悪の邦題だ」って非難が巻き起こっていた『Hidden Figures』の邦題問題。
 実際にアポロ計画とは何の関係もない(本当はマーキュリー計画を扱っている)のだから、そりゃあ当然のことだろうが、逆に不思議なのは、配給会社(20世紀フォックス)が「このタイトルでイケる」と判断した根拠は何だったのだろうかということである。
 「日本の観客に広く知ってもらうための邦題として、宇宙開発のイメージを連想しやすい『アポロ計画』という言葉を選んだ」「ドキュメンタリー映画ではないので、日本人に伝わりやすいタイトルや言葉を思案した結果」とか、いろいろと言い訳はしているようだが、だからと言って、内容と相反するタイトルを付けていいという理由にはならない。いい邦題を思いつかなくて、やけのやんぱちになって付けたんじゃないか(『勝手にしやがれ』はそういう経緯で付けられた邦題だってエピソードもあったな)という気すらしてくる。
 『ドリーム』ってタイトルもどうかと思うが、「宇宙開発」をイメージさせたいのなら、別になんとか計画って表現化に拘らなくても、「はるかなる宇宙へ」とか「宇宙の兄弟たち」とか「めぐりあい宇宙」とか、いくらでも思いつきそうなものだ(すみません、全部パクリです)。

 映画の原タイトルは、先述した通り、『Hidden Figures』である。直訳すれば「隠された数字」または「知られざる人々」という意味になる。
 これは、1962年に、マーキュリー6号(フレンドシップ7)に搭乗して、アメリカ初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士、ジョン・ハーシェル・グレンを陰で支えたとされる三人の数学者――アフリカ系アメリカ人の、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンについて書かれたマーゴット・リー・シェタリーの原作と同じタイトルで、 彼女たちが、「隔離された場所で数値計算をしていたこと」と、「知られていなかった重要人物たち」という意味を掛けた、ダブル・ミーニングになっているということである。
 確かに、これを忠実に邦題に行かすというのはほぼ不可能で、何らかの「意訳」をせざるを得なかったという事情は理解できる。あえて20世紀フォックスの宣伝部の方々に同情的な見方をしてさしあげるなら、日本語に移し替えることができるはずもない英語を翻訳せよと言われて、途方に暮れた結果、トチ狂っちゃったんだね、と、その苦労を鑑みてあげられなくもない。
 でもやっぱり、ウソはいけないのだ。

 過去にも、こりゃ酷いなって邦題はいくらでもありはした。
 例えば「二文字漢字」シリーズ。『望郷』(1937年/Pépé le Moko)、『哀愁』(1940年/原題:Waterloo Bridge)、『慕情』(1955年/原題:Love Is a Many-Splendored Thing)、『追想』(1956年/原題:Anastasia)、『追憶』(1973年/原題:The Way We Were)などで、はっきり言って、邦題だけではどれがどの映画やら区別が付かない。どれかとどれかのタイトルを入れ替えても内容的に通用してしまう。特に『追憶』『追想』は、他にも同タイトルの映画が何本もあって、「どの『追憶』?」といちいち判別しなければ話もできない。
 トシヨリが、「昔の方が味わいのあるいいタイトルが多かったよ」と言って、これらのタイトルを挙げることも少なくないが、記憶が補正された錯誤に過ぎないから、相手にしない方がよろしい。最近のDVD販売では、これらのタイトルは意味不明と判断されたのだろう、たとえば『望郷 ペペ・ル・モコ』のように、原題を併記するパッケージも増えてきている。

 他にも、何も考えてないタイトルの代表として言の葉に上ることも多いのが「愛と」シリーズで、これまたどれがどれやら分からんってだけでなく、数えきれないくらいに乱発されていたのである。
 嚆矢となったのは、どうやら『愛と喝采の日々』(1977年/原題:The Turning Point)らしい。それから、『愛と哀しみのボレロ』(1981年/原題:Les Uns et les Autres)、『愛と憎しみの伝説』(1981年/原題:Mommie Dearest)、『愛と青春の旅立ち』(1982年/原題:An Officer and a Gentleman)、『愛と追憶の日々』(1983年/原題:Terms of Endearment)、『愛と哀しみの果て』(1985年/原題:Out of Africa)、『愛と宿命の泉』(1988年/原題:Jean de Florette, Manon de Source)、『愛と哀しみの旅路』(1990年/原題:Come See the Paradise)等々、まだまだいっぱいあるんだが、引用が面倒臭くなったのでやめる(苦笑)。
 正直、このへんの映画は殆ど観ていない。名作と評判の高い映画も含まれているが、もう題名に「愛と」と付いている段階で、観る気が起きなくなるのである。80年代になぜか大流行したこの風潮、90年代以降は下火になった。なってくれてホッとしている。そうでなければ、数々の名作映画が、たとえば『愛と哀しみのタイタニック』とか『愛と哀しみのハリー・ポッター』とか『愛と哀しみの指輪物語』とか『愛と哀しみのアベンジャーズ』とか『愛と哀しみのアナ雪』とか『愛と哀しみのメッセージ』とかの邦題で公開されていたかもしれないのである。いや、マジで。『ドリーム』は絶対に『愛と哀しみの宇宙の旅』になってたね。

 酷すぎる邦題で話題になった『ドリーム』だが、逆に話題にはなった。炎上商法を狙ったとは思い難いが、映画自体は第23回全米映画俳優組合賞キャスト賞を受賞するなど、評価は高いのである。お客さんが興味を持って、映画館に足を運んでくれることを期待したい。

 予告編は、現在、制作し直し中らしいので、本国版を。結構、笑えるシーンもありそうである。



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