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2017年06月04日00:06

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ハンブルクバレエ ニジンスキー

2017/5/25 18:00-
2017/5/27 19:30-
ハンブルク州立歌劇場

Music: Frédéric Chopin, Robert Schumann, Nikolai Rimsky-Korsakov, Dmitri Shostakovich
Choreography, Set and Costumes: John Neumeier

Vaslaw Nijinsky: Alexandre Riabko,
Romola Nijinsky: Carolina Agüero,
Bronislava Nijinska: Patricia Friza,
Stanislaw Nijinsky: Aleix Martínez,
Serge Diaghilew: Ivan Urban,
Eleonora Bereda: Anna Laudere,
Thomas Nijinsky: Carsten Jung,
Tamara Karsavina: Silvia Azzoni,
Leonid Massine: Jacopo Bellussi,
Der Tänzer Nijinsky: Jacopo Bellussi, Marc Jubete, Lloyd Riggins, Alexandr Trusch

*録音音源(収録のためらしい)

ハンブルクバレエのニジンスキー、5月末の公演を観に行ってきました。本当は、昨年9月の再演初日を観てそのあとは7月のバレエ週間まで我慢と思っていたのですが、9月再演を観て作品とサーシャ・リアブコの凄さに打たれ、会社で顰蹙を買いながらもこの時期に弾丸してきました。

*以下、ニジンスキーを観た後の感情をそのまま残してます。作品の内容などについては、過去の日記をご参照ください。
2012年2月上海 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821535265&owner_id=2438654
2013年6月ハンブルク http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1905528029&owner_id=2438654

本当に、行ってよかった。

やっぱりニジンスキーという作品は、私にとってはノイマイヤーの最高傑作。そして、サーシャのニジンスキーの命を削るような演技、痛くてたまらなくて観るたびに心に突き刺さる。はずなのに、また観たくなる。もはや中毒だな、これ。

今回は一日おいて2度、サーシャのニジンスキーが観られるというまたとないチャンスでした。そして、なんとDVD化されるとのことで2日ともたくさんの撮影機材が入っていました。両日ともノイマイヤーが開演前にステージに現れて前説。今回の収録のスポンサーとしてNDR、ARTE、そしてNHK(ジョンはわざわざその後に東京って言ってました)の名前を告げ、上演中は音に気を付けてね、終演後は盛り上げてねってことを話していた(みたい)。NHKが入っているということは、DVD化だけでなくおそらく日本でもテレビ上映があると思われます。待ちに待った、そしてもはや諦めてかけていたニジンスキーのムービー化、しかもサーシャがまだ踊れるタイミングで!神様ありがとうございます!

25日と27日のキャストは全く同じだったのですが、2つの公演の印象が違っていて驚きました。要因としては、9月以来の上演で初日はコールドが若干バタバタしていたけど2日目はだいぶまとまっていたこと、そして何よりも、サーシャ自身の演技に違いがあったことが挙げられると思います。

25日は、ひたすら、サーシャ・リアブコの渾身の演技に打たれた公演でした。

サーシャはいつだって全力で舞台に臨む人だけど、この日の集中力はその彼のものとしても群を抜いていたと思います。冒頭、ステージの裏から大声で叫ぶニジンスキー、そのあと、打掛を羽織った彼が現れただけで舞台の空気が一変し、客席もビリビリするような緊張感。スヴレッタハウスでのニジンスキーの最後のステージを再現した冒頭では、こぶしを口に入れて固まってしまうシーンまでは息をつくこともできませんでした。最後まで一切途切れることなくそのテンションで突っ走り、一人で舞台を引っ張っていたサーシャ。最後の、手を広げて空を仰ぐ壮絶なポーズで、音楽が終わったあとの静寂に彼の息遣いだけが聞こえてくる。余りに苦しそうで…息がというより、ニジンスキーその人の生涯を背負ってしまった彼の心の方が…、心の中で「サーシャ!」って叫びながら涙してしまいました。

この日は周囲を寄せ付けぬ物凄いテンションだったけど、でも踊りは指先足先までとても丁寧で、内省的な感じ、ニジンスキーの孤独感というか、内に落ちてく感じが強かった。サーシャの持ち味の一つ、私の大好きな「淋しさ」が色濃いニジンスキー。あの目を見てると本当にこの人あっちの世界にいっちゃったのではと心配になるのだけど、踊りみてると意外に冷静な部分があるのだなとも思います。そのあたりの精神のバランス、どうなってるんだろう。

そして一日あけて27日。

公演としては全体的に、初日よりコールドその他がまとまっていてよくなっていたと思います。もちろん主役級の力は強いのだけど、全てのダンサーが役割をちゃんと把握して演じることで公演の完成度は違うものなのだなと思いました。周囲の集中力が増した分、サーシャがひとりで舞台を引っ張っている感は少なくなっていたと思います。

でも、この日のサーシャのニジンスキーは、これまで観たことがないほど痛々しかった。とにかく苦しんでる印象が強かった。踊りも形を丁寧にというよりは、感情を重視した強い表現。その分、心がより弱く見える。特に2幕は本当にニジンスキーが辛そうで、観ているこちらまで息苦しくてたまりませんでした。見た目にもサーシャの消耗は激しく、終盤のロモラとの哀しいパドドゥの後は精神的にも身体的にもズタボロなのじゃないかと本当に心配になった。最後の天を仰ぐポーズのまま幕が降りるのを待つ間、サーシャにしては珍しく大きな声で呻いていました。苦しかったんだね…

幕が再び開いたニジンスキー役だけのカーテンコール、25日は消耗しきったという感じで深々と頭を下げたポーズのままだったけど、27日はニジンスキーの苦しい表情のままで直立してしばらく前を凝視した後、脱力したようにがくんと前に深くお辞儀してまた幕。辛そうだったけど、やりきったという感じでした。彼にとっても当たり役で、そしておそらく思い入れも大きい役であるはずのニジンスキー、収録もあったし、きっと彼の持ちうる力をすべて振り絞った公演だったのだろうなと思います。

とはいえ、お花もたくさん投げられたカーテンコールでは、観衆の物凄いスタオベを受けて本当に嬉しそうな表情を見せてくれました。ああこっちの世界に戻ってきてくれてよかった!普段の公演では出てこないジョンも、収録のためにカーテンコールに登場、満足そうな表情でした。

25日に出待ちであったサーシャ、いつもは本当に服装に無頓着な人なはずなのに、きれいな色のジャケット着てたりしてちょっとお洒落してたかな、と思いました。ひょっとしたら、日本からたくさんファンが行くよ!ってGWのジゼルの時に伝えておいたから意識してたのかもハート

ちなみに27日はDVDのための追加撮影があるとかでダンサーが何時に出てくるか分からず出待ちできなかったのが残念。でも、ということは、ニジンスキーのDVDにはダンサーへのインタビューなどの特典映像がついていそうです。そして、ということは、ジョンのインタビューなり解説なりもあるのではと予想。ニジンスキーは仕掛けがいろいろある作品なので、解説がついていることを願いたいです!


さて、ここまで、サーシャへの愛を熱く語り過ぎてしまいましたが、その他のダンサーについて。

初演キャストであるイヴァンのディアギレフは相変わらず美しい。ルックスだけじゃなくて佇まいに貴族的な雰囲気があるのがいいのですよね。彼、一時期怪我で踊れなかったのに、復帰してから最近まではとても体調がよさそうで、踊りにもキレがあって嬉しいです。

そして、こちらも初演キャストのロイドのペトルーシュカ。切ない顔したペトルーシュカは彼の十八番で、このシーンは本当に泣ける。ロイドに、フォーキン版のペトルーシュカを踊ってもらいたいと以前から無理な望みを抱いています。

ロモラ役は、産休中のエレーヌに代わりカロリーナ・アグエロがつとめました。お金持ちのお嬢さんというゴージャスな感じはエレーヌの方が似合ってるかなと思いましたが、カロリーナとサーシャはパートナーとしての相性はよくて、ロモラとニジンスキーのすれ違いの哀しいパドドゥでは濃密な感情のやりとりが見られて心に刺さりました。

ほとんどのキャストは、私にとっては今このタイミングで望みうる最高のメンツだったのですが、唯一残念だったのはニジンスキーのダンサーとしてのスター性を強調する金の奴隷&牧神の役がカレン・アザチャンでなかったこと。今回なぜ、9月のときにこの役のファーストで好評を博した彼がセカンドだったのか、私には全く理解できません。ジュベテは顔は美しいけど、、、やっぱり動きで表現してナンボだと思うのですよあの役はね。オットーの後を継げる逸材のカレンをもっと大事にしてほしい!

あと、今回は日本人ダンサーの好演が目立ちました。マリインスキーのバレリーナ役の有井まよちゃんは、クラシカルに美しいながら大きい踊りで目立っていたし、菅井円加ちゃんはゴムまりみたいな弾性とキレキレのリズム感抜群の動きでコールドにいながらも目を引きます。もう一人の日本人ダンサー、平木菜子ちゃんも足のケガから復帰して元気に踊ってました。来日公演は、彼女たちの活躍も楽しみ!
*この公演の直後、他のダンサーの怪我降板を埋める形ではありますが、シンデレラ・ストーリーの主役に菅井円加ちゃんが大抜擢されるというニュースが!

ところで5-6月にかけてのニジンスキーはこの2公演を含めて全4回。残りの2回はそれぞれ、アレクサンダー・トルシュ、アレシュ・マルティネスの二人が主演しました(私が観られたのはサーシャ・リアブコの2回だけですが)。SNSの反応などを見ているとニジンスキーを目当てに各国からハンブルクに遠征された方は少なくなく、特に日本からは私の知人以外にも何人かがいらしていました。ご覧になった方々(日本人以外も含む)の感想をリアルやネットで見聞きしていると、ニジンスキーという作品そのものは皆さん本当に愛していらっしゃいますけど、個々のダンサーの評価は本当にいろいろだなという印象です。

私はサーシャのニジンスキーが好きでたまらなく、正直他のダンサーで観ると物足りなく思ってしまうのですが(過去オットーでもダメだった)、サーシャのそれは凄まじ過ぎてしんどい、という方も(私はそういうところに感動してしまうのですがね)。「バレエ」という枠を超え過ぎているのかもしれません。そういう方には、他のダンサーが踊るニジンスキーの方が作品として受け入れやすい可能性も。そういう意味でも、2018年の来日公演は楽しみ。3公演あるので、おそらく2キャストは確実に見られると思います。

そのうち、来日公演に向けて非公式サポーターとして作品やダンサーの情報をこちらでお伝えしていこうと思います。
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