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2017年05月15日00:58

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【資料】君の名は。からけもフレへ

うん、アニメの作り方って、変わってゆくのかなぁ、変わってしまったんだなぁと思いました。



少し落ち着いたので、けものフレンズ(以下けもフレ)の話をしようと思います。
またしても、旧来のクリエーターさんたちから罵声を浴びられつつ、深夜アニメヲタには大絶賛(爆)。後ろから口コミで盛り上がって行く流れを含めて、「君の名は。」が売れ始めたときと似てるなぁって感じてて。

そんな視点で切っていくと、いくつかの共通点が浮かんでくるように思ったので、備忘録的に書きとどめておくことにしました。



(1)前中後編構成で案外と早くやってくる「問題解決」
けものフレンズ、最初はどうしても動物図鑑に見えてしまいます。というか動物図鑑としてもかなりのクオリティで、観た人が動物園に出かけてまた盛り上がるという珍現象が各地で起きるほどで、取材にも作画にもかなりの手数をかけています。

にもかかわらず、その動物図鑑を早くも2話でクローズしてしまいます。バスが完成するのは3話ですが、ここからは次のテーマ「かばんちゃんとはなにか?」に遷移してしまうのです。本格的なかばんちゃんとサーバルのロードムービーとなり、動物図鑑は投げ捨てられてしまいます。

ではかばんちゃんの由来を探すドラマなのか?と思っていると、としょかんやはかせにあっさり到達してしまい、「船に乗って島を出る」3番目のテーマに移動してしまうのです。

旧来のドラマであれば、途中寄り道をしながら、最初に提示されたテーマを解決する(そのためにラスボスと戦う)という大きな流れがあるはずです。ところがけもフレは旧来の手法を全く省みず、3つのバラバラの話をしています。
謎っぽい提案をしても、その謎はそれぞれの前中後編のなかで解決してしまうので、見ているひとがどこへつれていかれるのか分からないようになっているのです。


(2)前中後編の各話は意外と単純。むしろ古臭い
いえむしろ、昔見た話だったりするくらい、単純化されています。「こんな昔からある話を組み合わせるだけなら、オレでもできるわ!やらんけどっ」ってところが、昔からのクリエーターさんたちをイライラさせている理由なのでしょうね(笑)。

けもフレであれば、前編は動物図鑑で、中編がロードムービーです。後編のアツいラストバトル、自己犠牲や友情、奇跡的な勝利で大団円など、昔からある記号が散りばめられてて、もうどこからツッコんだらいいのか(爆)。「こんなシナリオみたくない」って関係者が唾棄するくらい、ふるくさい。

だけど、シンプルで古典的だから、分かりやすいのです。メインストームでまったく別々の3種類の話をしても、それぞれが記号化された古い表現だから、どこへ行くのかわからなくても、振り飛ばされなくて済むのです。


(3)背景が語る
まったく説明がないまま、不思議なオーパーツが出てくるのもけもフレの魅力のひとつですね。考察班はまったく説明のないまま、あれやこれやと想像で補完する、そんな楽しさもあったと思います。

1話の、さばんなちほー(プラスその外側のいくつかのエリア)を高所から俯瞰させたのは見事でした。それ以降も3DCGのキャラ作画がショボい!なんて言われながらも、背景は破綻しない。背景がしっかりしているから、オーパーツが入ってきたときに物言わず語ることができるのです。「この世界はこういうものなんだな」って没入できたことも、けもフレ成功の一因だと思います。


(4)しょっぱなからネタバレ全開
なにもできなかったかばんちゃんが成長していく物語、という側面で、1話との対比という考察がありますね(後に公式がそれを認めています)。「もう少しいっしょにいようかなって」ラストシーン、1話Bパートの最後と同じセリフです。

これを以てバレとするのは少し乱暴ですが、2回目に1話を観たとき「1話で全部これから起こること出てるんだなぁ」という印象を残してるというところに注目しています。うまくまとまると、お客さんはそれを伏線と呼んでくれます。



さて、君の名は。の話。実は君の名は。も上で挙げた(1)〜(4)と全く同じ構造を持っているのです。君の名は。の場合は、前編が「転校生」の男女入れ替えであり、中編が「時をかける少女」の過去改変(→しようとするけど失敗)であり、ラストは「アルマゲドン」の彗星落下です。
背景が語るのは新海監督の得意技で、むしろ自分のホームグラウンドで勝負したと言っていい。旧来からある新海ショートムービーを紐でつないだのが、君の名は。と見れば、(2)(3)は生まれから満たしています。
参考資料:【全バレ】君の名は。という呪い〜何故ばーちゃんは途中で消えるのか?

君の名は。で新しい手法と言えば、RADWIMPSの音楽を使って高速で場転する所です。男女入れ替えはジュブナイル小説では古い見慣れた手法なので見逃してしまいますが、滝も三葉も「入れ替わってるのにまるで困ってない」(爆)。おもしろエピソードとして情報を大量投下し、前前前世で押し流してしまう。

そして、入れ替わりがなくなったとき中編に移行します。最初に提示されたテーマとはまったく別の話がはじまるのです。けもフレで動物図鑑があっという間に終わってしまった時、あるいは君の名は。で古典的な男女入れ替えの話が終わってしまった時、あれなんでこんなに早くやめてしまうんだろう?と私の受けた違和感は、同じモノだったのです。


最初に提示されたテーマとは別の話、という表現は不正確ですね。だって君の名は。はアバンからオープニングで、バレ全開ですから。けもフレが「今後どういう話になっていくかを内包した1話になっている」のに比べて、君の名ははほんとうに全バレです。彗星堕ちてくるし三葉はショートカットだし。オープニングではラストシーンに出てくるアラサー三葉ちゃんのカットもある。映画でアバンっておかしいですけど、それほどまでに君の名は。はオープニングが早くて、その時点で全バレです。2回目観ると「こんなに盛ってあったんだ」とドキドキします。



で、困ったことに。

この2つの作品がバカ売れしてしまったのですね。旧来のクリエーターさんたちをイライラさせながら(笑)。曰く「古い技術の焼き直しじゃないか」「まったく新しくない」と。

いえそうではないのです。ネタは古典的な記号をあえて選んで使っています。新しいのは見せ方。飽きさせないように短い話にして、さらに高速で場転する。
セカイ系が同じ場所にじっとしている物語だとしたら、君の名は。→けもフレは常にキャラを別の場所で動かし続ける。

これからのアニメ、こうなっていくんだろうなと思いました。「古い技術の焼き直し」に見えている人たちは、もうこの流れについていけないんだなと。


いつからこうなったのだろう?とわたしが見たアニメ(あくまでわたしが見た範囲)で遡ると…「まどマギ叛逆」かなぁ。あの頃はてっきりまどマギの続編だと思っていたから、一本芯の通った裏があるはず!と裏ばかり読んでしまっていたけど、
みんなが見たかった魔法少女5人のバトル&最強のマミと最弱のほむら
→お花畑からの謎解き(ウソをつく語り部)
→叛逆の物語(デビル化)
と、図らずも三部構成になっていたのですね。

まったく絡んでそうで絡まないようで、やっぱり絡んでる話。そういえばClariSが歌ってるオープニングで、ほむら全然笑ってないですよ。デビルはシルエットだけ出ますね。

劇場版は観客の視界を固定できて音響も使えるので、作り手が観客の視覚と聴覚をコントロール出来る。そういう限られた環境だからああいう芸当ができたのかな?と思っていたのですけど、やはり劇場版である君の名は。を経て、ついにけもフレがテレビの画面を突き破ってきたのです。



長くなったのでまとめー
(1)12話を4話ずつに割った全中後編構成
(2)全体のテーマ?を匂わせた謎は、前中後編のそれぞれの区切りで、意外と早く解決します。クライマックスまでわからないと思ってたのに。
(3)背景に注目。背景にヒントが描かれています。
(4)実はアバンで全バレしています。
BGMや劇伴を使いながら、高速で場転する、を付け加えておきましょうか。

ついこないだまでは「3話まではみてほしい」ってスタッフが書いてたり(さらに3話まで観てもつまらなかったりw)したものですが、4話ひと区切りで意図的に設計された、この劇場版で実験されてた形を「毎週飽きさせないようにしなければいけない」テレビに持ってきたところが、ほんとうのけもフレのスゴいところだと思います。お見事でした。
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