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2017年05月11日23:24

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ガーシュイン 「アイ・ガッタ・リズム」変奏曲

危険・警告ここからいくつかの日記は、鑑賞会用のものです。危険・警告

ジョージ・ガーシュイン作曲
「アイ・ガッタ・リズム」変奏曲
オリオン・ウェイス(ピアノ)
ジョアン・ファレッタ指揮
バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団


かんち自身の解説

ガーシュインときいて、どんな作曲家だと思いますか?

え、、ジャズをクラシックに取り入れたひとでしょって?そうですね、そういう人ですが、それは音楽史上、どのように位置づけられるでしょうか?

そう言われて、はっきり答えられる人は、音大生でない限り、あまりいないと思います。でも、ガーシュインはアメリカ・クラシックの代表選手でもあります。

ジャズは、アメリカで成立した、言わば民族音楽だと言えるでしょう。その意味では、後期ロマン派、国民楽派の影響を受けていますが、流れとしてはむしろ、新古典主義音楽として位置付けていいと、私は思っています。感情をあおるような要素が少なく、むしろ距離を取っていると考えられるからです。

ガーシュインはジャズ・ピアニストでした。その上で作曲家ということは、バッハからベートーヴェン、そしてショパンやリスト、ドビュッシーやラヴェルという系譜の延長線上に位置する作曲家です。

そのために今回選択したのが、この「アイ・ガッタ・リズム」変奏曲なのです。ジャズの影響を受けた作品らしい旋律の中に、構造としてしっかりと幹となっている変奏。それはまっすぐ、バッハからの系譜を受け継ぐものでもあります。

アンコール曲として演奏されることが多い、ノリノリの作品を、冒頭で、古典派の伝統につらなるものとして聴いてみたら、どんな印象になるのか。皆様と一緒に確認してみたいと思います。

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ガーシュインをいま一度、ウィキで申し訳ありませんがご紹介しておきましょう。

ジョージ・ガーシュウィン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3

アメリカ音楽、特にミュージカル音楽の作曲家として、金字塔を打ち立てた人です。現在の私達はアメリカ音楽と言えば映画音楽を思い浮かべることが、若い人では多いかと思います。特に昨年、アナと雪の女王が大ヒットしてしまってからは、なおさらでしょう。しかし、私の年代はむしろ、アメリカ音楽と言えば映画とミュージカルなのです。ガーシュインはそのミュージカル作品で名をはせた人でした。

ですから実は、ポーギーとべスという、オペラでさえも、彼が中心として取り組んだジャンルとは言えないのです。以前ご紹介したコルンゴルトも、アメリカに移ってからはミュージカルが創作の中心です。

そんなガーシュインですが、ミュージカルに次ぐボリュームを持つのが、管弦楽作品です。そのうち、一番有名なのは何と言ってラプソディ・イン・ブルーですが、オーケストレーションは主にグローフェが担当したことは、クラシックファンであれば有名な話です。ところが、このアルバムに収録されている作品はすべて、オーケストレーションはガーシュイン自身の手によるものなのです。

だからこそ、買い求めたのです。以前から、ラプソディ・イン・ブルーもですが、それ以外の作品が聴きたいという願望を持っていました。ガーシュインの時代であれば、つまり20世紀音楽の時代であり、場合に寄っては新古典主義音楽ですら、影響を受けていてもまったく不思議はないからです。

(中略)

そして最後の曲が、アイ・ガッタ・リズム変奏曲。1934年の作曲で、ミュージカル「アイ・ガッタ・リズム」の一番有名な旋律を主題として展開される変奏曲です。この作品も、ガーシュインの代表曲としていいのではないかと思います。というのは、まず作品が変奏曲である、ということです。変奏曲と言えば、バッハやベートーヴェン、ショパンなどが手掛けたクラシックの伝統です。ガーシュインも元々はジャズピアニストです。当然、楽典を勉強してからは、同じピアニスト、鍵盤奏者たちである大先輩のバッハやベートーヴェンなどを意識しないことはないでしょう。そういったガーシュインの力の入れようと言うのが、作品から強く伝わってくるのです。

というのも、それはもう一つの特徴である、ゆったりとしたリズムに速いパッセージの旋律が乗るという、クラシックで名曲と言われている作品が持つ要素を、十分備えた作品だからです。第2変奏あたりに、オケはゆっくりと演奏しながら、ピアノは速く動き回るという部分があるのですが、これを聴いた時私はうなりました。いや〜、ガーシュイン、しっかり作っているなー、と。これって旋律はミュージカルのアイ・ガッタ・リズムだけれど、しっかりとクラシック音楽なんですから!

全曲を通して、ジャズのリズムに溢れていますが、様式的にはまさしくクラシック音楽そのものです。ジャズとクラシックの融合と言われますが、ラプソディ・イン・ブルーで示しているガーシュインのジャズに対する視点を考えますと、これらの作品は新古典主義音楽と言っていいでしょう。つまり、ガーシュインはアメリカ新古典主義音楽を、愉しみと喜びの音楽として作って見せた、と言えるでしょう。しかも、主題呈示部は、ピアノ。つまりこの作品は純粋なクラシック音楽でありながら、旋律がジャズなので、ビッグバンドでも演奏できるように作られているという事になります。こういった点も、まさしくガーシュインらしい作品だと言えます。

アメリカ新古典主義音楽の作曲家と言えば、コープランドのほうがはるかに有名ですし、音楽史上ではそうなっていますが、私はアメリカの音楽事情を考えた時、むしろこのガーシュインこそアメリカ新古典主義音楽の作曲家としてふさわしいような気すらしてきます。勿論、コープランドが不適であると言いたいわけではなく、アメリカで成立したジャズを、十二分にその可能性を信じて作曲された作品がここには並んでいるからです。管弦楽だけではなく、しっかりとビッグバンドでも演奏できるように作曲しておく・・・・・ガーシュインらしいなあと思います。その上、モーツァルトが協奏曲を弦楽四重奏曲版で編曲したような、伝統にも基づいている・・・・・

このアルバムは、私達にガーシュインという作曲家の真の姿を伝えている、素晴らしい内容に満ちていると思います。演奏はオール・アメリカン・キャストで、特に指揮者は女性。でもそんなことはみじんも感じさせませんし、むしろすべてノリノリのそのリズム感は、聴いていて爽やかさを感じます。その上で、作品の構造や様式が分かりやすい、明瞭な演奏に務めており、職人としての意気も伝わってきます。その上で、すべてに喜びがある!これが素晴らしいのですよね〜。

ガーシュインの作品ですから、暗い部分が全くないとは言えませんが、それも洒脱だったりするわけです。ですから、音楽が徹頭徹尾喜びにあふれているんですね。ミュージカル作曲家ですから当然とはいえ、その喜びをきちんと喜びとして私たちにつたえようとする、ノリノリの職人気質に、敬礼です!
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