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2017年05月01日07:36

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4月の読書記録

先月は過酷な勤務に翻弄されたためか、思ったより読書がはかどらず。それでも何とか五百頁はいった。後、ナイスが百を超えたのがうれしい。

2017年4月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5399ページ
ナイス数:104ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (中公新書)
タイトルに「物語」とあるから小説みたいな感じで読み進められるかな…と手に取ってみたが、予想外の難物。これって、新書レベルを超えているのでは?というのが正直なところ。一般に馴染みがない人名やタームが解説もなしに頻出するのはいかがなものか?それに普通だったら欠かすことができないヘーゲルについてちゃんと項目を設けて解説していないし。その一方で著者なりのスタンスで哲学史を紡ぎ出そうとする意欲は評価したいし、実際本書に触発されるところも少なからずあった。これは手元に付箋を貼ったりして、繰り返し読む価値がある本。
読了日:04月30日 著者:伊藤 邦武
https://bookmeter.com/books/5472332

■オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)
どの作品にも独特のユーモラスな雰囲気があるのが印象的。一見陰惨な印象を与える表題作にも仄かな温かみや明るみを覚える。また一貫して愚直な夫とその妻の姦通を描いた「シャーブル氏〜」は、ナボコフの作品を想起させられる。個人的に最も味わい深かったのは「スルディス夫人」か。夫の放蕩を心底軽蔑しながらも、その一方で彼の芸術的才能に深い敬意を抱き、夫の世話と創作活動への援助に心身を捧げるアデルの健気さとたくましさの描写が非常にリアル。不美人のはずなのに、どこか可愛らしさを感じさせるのが不思議。それが作者の真骨頂かも?
読了日:04月29日 著者:ゾラ
https://bookmeter.com/books/9762415

■「ユマニチュード」という革命: なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか
本書に書いてあることをそのまま実践するのはやや無理はあるが、普段介護の現場に従事する中で見えてこなかったことを気づかされることしきり。相手に安心感を与える、相手に受け入れてもらうようにする。本当は基本中の基本のことのはずなのに、つい業務を優先するあまり、ご利用者への対応が等閑になってしまう。そうした事態を打開する鍵がこの本にある。概論的な要素が強く、実践例が少ないのが残念だが、それでも本書の基本的な考え方に即して介護に取り組むだけで、かなりの効果があるのでは?介護に携わる人はぜひ手に取ってもらいたい。
読了日:04月28日 著者:イヴ・ジネスト,ロゼット・マレスコッティ
https://bookmeter.com/books/10876931

■狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ
内容、ヴォリューム共に重たい一冊。『死の棘』で有名なこの夫婦の関係の凄まじさは既に知っていたが、本書で明らかにされるその実像は、更に一筋縄ではいかない重層的な要素を孕んだもの。特に島尾は実は自らの創作活動のためにあえてミホを狂気に追いやった可能性を示唆する件は、かなり衝撃的。ただ、だからといって島尾に全ての責任があるといえば、そうとも言い切れない要素もあるところが、余計にややこしい。後、島尾の不倫相手の実名が明らかにされたのも衝撃的。残念ながらその実像が今一つ明らかにされていないのが、非常に惜しまれるが。
読了日:04月27日 著者:梯 久美子
https://bookmeter.com/books/11185510

■読んじゃいなよ!――明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ
学生時代、こんなゼミで色々なことを語り合いたかったな…と思うことしきり。また、今でも大学にこんな空間が存在しているということに一抹の安堵感を覚える。三人の講師はもちろんのこと、学生が実に真摯にまた純粋に講師に問いかける姿が非常に印象的。また、昨今の就職活動に違和感を覚えたり、拒否をしたりする学生が少なからずいるというにも共感。そして学生による岩波新書の紹介文が、どれも素晴らしいのにびっくり。こんなに瑞々しい感性を持った学生が集まるゼミっていったい何なのだろう?こんな若者がいる限り日本もまだ大丈夫かも?
読了日:04月23日 著者:
https://bookmeter.com/books/11227543

■教団X
すげえ!!五百数十頁の大部なのにも拘わらず、殆ど一気に読了。恐らく今年上半期に読んだ小説の中でベスト。元は同じ団体から分かれた二つの団体を行き来する四人の男女。その四人のすれ違いと交差を軸に、様々な事件が絡まり発展していく…一時的にカタストロフ的な終焉を予想させながらも、最終的にはそうならず、新たな未来を示唆させるとこに著者の余裕を感じる。また、個人的には深遠な思想を語りながらも、俗物的な側面も見せる松尾がとりわけ印象的に映った。そして、その松尾が死ぬ直前に交わすキスシーンは、比類がないほど美しかった。
読了日:04月21日 著者:中村 文則
https://bookmeter.com/books/9017239

■ケアの倫理 (文庫クセジュ)
百数十頁程度の新書ということで、さくさく読み進めることができると思いきや、これが予想外の難物。他の人も述べているとおり、抽象的で哲学的考察も散見されるので、一般向けとはいいがたい。ただ、内容そのものは興味深い。ケアの仕事が専ら女性に担ってきたという論調は、実際男性として介護の現場に携わっている者として、若干疑問がある。一方で、グローバリズムの潮流の中で、効率化が優先され、弱者が切り捨てられる傾向にある昨今、人間が根源的に持つ弱さを認め合い、共生できる社会の在り方を問う本書のスタンスには大いに共感した。
読了日:04月20日 著者:ファビエンヌ ブルジェール
https://bookmeter.com/books/7846049

■あなたが消えた夜に
読み進めていけばいく程、連続通り魔事件の様相は錯綜するばかり。そして、現場に携わる人達の疲弊はとめどなく累積し、また上層部の複雑な関係に翻弄される…出口が見えない操作の中でも、思わぬところから糸口が見え、予想外の結末に…息もつかせぬという言葉がぴったりの超エンターテイメント小説にして優れた純文学。事件は陰惨極まりないけれど、主人公中島の相方小橋の一見天然で不思議ちゃんだが、実は優秀で鋭いというキャラクター作品全体を幾分明るいものにしているのが印象的。後、エピローグも読む者の心にほのかな温かみを与える。
読了日:04月19日 著者:中村文則
https://bookmeter.com/books/9710914

■掏摸(スリ)
決してサニーサイドを歩くことができず、闇の世界で蠢く人達。天才的なスリである主人公の刹那的で展望のない生活。その中でひょんなことから拘わりを持った、親子でスリを働く母子家庭との奇妙な関係…著者の作品にはたいてい、こういう壊れた家族関係が描かれているが、この人の生い立ちは一体どんなものだったのだろう?という下世話な興味がついわいてしまう。そして後半から思わぬ急展開を見せるストーリー。にっちもさっちもいかない状況で、無理難題を突き付けられた主人公…一瞬絶望的なラストになるかと思いきや、微かな光明が伺える。
読了日:04月16日 著者:中村 文則
https://bookmeter.com/books/561597

■属国民主主義論
「内田氏、何か往年の切れが無くなってきたかな…」という一抹の食い足りなさを覚えながらも、ほぼ一気に読了。見る人が見れば突っ込み所はあるのだろうけれど、でも現状の日本を見据え、明日の日本を考えるうえで有効な知見が随所にあるのも確か。若年層から高齢者に至る日本人の総幼稚化、未だにバブル期の夢が忘れられず、強い日本を無意識に望むあまり、ヘイトに走り、五輪やアベノミクスに希望を託す人達…しかし、そんなところに未来はない。身の丈に合った生き方、地に足の着いた生活というごくごく当たり前のことをやることしか始まらない。
読了日:04月15日 著者:内田 樹,白井 聡
https://bookmeter.com/books/11062340

■哲学の基礎
まがりなりにも哲学科の院を出た人間にとっても新鮮で何かと発見があった。本書を読みとおすにはそれなりの胆力が必要かと思うが、平易な語り口でわかりやすいので、哲学入門としてはかなりの良書。一つのトピックについて、色々な立場から考察して、結局究極的に正しい答えはないという結論に持っていくというやり方は、読者に多様な思考法を促すという意味で、非常に有効だと思う。ただ、惜しいのは各章末の読書案内で紹介されている本に未翻訳のものが多いこと、できれば、日本版独自の読書案内を加えたら、より本書の価値が増したのでは。
読了日:04月12日 著者:ナイジェル・ウォーバートン
https://bookmeter.com/books/618826

■国家を考えてみよう (ちくまプリマー新書)
中高生向けに書かれたもののようだが、大人が読んでも十分読み応えがある…というより、選挙権を持つ全ての人間が読むべき書だと思う。著者の歴史解釈に異を唱える者も少なくないだろうけれど、そこで揚げ足をとったりくさすのではなく、まずは虚心坦懐に読み込んで、そのうえで本書の主張を熟考すべき。とりわけ終盤では、現政権や憲法改正への危機感がかなり如実に表れている。これまでの民主主義のあり方に失望し、大きな権力に無批判に憧れることがいかに危ういことかが、本書を読むとよくわかる。「民主主義はバカばかり」にならないために。
読了日:04月11日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/11008221

■マッハとニーチェ 世紀転換期思想史 (講談社学術文庫)
この内容だったら、サブタイトルをタイトルにしたほうがいいのでは?という気にさせられた。このタイトルではかなり読者が限定されそう。それはともかくとして、他の人も述べている通り、これまであまり取り上げられることがなかった19世紀がどれだけ凄い時代だったという事実に驚かされる。マッハといえば、廣松絡みでしか知らなかったのだけれど、思いのほか多方面に影響を与えていたというのは、もっと注目されていい事実。またムージルへのニーチェの影響も興味深い。著者自身準備不足を認めているが、後続の人が更なる研究を進めてほしい。
読了日:04月09日 著者:木田 元
https://bookmeter.com/books/8615040

■グリーフケア入門: 悲嘆のさなかにある人を支える
愛する者を失った喪失感…生きていれば誰もが経験するはずなのに、なぜかそれが大きく取り上げられることがなかった。その事実に改めて驚かされる。その背景は本書に詳述されているが、自分の職業の関係もあって、このグリーフケアの重要性は今後ますます増していくということを痛感。「理論編」はやや難解だったが、それだけに余計、一口に喪失感とはいっても、個人は文化、宗教的背景によって様々で、その対処の仕方も更に多種多様なものになるだけに、今後この分野は様々なハードルが課せられるだろう。同じ分野の本を更に読んでみたい。
読了日:04月06日 著者:
https://bookmeter.com/books/4711837

■知の教室 教養は最強の武器である (文春文庫)
タイトルからして、一貫した流れがあるように思われるのだけれど、内容はかなり雑多。概ね興味深く読めたけれど、これを読んで「教養は最強の武器である」と思えるかどうかはかなり疑問。内容そのものはそれなりに面白いのだけれど、個人的には人文関係の記述にどうしても興味がいってしまい、世界情勢とか、インテリジェンス関係の話には今一つついていけない。それでも、本書を読むと何かと知的好奇心を刺激されるのは確か。それと同時にますます混迷を極める昨今にあって、自分の足場を固めるための教養を身に着けることの重要性を改めて痛感。
読了日:04月05日 著者:佐藤 優
https://bookmeter.com/books/9770817

■ゼロからわかるキリスト教
内容はさておいて、タイトルに難があるのでは?初心者向けといいながら、イスラムの話題も絡めたり、カール・バルトに言及したりというのでは、初心者はついてこれない筈。それに加えて、取り上げるテキストが『ヘーゲル法哲学批判序説』というのは、著者らしいな…と苦笑すると共に、何だかな…という気持ちが拭えない。良くも悪くも一定の知性と教養がある人向け。それはともかくとして、中身そのものは概ね興味深く読めたか。個人的にはキリスト教への言及より、色々な裏話的な話が面白く読めた。この人裏話の絡め方がうまいなと思った(笑)。
読了日:04月03日 著者:佐藤 優
https://bookmeter.com/books/11182861


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