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2017年04月20日20:22

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少女漫画の件

※写真は福岡県筑豊地方の、我が故郷。

そして自分は明日、第二の故郷に来日するのであった。ちっちゃい「つ」が言えないマイウサギ的には「来日するので、あたー」。

自分らは「いい年こいて漫画なんか読んでんじゃねぇ!」と親に叱られた世代。親は概ね大正か昭和一桁。而して小学校高学年ともなれば漫画なんて読むのは恥ずかしいもの、自分もそう思っていた。
が、大ヒット作には逆らえない。山上たつひこ『がきデカ』(「死刑!」「八丈島のキョン!」)や鴨川つばめ『マカロニほうれん荘』@ロックンロール漫画が流行ったのは中学か高校の頃。

こと少女漫画となれば、もういけない。これは明らかに、ディフィニトリーに、親の目を盗み読んだ高校時代。
大和和紀『はいからさんが通る』、萩尾望都『ポーの一族』なんてむさぼり読んだもの。いずれも友人が教えてくれたのだが、自身で”開拓”したのが2つ。

まず、前原滋子『B.G.M.はいらない』。
とある女子高生が某都の西北@マイ母校を受けんと、家庭教師ば雇う。彼はもちろん西北大学の学生、スッキリ系のメガネ男子。
いきおい女子高生は、彼に思慕の情を抱く。が、彼はそこはかとなく、自裁の念を持っておる。
彼の弟@イケメンや、家庭教師のガールフレンド@同じ女子大生をまじえ物語は進行、悲劇に至る。悲劇とは言い条、主人公が件の人々を通じ、成長してゆくこれは、希望の物語でもある。
劇中引用されるは高見順の詩:『帰る旅』

帰れるから 旅は楽しいのであり
旅の寂しさを楽しめるのも わが家にいつかは戻れるからである
だから駅前のしょっからいラーメンがうまかったり
どこにもあるコケシの店をのぞいて
おみやげを探したりする

この旅は 自然へ帰る旅である
帰るところのある旅だから
楽しくなくてはならないのだ
もうじき土に戻れるのだ

おみやげを買わなくていいか
埴輪や明器のような副葬品を

大地へ帰る死を悲しんではいけない
肉体とともに精神も
わが家へ帰れるのである
ともすれば悲しみがちだった精神も
おだやかに地下で眠れるのである
ときにセミの幼虫に眠りを破られても
地上のそのはかない生命を思えば許せるのである

古人は人生をうたかたのごとしと行った
川を行く舟がえがくみなわを
人生と見た昔の歌人もいた
はかなさを彼らは悲しみながら
口に出して言う以上にそれを楽しんだに違いない
私もこういう詩をかいて
はかない旅を楽しみたいのである

ー 詩集『死の淵』より -

いい年をしたオッサンが号泣した前原さんの本作は、はあ、絶版。

次いで曽根富美子『含羞(はじらひ)』。小林秀雄と中原中也の邂逅、そして別れを記した逸品。<復刊ドットコム>で復刊要請投票しまくり、ようよう復刊した作。
小林さんには戦後記した『中原中也の思ひ出』という名文があるけれど、まずそれを踏まえて本作を読めば、しみじみ。『しみじみ日本・乃木大将』は井上ひさし。
いはゆる腐女子が食いつきそうなボーイズラブといふのでせうか、小林と中原をかく設定したのが本作の特色。が、長谷川某なる売れない女優を介した両人の重い・思いは、昭和初期を舞台に若き文人の、エキセントリックじゃあるが”やむにやまれぬ”生き様を表し余りない。

曽根富美子氏は室蘭の産。『含羞』の次に著した『親たちの断崖』だったっけ、戦前から戦後に至る、室蘭の色街と港と製鉄所、かの地の<断崖>を描いた名作が。これまたオススメ。

いづれも文学の薫り高い、親の叱りを回避しつつ読んだ少女漫画の数々。取り急ぎ。

◆U2  - One :デュエットバージョン 


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