95年、ハリスンな春

毎年いまごろになると、関西へ移り住んだ22年前の春を思い出す。
ずっと、ずーっと何の音沙汰もなかったのに、家を買ったり何かすると転勤命令出るのが世の常。自分もその口で、長らくフリーだったのがようやく彼女が（同じ東京の本社内で）でき、１月半ほど経った或る日。３月の頭。

「スパイス君、ちょっとちょっと」と部長リン。
「は」
「関西に行ってもらおうと思うんだが」
「へえ、出張でおますか。でも部長、わたし大阪にゃ毎月行ってますが、今回は何か特段のご用事でも？」
「いや、そうじゃないんだ。つまり・・・転勤」
「え”。いや、そりゃ困る」

困るったって社命がひっくり返るわきゃない。すぐさま彼女に連絡。その夜、話をした。
彼女は静かに聞いてくれ、別れる切れるなんて話にはまったくならなかったが、上野毛の家へ送っていく大井町線での車中、ぐったりしている彼女を介抱しつ
「俺はこの子を置いて行くのか」
と涙ちょちょぎれたのも、また事実。
＊地下鉄サリン事件があったのは、それからしばらく経った赴任休暇日のことだった。

神戸の社宅に入るはずが、１月の震災で壊滅。直るまでの間、大阪は福島駅前のマンションに滞在。いまみたくグルメタウンではなかったが、当時の福島は美味い焼き鳥屋がたくさん。表通りから一歩入ればナイスなレストランやカフェーも。
それでも、彼女はもちろん、大学から長く暮らした東京への思いは断ち切れず、慣れていたはずの関西でも一時は関西弁を聞くと頭が痛くなったり、ならなかったり。

分断されていた御影・西灘間、GWには国道４３号線沿いに三宮まで歩き、地震のすさまじさに驚き悲しんだ。げに胸痛むは、春。

そのころ、いちばん聴いていたのがジョージ・ハリスン”All Things Must Pass”。以下、アウトテイクで。
◆If Not For You



◆Run Of The Mill



◆Behind That Locked Door



そして半年後、彼女と別れた。　All Things Must Pass、すべては過ぎ去る。