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2017年04月06日13:04

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◆ 「テロ」と「偽情報」、メディアは課題が山積だ  フェイクニュースが世界を騙している ◆ 偽ニュース、放置した企業に罰金…独で法案決定

◆ 「テロ」と「偽情報」、メディアは課題が山積だ  フェイクニュースが世界を騙している

【東洋経済オンライン】 04/06
天本 周一:朝日放送 報道局パリ支局長




 極右勢力の台頭など次期大統領選の動向が注目されるフランスでは、パリ同時多発テロを1つのきっかけとして、拡散する偽情報に対抗する動きが活発になっている。

その背景とは。





● パリ同時多発テロで拡散した偽情報


 「CNNは153人死亡したと伝えている。 これで速報打つぞexclamation

「パリの寿司屋も襲撃された。 日本人被害者もいるかもしれない」――。



 現地時間2015年11月13日夜、フランスのパリで、劇場やスタジアム、カフェなどが複数のテロリストによって襲撃された、いわゆる「パリ同時多発テロ」。

冒頭の情報は、発生直後、東京からもたらされた情報だったが、後にいずれも「偽情報」だったことが判明する。



 市民130人が死亡、パリを襲った前代未聞のテロは市民をパニックに陥れた。

メディアも例外ではなかった。

捜査当局の公式情報がないなか、メディアも市民がSNS上でつぶやく情報に混乱した。

以下の話は、テロ発生直後にSNS上に流れた「偽情報」の1つだ。



 「イギリス入りを狙う難民たちがキャンプ暮らしをするフランス北部の街・カレーでは移民たちがパリの襲撃を祝うために『かがり火』をたいた」。

実際、火災はあったが、それは電気系統の異常による出火が強風にあおられて炎が上がった、というものだった。

テントが激しく燃え上がる写真に誰かが偽情報を付け足し、SNSに投稿したことが拡散のきっかけだった。

この情報は一気にフランス全土を駆けめぐり、一部のテレビ局は「ニュース」として、この話を伝えた。



 テロ発生直後、特に出回った偽情報は「〇〇で襲撃があった」「〇〇で銃撃戦が起こっている」という類いのものだった。

こうした情報が出回るたびに、メディアは確認に追われた。



 発行部数は20万部半ば、読者数は決して多くないものの、そのクオリティの高さから「フランスの顔」ともいえる日刊紙『ルモンド』。

今年2月から、「LES DÉCODEURS(解読者たち)」と呼ばれるサービスを立ち上げた。

このサービスは、情報自体を「本当か、嘘か」判別するものではなく、その情報を掲載しているサイトが「信頼できるものかどうか」を判別するものだ。



 運営するのは、記者やプログラマーなど13人。

知りたい情報が掲載されたサイトのURLを「LES DÉCODEURS」内の検索サイトに打ち込むと、信頼性の度合いが色分けされて表示される。

「偽ニュースのサイト」なら赤、「ジャーナリズムの手続きに従ったサイト」なら緑、といった具合だ。

すでにフランス語や英語などおよそ600サイトの判別が終了した。



 このチームで働くサミュエル・ローラン記者は、判別の基準はサイト上の情報が何のソース(情報源)を元に書かれているのかという点だ、と話す。

捜査当局の情報に基づくものなのか、あるいは政治家の発言を引用したものなら、それはいつ、どこで、どのように語られたものなのか──情報の細部にわたって「裏(ウラ)を取る」ことが大切な判別要素だ、と言う。



 当然、「偽ニュースサイト」と判断された側からは、「なぜ偽ニュースと決めつけられるのか」 「何の権限があるのか」といったきついクレームが会社に届く。

しかし、これらのクレームに対して「その判断を変えることはない」と、ローラン記者は断言する。





● 偽情報であってもニュースになってしまう


 同記者は、ニュースを読む側の変化も偽情報が氾濫する理由の1つと指摘する。

「市民達の最近のニュースの読み方は『受け身』から、『探す』『検索する』に変化している。 しかし、市民たちは情報源が何なのか、というニュースの基本すら知らないし、気にしない人が増えている。 いったん『事実』と思い込んだら、偽情報であっても、それは市民にとってニュースになってしまう」。



 ルモンド紙に対し、読者から「調査して、判別してほしい」と要請されているサイトは、既に5000件以上に上っている。



 ローラン記者によると、フランス国内で、ラジオや新聞、テレビなど既存メディアへの信頼度は30%程度にとどまっているという。

フランスでは、既存メディア=権力側というイメージが強く、政治関連のニュースでは、読者から「これはエリゼ宮(大統領府)から書かされたものではないのか」 「大統領からどんな指示があって、この記事を書いたのか」などの問い合わせがあることも少なくない。



 ルモンド紙が偽ニュースサイトの判別を始めた一番の目的は「偽情報の拡散を防ぐこと」にある。

パリ同時多発テロの後にも、テロ関連の偽情報は拡散した。

同時多発テロが起きた夜、ロックバンドがコンサートを行っていたパリ市内の劇場に4人のテロリストが銃を乱射しながら侵入、複数の観客を人質に立てこもった。



 その後特殊部隊が突入し、一部の人質は解放されたが、およそ90人が死亡する大惨事となった。

昨年9月、この事件をめぐって、ある偽情報が世界を駆けめぐった。

きっかけはある国会議員のグループが発表した事件の報告書だった。

そこには、「テロリストたちは立てこもりの間、人質に対して拷問を行ったとの証言があった。 しかしこの証言に関して、調査はしたが、事実は確認できなかった」と記されていた。



 この報告書を入手したあるフランスのブロガーは、「拷問があったとの証言が報告書に記載されていた」と自身のブログに書き込んだ。

すると、そのブログを引用する形で、イギリスのあるタブロイド紙が記事を掲載し、今度はその記事を「逆輸入」する形で、フランスのメディアも報道した。

そして今度は、その報道を引用する形で、アメリカのメディアが伝え、世界中に「拷問はあった」との情報が広まった。

劇場で人質になりながらも奇跡的に生還した被害者達は、この偽情報によって世間から好奇の目にさらされる結果となってしまった。





● フランス大統領選でも偽情報?


 メディアを通じて、またSNSを通じて、一度拡散した情報は止めることができない。

また、いったん「事実っぽい」とイメージづけられた情報もかき消すことは難しい。



 「LES DÉCODEURS」のアドリアン・セネカフ記者によると、フランスでは4〜5月に大統領選を迎えるが、最近ではこの選挙をめぐって偽情報が出回ったという。

最大野党共和党の候補者の一人であったアラン・ジュペ元首相。

昨年11月に行われた共和党の大統領選候補者を選出する予備選挙では、同じく元首相のフランソワ・フィヨン氏との決選投票で戦い、敗れた。

その選挙中、ジュペ氏のこんな発言がSNS上に出回った。



 「フランスで最も大きなモスク(イスラム教の礼拝堂)をボルドー(仏南西部の街)に造ろう」。

ボルドーはジュペ氏が過去に市長を務めた街で、ここにモスクを造るということは、イスラム教の人々=難民を含め、自分の支持基盤のある街にこうした人々を積極的に受け入れるという趣旨の発言と捉えることができる。



 今回の大統領選では、反EU、反イスラムを掲げる「フランスのトランプ」こと、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が「台風の目」として注目を集める。

ルペン党首の支持拡大の背景には、フランスに広がる嫌イスラムの空気が一因といわれている。

SNS上に広まったジュペ氏の発言は「イスラム教徒を歓迎しよう。 もっと受け入れよう」と訴えるものと捉えられ、ルペン党首への支持者ではないものの、増え続けるイスラム教徒の難民に不満や不安を覚える市民たちをルペン支持に走らせる「引き金」になりかねない代物だった。



 しかし、この発言には「からくり」があり、ジュペ氏の発言は、実は「切り取られた」ものだった。

この発言の直前、ジュペ氏は「自分が最も言ってはいけないこと」と前置きしていた。

つまり、発言自体は正しかったものの、ジュペ氏が伝えたかった意図はまるで逆だったのだ。

当然、ジュペ氏はこの発言をのちに訂正し、弁解もした。

しかし結果として、候補者に選ばれることはなかった。



 「テレビには信頼がない。 テレビニュースは情報ではなく、劇場(ショー)化している」



 前出のローラン記者は、テレビニュースの現状を厳しく批判する。

フランスでは、シャルリーエブド紙本社への襲撃事件以来、24時間放送のニュースチャンネルが人気を集めている。

こうしたニュース専門チャンネルは、常に新しいニュースを現場から記者がリアルタイムで伝える中継スタイルが人気だ。



 ただ、発生直後は伝えるべき情報が多いものの、何時間にもわたって現場から新情報を伝え続けることは難しい。

時間が経つごとに情報は限られ、少しでも新しい情報をと、ネットに溢れた「危うい話」を、「裏取りなし」に伝えるレポーターも少なくない。

ただ、こうした危険な状況は海外メディアに限ったことではない。



 ここ数年で日本のテレビメディアの中継の環境も大きく変わった。

以前は海外から日本に向けて中継するとなると、1回100万円強の衛星回線を使わなければ中継はできなかった。

しかし、インターネット環境の向上と簡易中継機の発達により、海外からの中継はぐっと安価で手軽なものになった。





● SNS上に出回る話も中継のネタに


 加えて、日本では報道・情報を扱う生番組が増加し、ひとたびテロのような大事件が起きると、何度も何度も海外と中継をつなぐケースが増えている。

情報源が限られる海外では、地元の海外メディアの情報を元に伝えることが多い。

SNS上に出回る話も中継のネタになる。



 日本のメディアの場合、デスクのチェックも厳しく、そのまま放送することは簡単ではない。

ただ、テロ発生直後など混乱した状況では、「まだ確認は取れていませんが……」と前置きしたうえで、伝えることも少なくない。

正直に言うと、自分にもその経験はある。



 ローラン記者は言う。

「情報がないとき、裏が取れないときこそ、読者に対し『情報はまだない』と、はっきり言える勇気がジャーナリズムには必要だ。

確かな情報こそ、ジャーナリズムの根幹だ。

ただ、確かな情報を得るには時間も手間も、そして人もお金もかかる。

それも読者や視聴者にわかってもらわなければいけない。

情報は無料では手に入らない。

メディアの信頼を取り戻す道は、確かな情報をきちんと読者や視聴者に届けることしかないのだから」。




      ◇◇◇

天本 周一(あまもと しゅういち)
朝日放送 報道局パリ支局長

2014年4月よりANNパリ支局長。
09年、社会保険庁の不正免除や年金記録の改ざん問題をスクープ。
年金や性犯罪被害者などのドキュメンタリーも手掛け、ギャラクシー賞など受賞歴多数。




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◆ 偽ニュース、放置した企業に罰金…独で法案決定

【読売新聞】 04/06 21:26
ベルリン=井口馨




 ドイツのメルケル政権は5日、憎悪をあおる書き込みや事実かどうかが疑わしいフェイク(偽)ニュースについて、削除などの対策を講じずに放置したソーシャルメディア企業に対し、最大5000万ユーロ(約59億円)の罰金を科す法案を閣議決定した。



 法案では、ソーシャルメディア企業は24時間対応の利用者向けホットラインを開設し、明らかに違法な内容の書き込みについて通報を受けた場合は24時間以内に削除しなければならない。



 また、表現上問題があると指摘を受けた場合は、企業側が調査を行い、違法性があると判断したら1週間以内に削除する必要がある。



 企業側の責任者に対しても、最大500万ユーロ(約5億9000万円)を科すことができ、欧州内でも極めて厳しい対応となる。



 ドイツでは、中東やアフリカ出身の難民らに対する憎悪をかきたてる内容の投稿が相次ぎ、社会問題化。

9月の連邦議会選を前に、メルケル政権はこうした投稿や偽ニュースへの対策を急いでいた。

マース司法・消費者保護相は同日、「法律に抵触する場合は表現の自由は認められない」とコメントした。
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