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2017年04月02日09:40

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東京春祭「神々の黄昏」(演奏会形式・初日)

4月1日 東京文化会館
指揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ

出演
ブリュンヒルデ レベッカ・ティーム
ジークフリート アーノルド・ベズイエン
ハーゲン アイン・アンガー
グンター マルクス・アイヒェ
グートルーネ レジーネ・ハングラー
アルベリヒ トマス・コニエチュニー
ヴァルトラウテ エリーザベト・クールマン

 いろいろあったが、終わってみれば本当に凄い演奏だった。指揮のヤノフスキ。去年のジークフリートは年度初めで都合がつかず、残念ながら行けなかったが、おととしのワルキューレと比べても次元が違う。ワルキューレもかなりよかったのに…。
 
 自信と確信に満ちた指揮振りで、淡々と振っているのに出てくる音は凄いとしかいいようがない。テンポは早いのにスケールが大きい。テンポを落としてスケール大きくするのはクナなどでお馴染みだが、逆はあまり経験がない。2・3幕など、あっという間に終わった感だが、不満さがまったくなく、大きな満足感がある。たぶんワーグナーのフレージングができてるんだろう。中でも葬送行進曲の巨大さと言ったら…。オケが上にのっているからというだけではないと思う。背中に後光が差していた。

 さらに見通しのよさは特筆すべき。リングは巨大な構造物で、部分と全体が緊密に組み上げられている。部分は全体に奉仕し、全体は部分を規定している。そこを掌握しているかどうかが、リングを振れる指揮者かどうかの試金石だが、それをここまで理解している指揮者は現在数少ないだろう。最初の出だしの和音でリング全体が見えた。去年バイロイトでリングを振って今年も振るようだが、その経験が生かされたのかもしれない。キュッヘルをコンマスに迎えたオケの献身ぶりも素晴らしかった。受信料多めに払ってもいいとさえ思った(多めには払わないけど)。

 肝心要の主役二人が来日してリハまでしているのに体調不良で降板とは、裏のドタバタが想像できる、事務局は本当に大変だったと思う。それでも最善の対応をしたんじゃないだろうか。
 ブリュンヒルデの代役のティームが素晴らしかった。アメリカ人ソプラノでドイツの中規模の歌劇場でもこの役を歌ってるよう。強い声はあるし、高音の美しさもある。まだ荒削りではあるものの、なによりブリュンヒルデとしての風格を持っている。

 ヤノフスキの棒でブリュンヒルデが歌えるというのはある意味最大のチャンスだし、会場でバイロイトの総裁も聴いていたらしい。成功すれば将来バイロイトで大役をつかむかも、でも失敗すれば…。この状況で見事に代打決勝ホームランを決め、試合というか公演を救ってくれた。カテコで大ブラボー・ブラバーを浴びて涙ぐんでいたようだが、おめでとうといいたい。この勢いで4日も歌ったらどうだろう。

 ベズイエンについては、声質は綺麗だがせいぜいエリック、、タミーノが一番いいだろう。3幕にすべてを賭けていたようで、3幕は声質のよさを生かしてよかったと思う。とにかく最後まで歌ってくれただけでよしとすべし。

 アンガーは、去年のウィーン来日でフンディングを歌っていたが、ハーゲンもいい。とにかく声が凄くて文化会館を完全に満たしていた。1幕のモノローグの表現力も見事だった。アイヒェもグンターの性格をよく描き出し、ハングラーは美声のユーゲントリッヒ=ドラマティック・ソプラノで、エルザかエリーザベトを聴いてみたい。

 コニエチュニーがアルベリヒで、クールマンがヴァルトラウテで出てくるのは本当に贅沢。こういうところは、音楽祭らしい配役と言えよう。

 まあ日本で、このレベルの黄昏が聴ける機会はそう多くはない。ということで、4日の出撃も決定してしまった。会場で端っこが売れ残っていたのがいけないんだ。急になんか予定が入る可能性もあるが、なにがあってももう知らないのだ。


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