アーグラーへ行く列車のなかで、とにかく横になろうということで、一番上の寝台で横になった。
「一応アラームかけるけど、大きい駅だしこの辺にいる人も大勢降りるから、着いたら解ると思う(・∀・)」
と由有理さん。
でかい鞄とショルダーバッグ、コートを丸めて枕元に置き（誰かが引っ張ったらすぐ起きられるよう）毛布をかけて、横になり、そのままぐっすり・・・・
のはずが、眠れない・・・(￣▽￣;)
やはり気が張っているのか。
とりあえず目をつぶるだけでもかなり違うと思うので、目だけは閉じてた。
周囲のインド人達は、みんな普通に、寝返り打ったりいびきかいたりして寝てる。
当たり前だけど同じ人間なんだよな〜と思う。
眠れないまま、時折トイレに行ったりしながら静かな電車のなかに居た。
しばらくして由有理さんに「まだ着いてないけどとりあえず降りる支度だけしとこう」
と声をかけられ、荷物を下ろして下の席へ移動。
薄明かりしかないなかで荷物を下ろすのは一苦労だったけど、旅行前に「頭につけられるタイプのライトがあると便利だよ〜」と言われていたのは、この時のためかと納得。暗闇での荷物の上げ下げや階段の上り下りは、なかなか難しい。
走行がゆっくりになったり、変なとこで停まったりしてるから、確実にあれから一時間くらいは遅れてるはずだとのことで、
「さっきトイレ行きがてら外見たけど、もやがものすごかったから、徐行してるのかも。起きてた人に聞いたんだけど、次の到着はバーナトプルだって(・∀・)」
・・・バーナトプルて何処だ・・・(￣▽￣;)
（後から調べたら『バラトプル』と言う地名があったから、これかも）
下の席に腰を降ろした時になって、眠気が一気に襲ってきた。本当なら今頃は、アーグラーのホテルでぐっすりのはずだったのに・・・
アーグラーの宿は、駅から距離がけっこう離れているので、もともと車の迎えはホテルへ依頼済みだった。電車到着が遅れる連絡もしてあったものの、そこから更に遅れてしまったので、迎えの人が帰ってしまっている可能性もある。そこから改めて迎えを頼んで時間使ってホテルへ行くよりは、いっそホテルをキャンセルして、駅近くのホテルに変更して少しでも早く休むか、と提案された。
「取り合えず駅着いて、迎えの人がいなかったら別のホテルにしよう」
との結論に。
アーグラーのホテル、楽しみにしてたのに・・・
まさか、タージ・マハル行く時間までは奪われないよね・・・？ていうかタージ・マハルが今回の旅の最大の観光地だったのに、どうなってしまうのか・・・。
そんな思いが胸に去来したけど、ぐだぐだ考え出しても仕方ない上に、人間万事塞翁が馬。取り合えず無事帰国できればいいや・・・初インドだし(￣▽￣)と決着。異国で疲れてるとこに考え込んで知恵熱でも出したら阿保らしいので、考えるのをやめた。
電車がまた停車した時に、席を離れて私も外を見に行ってみた。
ドアに手をかけてスライドさせると、フッツ〜〜〜に簡単に開いて、真っ暗な中に巨大なコンテナが見えた。ちょっと身を乗り出して外を眺めれば、電車の前後２Mくらいからは、灰色のもやで何も見えない。駅でもないから、足の下も真っ暗。人の声や鳥の声、車やバイクなんかの音も、風の音も一切しない。
もしも今、手か足か、どちらか滑らせてしまったら・・・
下に落ちて、電車の上に這い上がることもできないまま電車が発車したら・・・
そうなったら、きっと、自分がいかにちっぽけで、無力な存在かを思い知りながら、誰にも気付かれないまま、ここで死ぬことになるんだろうな・・・・・・・・・・
そう思ったらゾッとした。インドに来て初めて怖いと思った。
というか、インドで『怖い』と思ったのは、この時だけだった。
席に戻ってまたウトウトしていたら、赤ん坊むずがるような声がして、前の席で壁向いて横になっていた男性が起き上がった。
男性の体の向こう側に赤ちゃんが寝ていたらしい。
男性は赤ちゃんを抱っこしてジーッと見ていた（あれはあやしていたのか・・・？(￣▽￣;)）それ以上子供が泣くことはなかったけど、あれくらいの小さい子って、普通母親と寝るもんだと思ってたわ・・・。
ちなみに母親は一番上の寝台で一人で寝て、その下の台に８歳くらいの男の子で、一番下に父親と赤ちゃんが寝ていた。
しばらくしてから、男性が上に寝ていた男の子を起こし、裸足だった彼に靴下を差し出して履くように指示を―――するかと思いきや、履かせてあげていた。
見た目8歳くらいだけど実はもっと小さいの？でも靴下履けるくらいの歳には見えるよ？
「見て見て〜！お父さんが靴下履かせてあげてる〜！優し〜い(・∀・)」
「履きなさいって渡すんじゃなくて、履かせてあげてる・・・・(￣▽￣;)」
「インドのお父さんて子供に超優しいんだよ〜(・∀・)」
そういえば、このお父さん、この子が寝てる時に、壁向いて寝てるのをわざわざ逆向きに態勢変えさせてたな・・・（子供はビクともせずグッスリだった）何してんだと思ったけど、まさか、単に寝顔が見たかったとか、そういう理由・・・なのか・・・？
「インドのお父さん、父性爆発してるね〜(・∀・)」
名も知らぬインド人のパパ・・・
日本人旅行客二人のなかで、よもや自分の株が急上昇しているとは、思いもよるまい・・・。
外にようやく明かりが見えはじめ（外には今まで、町の明かりすらなかった）徐々に速度を落としはじめる電車。
どっかの町に着いたんだろうな、とは思ったけど、相変わらずアナウンスはもちろん外を見ても駅名書いたプレートひとつ見当たらない。
ちょくちょく停まりながら徐行を交えつつ、遅れまくって走行する電車にも関わらず、示し合わせたように下車準備をはじめる人々に驚愕。
「何なんですかね！？何で自分が降りるべき駅ってわかるの！？外真っ暗なときに降りてる人も居たけど、センサーでも付いてるの！？(￣▽￣;)」
「すごいよね〜(・∀・)」
「というか、もしかして今停まるとこがアーグラーってことは・・・？」
「ないない。もっと大きいから、絶対わかる。近いはずなんだけどね(・∀・)」
６：００。電車が停車して、降りようとしているお父さんに、ここはどこかと尋ねたところ、
「イーデガーだって(・∀・)」
イーデガーって何処だ（こんなんばっかり。）
１０分後、今までとは比べものにならないくらいの明るい駅に停車した時、初めて音楽が鳴り、アナウンスが響き渡った（駅の放送なのか車内の放送なのかは不明）
何言ってっかわからないけど「アーグラー」だけは聞き取れる。寝ている人もたたき起こす勢いで『アーグラー』連呼。
「ぅぅぅるせぇええ！！うるさいよもううるさいからわかった！！わかったからもういいよ！！(￣▽￣;)」
この差・・・・・・・。
・・・・インドすごい。
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