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2017年03月18日22:38

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ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 カーネーション(NELKEN)

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2017/3/18土 15:00- さいたま芸術劇場

振付・演出: ピナ・バウシュ
音楽: フランツ・シューベルト、ジョージ・ガーシュウィン、フランツ・レハール、ルイ・アームストロング、ソフィー・タッカー、クインシー・ジョーンズ、リヒャルト・タウバー 他

舞台一面に広がるカーネーション。会場に入った途端、その美しさに息を呑みました。最初は整然と真っ直ぐ上に向いている花達ですが、舞台上で登場人物達の様々な感情が展開されていくにつれ、踏みしだかれていく。でも、終演後の、その無残なように見えるカーネーションが、決して悲惨に見えなかった。

ピナの作品は痛くて哀しいものだと思っていたのに、NELKENは観終わった後に、何だか優しい気持ちになる。人生は苦しいけれど、それでもこの世は美しくて温かい。それが、私がこの舞台から受け取ったメッセージでした。

明確なストーリーはなく、それ自体は一つずつ独立したエピソードのコラージュから成る作品で、この作りや、あと、台詞が多いところは、コンタクトホーフと似ている気がします。私の中では、これはダンスというよりは演劇・・・いや、インスタレーションに近い感じかも。カテゴリーの垣根をつくることにあまり意味はないのでしょうが、私はもともとタイプを問わず「踊り」に興味関心が高い人なので、ダンスと言われて観てしまうとちょっと食い足りない感じもします。そういえば、客層もいつものバレエ、そしてダンスともかなり違う感じでした。男性と、そして服装などから一見してアート系・クリエイティブ系と分かる方々の比率が高い。年齢層が意外に幅広くて、若い人も多かったのには驚いたな。

とはいえ、これが名作と言われるのは、何となく分かります。ピナの作品は非常に感情の要素が多いので冷静に文字にすると元も子もないような気がしますが、演出が本当に素晴らしい。何より凄いのは花を敷き詰めたところで演じるという発想。あの舞台、とても動きにくいと思うのですが、普段は一体どうやって練習するんでしょうね?一面のカーネーションは、視覚的に美しいだけではなくて、どんな苦しい時でも、何か優しいものが静かに私達を包んでくれていることを感じさせます。

そして、エピソードがバラバラと出てくるように見えて、実は全体の流れがとてもよく計算されている。最初の方は生きるのって苦しいね、って感じだけど、最後になっていくにつれて、でも大丈夫、実はこの世は美しくて温かいのだよ、となっていく。最後の、春夏秋冬の手話みたいなダンス(NELKENダンスって呼んでる人もいるらしい)は、人生は季節のようにいろいろなものが巡ってくる、というメッセージも入ってるんだろうけど、客席の方に微笑みと共にアイコンタクトしてくるダンサー達から、優しいエネルギーをもらってホロリとしました。

余談ですが。この1週間でピナの作品を3つ観たわけですが、ピナの振付には、ある人物が他の人物に対して動きを指示するとか強制するとかいうものがたくさん出てくる。決して高圧的なものばかりではないですが、ピナ自身に何かしら抑圧感があったのかなあ。

ダンスファンだけでなく、演劇、特に、抽象的なものが好きな人には是非、観てもらいたい作品ですが、さいたま公演はすでに完売だそうですね。ヴッパタール舞踊団、今年の5月から芸監が変わるそうですが、またピナの名作とともに来日してほしいなあと思いました。

写真は、開演前と終演後のステージ。このタイミングは、撮影可です。カメラ性能の低いタブレットで撮ったので画像が悪くて残念(T T)

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