主任弁護人の亀石さん、きれいな方ですね。
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■最高裁、令状なしGPS捜査「違法」 弁護団「人権とのバランスを考える指針になる」
(弁護士ドットコム - 03月15日 19:34)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=149&from=diary&id=4479513
最高裁大法廷（裁判長・寺田逸郎長官）は3月15日、令状なしで捜査対象者の車などにGPS（全地球測位システム）端末を取り付ける捜査を違法だと判断した。また、発行する令状についても、立法で整備することが望ましいとした。
GPS捜査の違法性をめぐっては、下級審の判断が分かれており、最高裁が判断を示すのは初めて。今後、警察が捜査の手順を変えることが求められる。
●そもそもどんな裁判だったのか？
この裁判は、2012〜13年に関西方面で、店舗荒らしを繰り返し、窃盗などの罪で起訴された男性被告人（45）の上告審。裁判では、GPS捜査の結果が、犯行を裏付ける証拠として提出されていた。
一審・二審とも、男性を懲役5年6カ月としたが、GPS捜査についての判断は分かれた。一審はGPS捜査について、プライバシーを侵害する可能性があるとして、証拠採用しなかったのに対し、二審は「重大な違法はない」として証拠採用した。
被告人の男性は起訴内容を認めていたが、GPS捜査について判断を仰ぎたいとして、上告した。
今回、最高裁は、令状なしのGPS捜査を違法とした一方で、男性の量刑については、一・二審を支持し、懲役5年6カ月とした（上告棄却）。
●GPS裁判の争点はなんだったのか？
上告審の大きな争点は、（1）GPS捜査は強制捜査か、任意捜査か、（2）強制捜査だとしたら、従来の（検証）令状でできるのか、の2つ。
警察の捜査には、尾行や張り込みのような「任意捜査」と、対象者の意思に反して行う「強制捜査」の2種類があり、強制捜査には裁判所の令状が必要とされる。警察はこれまで、GPS捜査を任意捜査として、令状を取ってこなかった。一方、弁護側は、GPS捜査は対象者のプライバシーを侵害するとして、強制捜査に当たると主張していた。
また、強制捜査だとすれば、令状が必要になるが、弁護団は令状の範囲も問題視した。今回の事件では、警察がGPSを取り付けるため、私有地に入ったり、バイクのパーツを取り外したりしていたからだ。「令状があれば、何でもありになるのか、権力の暴走を招くのではないか」。弁護団はGPS捜査を可能とする令状について、法律をつくって、可能な範囲を定める必要があると訴えていた。
●弁護団の主張がほぼ認められる
今回の最高裁判決では、GPS捜査は「プライバシーを侵害しうる」と判断。「公権力の私的領域への侵入」だとして、GPS捜査は令状が必要な強制捜査だと判断した。
また、GPS捜査に必要な令状についても、「その特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい」とした。弁護団の主張がほぼ認められた形だ。
被告人男性の主任弁護人を務めた、亀石倫子弁護士は「今後、科学技術を活用した新たな捜査手法が登場すると思う。実施するに当たっては、人権とのバランスが問題になるはずだ。その際に（今日の判決が）必ず参照される指針になるだろう」と述べた。
一方、GPS捜査を行なってきた警察庁は、午後5時半ごろ、弁護士ドットコムニュースが電話取材したところ、「資料が用意できていない。本日中にコメントを発表できるかも分からない」と慌ただしい様子だった。
また、日弁連の中本和洋会長は、今回の判決について「当連合会の意見の趣旨に沿うものであり、高く評価できる」とする談話を発表した。
（弁護士ドットコムニュース）
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判決全文はこちらから読めるので、興味のある方はどうぞ。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600
なにゆえ棄却判決にこれほど嬉々としているか。
なにしろ、棄却判決であるうえに、判決理由の冒頭から
�〃�法35条違反は原判決に影響を及ぼさない、
��判例違反は事案を異にする判例引用で不適切、
�７�法違反とは言っても実質は単なる法令違反の主張で上告理由に当たらない、
とミもフタもない言葉が羅列されている。
とはいえ、ＧＰＳ捜査が�，侶�法35条（捜索などに関する令状主義）に反するぞと、憲法上の問題点を列挙してくれていて、警察・検察向けに厳しい判決になっている点で、上告した弁護士たちは喜んでいるのだ。
その辺をちょっと判決文を読み込んでいってみよう。
１． まず事案は、集団の連続窃盗事件だが、その捜査に
「約６か月半の間，被告人，共犯者のほか，被告人の知人女性も使用する蓋然性があった自動車等合計１９台に，同人らの承諾なく，かつ，令状を取得することなく，ＧＰＳ端末を取り付けた上，その所在を検索して移動状況を把握するという方法によりＧＰＳ捜査が実施された」
というのだから、そりゃ移動を把握されていた人たちは怒るはずだ。
ここでは、無令状だったという点を覚えていてほしい。
２． 第一審は、ＧＰＳ捜査を、刑事訴訟法197条１項但書にいう「強制の処分」に当たるとして、このような捜査方法は法律に定められていない以上、違法だとした。
この刑訴法197条１項但書は、
「強制の処分は、この法律に特別の定めのある場合でなければ、これをすることができない」
と、強制処分法定主義という建前を条文化したもの。
この判決で最もカギになる条文だ。
ＧＰＳ捜査は「強制の処分」に当たるから、法律で決められていない以上、使えば違法となる、というのが重要ポイントの１つ目。
そして、そんな違法捜査で集められた証拠は採用できない、という原則（「違法収集証拠排除法則」という）によって、ＧＰＳ捜査によって得られた証拠を採用しなかった。
これがポイントの２つ目。
これら二つのポイントは、最高裁がほぼそのまま認めているので、覚えておいてほしい。
でも、第一審は、ほかの証拠で犯罪が証明できるので有罪とした。これも最高裁はそのまま認めた。
３． これに対して、第二審（最高裁の前に判断した裁判なので「原審」という）は、ＧＰＳ捜査は適法ではないが、違法は重大だとまでは言えないので、その捜査で得られた証拠も採用できる（「証拠能力を否定しない」という）とした。
クソ判決なんだけど、どこがクソかというと、上の「違法収集証拠排除法則」の例外として、違法の程度が重大でなければ、証拠は排除されない（「証拠能力を肯定する」）、というルールを適用した点。無令状のＧＰＳ捜査の違法は重大じゃないときたもんだ。
これがポイントの３つ目。
このポイント３つ目については、本件では最高裁は採用せず、「重大な違法」だとして、証拠能力を否定した。
４． で、いよいよ今回の最高裁判決。
結論的には第一審の通りなんだけど、ＧＰＳ捜査の問題点を具体的に指摘している点がすごい。
というか、法律家の間ではほぼ常識的な指摘なんだけど、まさか現在の最高裁メンバーでこの判決が出ると思っている人は少なかったので、意外性はあったと思う。弁護団の喜びもそこにある。
判決理由をやや要約してざっくり紹介しよう。
(1) ＧＰＳ捜査は，その性質上，公道上だけでなく、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間にまで、対象車両とその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。
したがって、個人のプライバシーを侵害しやすいし、また、捜査機器がひそかに装着されるので、公道上でのカメラ撮影とは異なる私的領域への侵入を伴う。
(2) 憲法３５条は，「住居，書類及び所持品について，侵入，捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ，この規定の保障対象には，「住居，書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解する。
この条文は、そういう権利を侵す場合には、裁判官の発する令状を要する、という「令状主義」を定めている。
令状主義を正確に定義すると、
「強制処分は事前の司法審査を経て発付される令状に基づいて行わなければならないとする原則」
となる。
他方、ＧＰＳ捜査は(1)で指摘したような性質を持ち、「合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法である」ので、刑訴法上，特別の根拠規定がなければ許容されない「強制の処分」に当たる、と前述のポイント１を肯定した。
だから、ＧＰＳ捜査は、令状がなければ行うことのできない処分と解すべきであるとした。
判決の論理はやや錯綜しているのだけど、とにかく
「ＧＰＳ捜査は強制処分だし、令状なしでは許されない」
という結論にしている。
ここで示された「令状主義が適用される」という点はポイントの４つ目なので、覚えておいてほしい。
(3) 次が警察や検察、そしてたぶん法務省も焦っている箇所。わざわざ、「捜査及び令状発付の実務への影響に鑑み，この点についても検討する」と断って説明している。
ＧＰＳ捜査は，情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの，対象車両にＧＰＳ端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点において，「検証」では捉えきれない性質を有する、とその特殊性を指摘している。
それは、適正手続の保障を満足させられない、２つの大問題である。
�“鏥浸�実と関係のない車両使用者の行動の過剰な把握を抑制することができない。
�∋�前の令状提示ができないので、捜査の公正を担保する手段が仕組みとして確保されない。
要するに、捜査機関の暴走に対する歯止めがない捜査方法だと指摘しているのだ。
ＧＰＳ捜査なんて「尾行の延長だ」なんて軽く考えていた警察・検察は焦ったに違いない。
そして最高裁はダメ押しする。
これらの問題を解消する手段としては、一般的には，実施可能期間の限定，第三者の立会い，事後の通知等様々なものが考えられるけれど、
「どのような手段を選択するかは，刑訴法１９７条１項ただし書の趣旨に照らし，第一次的には立法府に委ねられていると解される」
「ＧＰＳ捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば，その特質に着目して憲法，刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい」
と、立法の必要性を示唆している。
そして、裁判官が発する令状に様々な条件で問題を解決しようとしても、事案ごとに担当裁判官の判断で多様な選択肢の中から的確な条件の選択が行われない限り是認できないような強制の処分を認めることは，「強制の処分は，この法律に特別の定のある場合でなければ，これをすることができない」と規定する刑訴法197条１項但書の趣旨に沿うものとはいえないとする。
いつまでも裁判官の審査頼みにするな、とくぎを刺したのだろう。
５．結論的には、「ＧＰＳ捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定する」けれど、「その余の証拠」に基づいて被告人を有罪とした第一審判決を正当とした。
ちなみに、この「直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定」というのは、「毒樹果実の法理」と言う。
違法な捜査方法で得られた証拠はもちろん証拠能力は否定される（前述のポイント２）けど、その証拠を契機として収集できた証拠も、「毒樹（毒の木）に生っていた果実も毒だから食べられない」ということで、密接な関連性を有する証拠の証拠能力も否定する、ということになる。
これをポイント５としようか。
私は、警察・検察は今後、令状なしでＧＰＳ捜査をやって収集した証拠は法廷に提出しないけれど、そこから得られた派生的な証拠を「毒樹果実」であることを隠して提出するのではないかと疑っている。
６．なお、少数の補足意見では、立法措置が講じられるまでの期間も、令状を取ればＧＰＳ捜査は実施できると言っている。
もちろん、令状主義だけでは賄いきれない上述の２つの問題点に「配慮して」と条件付きだけど。
７． 刑事法の大家である山口厚裁判官のデビュー大法廷になったけれど、彼の意見はどれくらい反映されたのであろうか。
非常に興味深い判決だった。
いずれにしても、私が危惧した「立法次第では令状なしでもＯＫ」とはなりそうにもないので、やや安心した。
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