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2017年03月15日20:16

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ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団 カフェ・ミューラー/春の祭典

2017/3/11土 19:30- 香港文化センター Grand theatre

◆カフェ・ミューラー 
音楽:ヘンリー・パーセル
振付:ピナ・バウシュ

◆春の祭典
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
振付:ピナ・バウシュ

来週日本にもやってくる、ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団。香港公演は日本とは違う演目で、どうしてもあの有名な「ピナの春の祭典」を観たかったので、土日の1泊2日で香港に弾丸旅行してきました。

行ってよかった!2つとも名作。

最初はカフェ・ミューラー。

真っ暗な舞台から、時々ガタンという音がしてくるオープニング。照明が入ると、白いドレスの女性が目をつぶって歩いていて、舞台上にたくさん散らばっている椅子に彼女がぶつかると物音がするのだということが分かります。下手奥には回転扉。見捨てられた、昔カフェだったと想われる場所。

彼女を献身的に見守り、その動く先の椅子やテーブルを片っ端からどかしていくスーツの男性。彼女と抱き合うシャツの男性。その二人の関係をコントロールしようとするさらに別のスーツ男性。赤いヒールを履いて彼らのまわりをパタパタ走り回り、シャツの男性に想いを寄せている(?)コートを着た女性。そして、中心となる彼女の陰のようにそっと後方で同じような動きをする、似たような白いドレスの女性。登場人物はこの6人。

彼女は、何か昔の想いに囚われていて(だから目をつぶっている)、愛するシャツの彼との関係もそのために上手く行かない。彼も彼女もお互いを大切に思っているのに、一緒にいると傷つけ合ってしまう。コートの女性はシャツの彼を想っているが報われない。後方で踊る女性は他の人物とはあまり関わらないから、このストーリーの語り部なのか。でも最後はコートの女性からコートを着せられるので、他人の話として語っていた語り部が実はコートの女性なのか…。

解釈はある程度観衆に委ねられているようですが、私が感じ取ったのはそんなストーリーでした。すべての登場人物について、その人の過去やキャラクターを想像してしまい、彼らに「会った」ような感覚になるのは、コンタクトホーフのときと同じ。これがピナのタンツテアターなのか、と、遅ればせながら腑に落ちた気がします。

全ての登場人物がみな、何かの痛みに耐えているような舞台というのも、ピナの作品の特長なのかな。つらい恋愛をしたことのある人には響くだろうなあ…。

ステージングについては、舞台の三方に透明なビニール素材の壁があって登場人物達がそこにぶつかるのが、あるところから抜けられない閉塞感を表現しているのかしら、と興味深かったです。

さて、お目当てだった春祭。これは、カフェ・ミューラーよりもかなり身体性で見せる作品でした。女性と男性の集団が出会い、男性のリーダーから一人の女性が見初められる。その「生贄」のソロがあり彼女が倒れ込んで暗転。

ピナの、苦しさに身をよじるような、そして繰り返しの多い舞踊言語はこの作品でも健在ですが、ストラヴィンスキーのあの名曲と重なると、他の作品でそれらを観るのとは違う印象になって面白い。

さて、ピナの春祭の凄さの一つは、ステージに土をひき、土の上でダンサーが踊ること。土は、何か原始的で本能的なものを感じさせるし、その上で転がって体や衣装が汚れていくことで切迫感が強調されるように思いました。

ピナの春祭はパリオペラ座バレエ団も上演していて、オレリーがあれを踊ったときにピナから「きれいに演じようとしてはダメ」と言われた、と聞いたことがあるのですが(出典も詳細も曖昧、すみません)、なるほどーと思いました。確かにこの作品はきれいに形に入ってるように見えると迫力半減だな。驚き、怒り、恐れ、焦り、そういう感情が、今そこに、ホンモノとして存在していることとして感じられてこそ、大きな感動を生む。

この日の生贄のソロは、圧巻でした。生贄に選ばれたことに驚愕し、これから起こることへの恐怖のあまりトランス状態になるまで踊り続け、ついに力尽きる。踊り終えた直後の挨拶の時、生贄役の彼女、呼吸困難になってるように見えました。渾身の演技だったのだろうな…!

春祭が終わった後、会場からは割れんばかりの拍手とたくさんのブラボー。演じた皆さんの顔にも満足感が見られたように思います。いい公演でした!

それにしても。春祭の男性の描かれ方、何というか、「男」で一括りにされてる感が満載。一方、女性は群舞のひとりひとりも何かキャラクター付けがあるように感じます。ピナは、所詮男は男よ、って思っていたのかなあ…。

あ、それと。カフェ・ミューラーが終わった後、30分の休憩があって、その時間にステージ上に土をひくのですが、この作業が面白くて席でずっと見学してしまいました。男性15人が息のあった作業で、ステージにシートをひき、平らにして釘とテープで固定し、大きな容器に入った土をばかっとあけて鍬みたいなもので平らにしていく。土は赤っぽくて少し湿り気があって、あと、ふわふわしてそうでした。これドイツから運んできたの?それとも現地調達?いずれにせよ、毎回のセッティングお疲れさまです!

来週はさい芸で「カーネーション」。楽しみです!
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