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2017年03月05日19:00

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パリ・オペラ座バレエ団 ラ・シルフィード

東京文化会館 大ホール

台本: アドルフ・ヌーリ
音楽: ジャン・マドレーヌ・シュナイツホーファー
振付: ピエール・ラコット(フィリップ・タリオーニ〈1832年〉原案による)
装置: マリ=クレール・ミュッソン(ピエール・チチェリ版による)
衣裳: ミッシェル・フレスネ(ウジェーヌ・ラミ版による)
*パリ・オペラ座初演: 1972年6月9日。パリ・オペラ座のために創作された。

演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
指揮: フェイサル・カルイ

2017/3/4土 13:30-

ラ・シルフィード: リュドミラ・パリエロ
ジェイムズ: ジョシュア・オファルト
エフィー: オーレリア・ベレ
魔女マッジ: アレクシス・ルノー
ガーン: アントニオ・コンフォルティ
エフィーの母: ニノン・ロー
パ・ド・ドゥ: ジェニファー・ヴィソッチ、マルク・モロー

2017/3/4土 18:30-

ラ・シルフィード: ミリアム・ウルド=ブラーム
ジェイムズ: マチアス・エイマン
エフィー: レオノール・ボラック
魔女マッジ: アレクシス・ルノー
ガーン: イヴォン・ドゥモル
エフィーの母: ニノン・ロー
パ・ド・ドゥ: エレオノール・ゲリノー、フランソワ・アリュ


パリ・オペラ座バレエ団の来日公演。プログラムその1のラ・シルフィード、土曜日にマチソワしてまいりました。チケット代の高騰、演目への不満、スターダンサーの降板によるキャスト変更、などなど、いろいろケチのついた部分もありましたが、キラッキラの将来大スターになる可能性を秘めた若手がたくさん揃った素晴らしい公演。

最初に言いたい!エルヴェとマチューの降板は本当に残念だけど、それを理由にこの公演から遠ざかった方がいらしたら、だまされたと思って是非どれか一度は行ってみて下さい。バレエ団の充実っぷりに目をみはり、満足の行く舞台であること、間違いありません。

さて、本筋に戻って、土曜日の昼の公演から。

私、ラコット版のシルフィードを観るのは初めてかもしれません。去年の2月に新国でブルノンヴィル版のラ・シルフィードを観たのを思い出しながら、昼の公演を観ていました。

ブルノンヴィルに比べると、ラコット版はずいぶんシルフィードを人間らしく描いている印象。のっけから、ジェイムズの眠る椅子の傍らに立った状態で登場し、ジェイムズにご執心のシルフィードが登場します。ブルノンヴィル版を観たときは、ジェイムズの方が妖精に惹かれていったという感じがしたけど、ラコット版は妖精が結婚間近のジェイムズをかなり強引に誘惑して強奪するイメージ。さすがアモールの国おフランス。

こういう風に感じたのは、リュドミラのシルフィードが、1幕ではかなり人間ぽかったからかも。エフィがいるからと拒否を続けるジェイムズに対して、色目を使ったり、あの手この手の誘惑っぷり。顔も雰囲気も大人っぽかったので、妖精というより恋愛では百戦錬磨のお姉様って感じでした^^;

でも、リュドミラのシルフィード、素晴らしかったです!手足が長くて、特に足の甲の美しさといったら!テクニックは完璧で、かなり難しいパを軽々と正確にこなして、しかもエレガント。1幕は子供っぽいエフィ―に比べて大人な感じがしちゃったけど、2幕はシルフィードの女王という感じで、あの白いバレエの世界にぴったりでした。彼女で一番いいなぁと思ったのは、羽がとれた後のところ。だんだん元気がなくなっていって、あるタイミングでくたぁ、っと前に倒れてしまう。その倒れ方が、本当に、軽いカゲロウのような存在が命が終わる瞬間のように、ふわっとしていて。長い腕の動かし方が、そういうニュアンスを絶妙に表現していて、絶品。1幕が人間のように実在感があっただけに、その人がこんな風になってしまうと、悲劇感が強くてちょっとホロリとさせられました。

対するジェイムズは、ジョシュア。彼はとても美しいダンサーですね。古典を踊るのは初めて観たけど、よく頑張ってるな!と思いました。完璧じゃないけど、難しいパをちゃんとこなしていた。役作りとしてはちょっと薄味で、特に特徴がある感じではないけど、育ちのいいボンボンな感じがしたのはこの役には合ってるかもしれません。

そのほかに昼の部で印象的だったのは、パドドゥを踊ったマルク・モロー。彼のこと、全くノーチェックだったんですが、やけに華があって、何この若手は?!と思いました。テクニックは勿論あるけど、彼のインパクトはそれだけじゃないですね。舞台に立ったときに思わず目が行ってしまう、もって生まれたものがあると思う。この方、グラン・ガラのダフニスとクロエでダフニスやドルコンにキャスティングされてる。楽しみです!

昼の部は、オケも演奏もよかった。ホルンのながーいソロに失敗がなくて、安心して聴けました。

続いて、夜の部。

私が今回の来日公演でいっちばん観たかったマチアス!期待しまくっていきましたが、期待以上でした。昨年オールスター・ガラで観たときより、更に進化していたと思う。

彼のテクニックは勿論凄くて、難しいパも一個も誤魔化さずにきっちりこなすし、空に飛んでいっちゃいそうな跳躍も凄いのだけど、私が一番好きなのは音感とキレ(これ、私が踊りを好きと思うツボみたい)。同じコンマ何秒の間にくるっと回るとしても、マチアスは全部をたっぷり使うのではなく、あるポイントできゅっと速めて、音楽にきれいにはまる回り方をする。こういうのが積み重なると、音楽が見えるような踊り、になるのです♪ほんっとうに気持ちいい!

テクニックだけじゃなくて、演技力とか情感とか、踊りにちゃんと意味を籠めるという点も進化してた。マチアスのジェイムズは、2人の女性の間で迷うという感じではなくて、エフィ―と仲良くしてたし彼女を愛しているのだけれど、不思議な魔力でシルフィードに絡めとられた感じだった。1幕のところで、シルフィードを見るとき、何か憑かれたようなニュアンスだったから。この解釈、なるほどねと思ったり。

とにかく、今回の公演を観て、マチアスは現時点でクラシックを踊らせたら世界最高の男性ダンサーだと思いました。来日公演、ラ・シルフィードは終わってしまったけど、グラン・ガラでいいから、是非このマチアスの今をたくさんの人に観てほしい!

さて、シルフィード役のミリアム。これまたリュドミラとは全く違うシルフィード。彼女の、儚げで可憐で妖精のような佇まいはまさにシルフィードそのもの。同じ振付なのに、リュドミラのように「誘惑」している感は薄く、ジェイムズが好きでしょうがない無垢な少女、といった風情。1幕でジェイムズとシルフィードがちょっとした駆け引きをしているところ、二人の笑顔が本当にチャーミングで、観ているこちらも思わずニコニコしてしまいました。ミリアムと一緒だと、マチアスはなんか逞しい男性に見えるところもいいね。

ミリアムのシルフィードが死んでしまうシーンは、ふっと消えてしまう雰囲気。リュドミラのそれよりも悲劇性は少なく、彼女がいたことが夢で、ジェイムズも観ている方も、夢から覚めるという感じがしました。これはこれでラ・シルフィードらしい。新国の絢子ちゃんのも、そういう感じだったな。

そして、エフィ―役のレオノール・ボラックも、とってもよかった!昼の部、ジョシュアとエフィ―役の子の間には、全く愛が感じられなくて、親が決めた近所のいいなずけなのか、という雰囲気だったけど、マチアスとレオノールは、役柄上の愛はちゃんと感じられました。そのジェイムズが出ていってしまって、絶望の余り花束を投げ捨てるレオノールのエフィ―。昼のときはこの花束の投げ方が中途半端で、は?!と思ったので、レオノールの熱い演技は共感できました。

あと、夜の部のパドドゥ、アリュとゲリノーも素晴らしかった。二人とも、この役には勿体ないというテクニックと存在感の持ち主。アリュはワイルドと聞いていたんですが、ちゃんとこうやってノーブルにも踊れるのだなあ。

最後になりましたが、衣装について。パリオペの衣装は、素材に凝っていて本当に美しいなぁと思います。シルフィードの衣装、主役だけ、他のシルフィード達とちょっと違いました。いえ、見た目には同じ、白いロマンチックチュチュなんですが、主役だけ、素材が少し柔らかめで、レイヤーが多いんです。それが、動くときの浮遊感を助けていて。細かいところの工夫が素晴らしいなぁと思いました。

長々と書いてきましたが、シルフィードってほんと、作品的には面白くないけど、パリオペの素晴らしいダンサー達が踊るとこんなに盛り上がるのね、って意外な発見でした。ちょっと短いのが残念だけどね。

来週のグラン・ガラも楽しみです。
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