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2017年02月28日18:29

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第七話:疾走、超速走攻!【その1】

【創作まとめ】
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【前回】
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 日本には報連相という言葉がある。
 報告、連絡、相談。
 何をするにしても、まずはコミュニケーションだ。
 日本人は和を尊び、輪を重んじる。
 とにかく集団が好きで、個で動くことを嫌う。
 報連相。
 まあ報告は理解できる。
 仕事の進捗を上司に報せることは、全体を把握する必要のある上司にとっては重要だろう。
 しかし、連絡と相談を義務化する必要があるのだろうか。
 子供の教育にとっては必要だと思う。
 何故なら子供は物事の善悪を理解していないのだから、親や教師といった大人が判断する必要があるだろう。
 その判断材料としての連絡、相談は頷ける。
 しかし私たちは大人である。いい歳した大人である。
 子供のように物の分別が付かないわけでもなく、物事の善悪の判断もできる。
 それでも連絡、相談を義務付けるということは、私たちを信用していないということにならないだろうか。
 実際、海外では部下に仕事を任せる時、作業内容と期限を伝えるだけの方が多い。
 期限内に仕事が終わるのなら、その途中で何をしていても構わない。
 有給を取ろうが、漫画を読んでいようが、エロゲーをして・・・・・・いたらさすがに注意はされるだろう。
 それでも一度任せた仕事に関しては、本人の自己責任として完遂すればいい。
 進捗報告も週末に一度だけ。
 部下が仕事に疑問を感じるなら、自分で相談に来るだろう。
 他部所に関連ある内容なら、自分で判断して連絡を取るだろう。
 何も分からない子供ではなく、いい歳した大人なのだから。
「これでも私は君たちを評価しているし、期待もしている」
 とにかく私はこの集団行動を是とする思想が嫌いだ。
 それは私が科学者であり、研究者だからかもしれない。
 誰も踏み込んだ事の無い領域を突き進み、研究、解明していく。
 今まで不可能だったことを可能に変えていく。
 それは他者とは違う発想が必要で、集団行動とは対極にあり、個で動くことを追求する。
 まさに開拓者と言っても過言ではない。
「それを連絡も相談も無しに独断で動いて、作戦を失敗したとあっては、少しはフォローする側の事も考えてくれ」
「申し訳ありません」
 そもそも、何故私が日本企業の在り方という不毛な考えに想いを巡らせているかと言うと、ただ単に現実逃避である。
 場所は警視庁のとある一室。
 そこで日本警察ナンバー2の男、特別強襲機動隊設立の立役者にして総責任者、警視庁警視副総監、宗像俊蔵に呼び出され、先日の事件について説教されていた。
 しかも呼び出されたのは私とボスこと相田つぐみだけである。
 そりゃ現実逃避もしたくなるわよ。
 先日の事件というのは、シャドールの幹部である園咲顕将を捕まえ、その後彼の策略にまんまと嵌まり逃がしたこと。
 そしてシャドールのコマンダー部隊に、大勢の一般人を拐われてしまったこと。
 そして園咲顕将を捕まえた時点で、上司である宗像副総監に報告していなかったこと。
 事後報告で一般市民が大勢誘拐されました、と言われれば誰だって怒るだろう。
 色々な事情があったとはいえ、結果的に報連相を怠ったことが裏目に出てしまったわけね。
 なるほど、報連相って仕事を失敗した時にこそ意味を持ってくるのね。
 初めて知ったわ。
「園咲を捕まえた時点で報告を受けていれば、誘拐の情報を警官隊と共有して包囲網を張れば、最悪の結果は避けれたかも知れないというのに」
「本当に申し訳ありませんでした」
 ボスは深々と頭を下げる。
 失敗した際、下手に言い訳をするよりも、素直に謝ることも大事である。
 人の怒りは、それ単体では長く持続しないものである。
 相手が平身低頭に徹すればなおのことだ。
 下手に言い訳をするということは、怒りの炎に薪をくべるようなものなのだから、
「ただでさえ君たちをを快く思わない連中もいるんだ。あまり彼らに付け入る隙を与えないようにしてくれよ。私の立場でも庇える限界があるのだから」
「はい、承知しています」
「拐われた人たちの捜索は、現在東京全署をあげて行っている。何か分かり次第連絡する」
「わかりました」
「誘拐された人々の奪回、必ず名誉挽回してくれ」
 この状況で許されるということは、宗像副総監にとって、ボスの信頼はかなり厚いのだろう。
 普通なら懲戒免職モノだと思うのだが。
 私としては、誰だか分からない人に着任されるよりも、今のままボスに頑張ってもらう方がありがたいわけだけど。
「ところで小鳥遊さん」
 ボスの叱責を一通り終えると、今度は私に話を振ってきた。
 そもそも、呼び出された面子が何で私とボスなのか、である。
 まあボスに関しては、特機の現場指揮を任されてるわけだから呼び出されるのは仕方ない。
 問題は、正規警察官である他の特機メンバーではなく、民間協力者の私が何故呼び出されたのか、である。
 大方の予想はついてるけど、あまり目をつけられたくないのよね。
「今回の報告によると、オーガインが暴走したそうだが、貴女はその可能性を認識していたのかね」
 やっぱり、予想通りオーガインの暴走の件ね。
 さて、どう答えたものかしら。
 私は特機のメンバーであると同時に、シャドールの構成員でもある。
 特にオーガインに関しては、博士こと園咲顕将と一緒に開発、改造したわけで、当然ながら怒りと憎しみにより起動するブラッドフォームが発動すると、暴走する可能性が高い事も知っている。
 ただし、ここで私がシャドールの構成員で、オーガインのデータ取りの為に潜入しているスパイだと明かすわけにもいかないわけで、素直には答えられない。
 表向きにはオーガインの改造には携わっていない事になってるわけで、ここは難を逃れるためにもノーと答えたいところね。
 しかし厄介なことに、かつてオーガインとオーガノイド・オベロンとの戦いにおいて、オベロンのブラッドフォームを目撃しているので、知らなかったと答えるわけにもいかないわけよ。
 まったく面倒な事に巻き込まれたものね。
「以前の戦いにおいて、彼と同型と思われる改造人間が赤い姿に変身し、大きく性能をアップさせたのは目撃していました。ただその時、敵の改造人間は暴走をしていなかったたため、仮にオーガインに同様のシステムが組み込まれていたとしても、暴走するとは思っていませんでした」
 知ってて何の対処も施さずに野放しにしていたとあっては、どんな処罰を受けるかわかったものじゃないわ。
 ここはあくまでも、知らぬ存ぜぬで通すしかないわね。
 汚職の言い逃れをする政治家ってこんな複雑な気分なのかしら。
 まったく遺憾だわ。
「ふむ、たしかにオーガインに関しては貴女が造ったものではない。知らない機能があったとしても仕方なし、か」
 私が提案した特機結成の後押しをしてくれただけあって、私の事を一応は信用してくれているみたいね。
 あまり深くは追求してこないのかしら。
 この一通りの問答も、特機を快く思っていない人たち用のパフォーマンスの一貫なのかもしれないわね。
 普通ならシャドールの人間が、自分達を追い詰めるための部隊を結成しようとは思わないものね。
 そういった意味では疑われにくいのかもしれない。
「では質問を変えよう。現状、オーガインについて分からない部分はどれくらいあるのかね」
 そう来たか。
 機械的な部分はほぼ全部把握は出来ている。
 ただ私はあくまでも機械工学の科学者なので、脳に関する部分はほとんど理解出来ていない。
 素直に答えていいものか。
 仮に素直に答えたとしたら、今後オーガインの封印が解かれなくなったりはしないだろうか。
 今回の暴走の原因となったブラッドフォーム。
 これは怒りと憎しみにより、脳に分泌されるドーパミンとノルアドレナリンが原因であるわけで、その脳科学部分が分からないと答えるということは、原因究明に関してお手上げと言っているようなものだ。
 原因が究明、改善される見込みが無いのなら、オーガインの封印は解かれないだろう。
 そうなってしまうと、オーガインのデータ取りを目的としている私としては大問題なのよね。
 それだけは絶対に阻止しなければならないわ。
「現状において九割は解明出来ています。残りの一割、脳科学に関しては研究を進めており、順次理解を深めています」
「ほほう、専門分野外に関しても研究してくれているとは、なかなか関心だな」
「ありがとうございます。今回の暴走に関しても、既に原因は突き止めていますので、予防策は可能だと判断します」
 私としては、この辺が落とし所だろう。
 これ以上手際が良すぎると、シャドールの一員だと見抜かれてしまうかもしれないし。
「了解した。情けない話だが、我々の技術力では、まだオーガインの全てを把握するレベルに至っていない。貴女に頼ってばかりで申し訳ないとは思っているのだよ」
「いえ、私も園咲顕将の技術に触れることが出来て、色々勉強になる部分もありますのでお気になさらずに」
「そう言ってもらえると、私としても助かるよ」
 果たしてどこまでが本心なんだか。
 相手は警視庁でもナンバー2に登り詰めた、海千山千の妖怪みたいな男だ。
 彼の言葉をそのまま鵜呑みにするほど、能天気にはいられないわ。
「そうそう、小鳥遊さんを呼び出したのは、これを貴女に渡しておこうと思ってだな」
 そう言って宗像さんは紙袋を差し出す。
「これは?」
「この前、君達が逮捕した岡田の研究資料だよ」
「そうですか」
 岡田純一郎、かつて特機の一員であり、警察の装備開発顧問であり、一時的にお世話になった私の恩師であり、シャドールの下部組織ブラック・サタデーの総帥だった男。
 特機の、オーガインの、いやオーガインと園咲顕将のタッグにより野望を打ち砕かれ、現在は都内の拘置所にて裁判を待っている状態らしい。
 その岡田純一郎の研究資料。
 今さらこんな物を貰って、何の役に立つのかしら。
 宗像さんには悪いけど、岡田純一郎って、園咲顕将は勿論、私と比べても数段落ちる科学者だったわけだけれど、そんな男の資料をどうしろと?
「捜査班が精査して、犯罪性は無いと判断した資料ばかりだから、持ち出しても問題ない」
 紙袋を受け取って、怪訝な顔をしていた私を気遣っての言葉だと思うんだけど、そうじゃないの。
 今さらこんなゴミを押し付けられても困るんだけどなあって顔なのよ。
「このまま我々が持っていても宝の持ち腐れになる可能性が高い。だから貴女に託す。今後の活動に活かしてくれたまえ」
 持って帰るの重そうだなー。
 コレ、外のゴミ捨て場に捨てて帰ったら怒られるんだろうなー。
「どうやら私の気遣いに感動して言葉も出ないようだな。気にしなくていい、私も同じ警察官として力になりたかっただけだから」
「あ、ありがとうございます」
 満足そうに笑う顔が腹立つわー。
 少しは空気読めっての。
「話は以上だ。そうそう、帰る前に一度、石動警部に会っていくといい。警護隊に話は通してある」
「ありがとうございます」
 私とボスは敬礼して退室した。
 私達に協力的なのはありがたいんだけど、なんだかどっと疲れたわ。


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「こちらになります」
 案内役の警官に連れてこられたのは警視庁の地下にある一室。
 ここにオーガインが封印されているらしいけど、具体的に封印ってどんな状況を指すのだろう?
 鉄格子となった扉の小窓から中を覗いてみると、そこには衝撃的な光景があった。
 目隠しに猿轡、全身ピッタリした革製の拘束具に包まれている。
 腕は胸の前で交差した状態で縫い付けられ、勿論袖口は閉じられている。
 両足も一つの袋状になっており、身動き一つとれない状態で、直立に固定されていた。
 これ、漫画とか映画で見たことあるわ。
「ちょっと、これじゃ石動君が凶悪犯罪者みたいじゃない。いくらなんでもやり過ぎよ。今すぐ拘束を解いてちょうだい!」
 あまりの光景にボスが案内役の警官に詰め寄る。
 私も生でこんな光景を目の当たりにするとは思わなかったわ。
「勘弁してください。もし彼が再び暴走すれば、我々では止める手立てが無いのですから」
 警官の言い分ももっともね。
 彼らからすれば、オーガインが何故暴走したのかさえ謎だったんだから。
 原因が不明だからこそ、念には念を入れた拘束になったってわけね。
 でもまあ、石動君が本気で暴れ出したら、こんな拘束具では何の足止めにもならないだろうけどね。
「あの、写メ撮っていいですか?」
「桜子ちゃん!?」
「珍しい光景だなーって」
 つい漏れ出た本音に、ボスも驚愕の表情で振りかえなかる。
「その顔、面白いからいただきますね」
 パシャリと一枚。
 ボスの驚いた、珍しい一枚が撮れたわね。
「ちょっと何撮ってるんですか」
 苛立ちを隠そうともせず、警官は注意してくる。
「すいません、珍しかったからつい」
「ついじゃありませんよ。ちゃんと消しておいてくださいよ」
「はーい、すみませんでした」
 私はシュンと俯き、反省してみせる。
 まあ、してみせるだけなんだけどね。
 こんな面白画像消すわけないでしょ。
 スマホを適当に操作して消す振りだけする。
「ところで彼と話は出来るんですか?」
「宗像副総監から許可をいただいてます」
 私の質問に、ボスがフォローを入れてくれる。
 結局のところ、警察も上司の言葉に弱いのだ。
「五分だけですよ」
 警官はそう言うと、独房の中に入り、石動君の猿轡をほどく。
 どうやら目隠しはそのままのようね。
「元気してた?」
「その声、桜子さんですか。元気に見えます?」
「減らず口を叩ける程度には元気なようね」
 石動君は特に取り乱した様子はなく、いたって冷静なように見えた。
 だがこの状況にストレスを感じない人間など居るはずがない。
 実際の心中は穏やかではないと思われる。
「アンタ、何でこうなったかわかってんの?」
「尋問を受けた刑事から聞きました。暴走したと」
「そうね」
 彼の声は暗い。
「まさか桜子さんや特機の仲間を攻撃したなんて」
「まあ暴走して自我が飛んでたんだから仕方ないんじゃない?」
「そんな軽いものでもないでしょう」
 やはり彼の中では、仲間を攻撃したことが引っ掛かっているようね。
 気持ちはわからないでもないけど、済んだことを悩んでも仕方ないのに。
「じゃあ、帰ってきたら復帰のお祝いしてあげるから、その支払いはアンタに任せるわ。それでチャラにしてあげる」
「あまり嬉しくない復帰祝いですね」
「私達にマイクロミサイル撃ったんだから、それくらい払って当然よ」
「え? 殴りかかったとかじゃないんですか? ミサイルとかよく生きてましたね」
「アンタが言うな」
 ホント、あの時はどうなることかと思ったわよ。
 ギャグパートじゃなかったら死んでたかもしれないんだからね。
「本当にすみませんでした」
「別に済んだことだし、もういいわよ」
 私は終わったことをいちいち後悔しない主義なのだ。
 だって後悔したところで事態が好転するわけでもないわけだし、そんな暇があるなら反省点を洗い出して、同じ過ちを犯さないように改善案を考えるわ。
 科学者にとって失敗はつきもの。
 その失敗から何を学びとり、次に活かすのかが大事なのよ。
 反省はしても、生産性が皆無な後悔なんていちいちやってられないわ。
「今はアンタが暴走した原因と、その解決策を探っているわ。私を信じて。私が必ずアンタをここから出してあげるから」
「今ほど桜子さんが味方で良かったと思ったことはありませんよ」
 私の任務はオーガインの戦闘データを集めること。
 こんなところで封印されてちゃ目的が果たせないもの。
「こほん、私も居ることを忘れないでよね」
「その声はボスですか?」
「ええ、そうよ。私たち特機はオーガインを有効的に運用するために作られた部隊よ。肝心要のオーガイン無しでは存在意義が無くなりかねないわ」
「重ね重ね申し訳ありません」
「だから早く帰ってこれるように、全力でサポートするから、少しだけ待っててちょうだい」
「わかりました」
 私とボスの言葉に石動君は安心したかのように微笑む。
 さて、彼をここから出すにはどうしたものか。
「とりあえず珍しい絵面だから、一枚写メ撮るわよ」
「え?」
 言うや否や、パシャリと一枚。
 私の言葉で困惑したせいか、その顔から笑顔は消えていた。
 まったく、写真に写るときは笑いなさいよね。
「貴様、何度言えばわかるんだ!」
 その行為を嗜めるかのように見張りの警官が声を荒げる。
「はーい、すみませんでした。写真は消しときまーす」
 再びスマホを適当に操作して、消す振りだけしてみせる。
 まったく、冗談の通じない人だこと。
 そんなガチガチの頭で人生楽しいのかしら。
「ええい、面会は終わりだ。これ以上余計な事をされてはたまったもんじゃない」
「うちの子がすみませんでした」
 ボスが代わりに謝ってくれた。
 さて、本気でどうしたものかしらね。

【その2へ続く】
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