painkiller。
洪水でも良かったかも知れない。
被爆かも知れない。
僕らは毎日、信じられない程の量の情報に晒されている。
それは、最初は僅かな量だった。
病院に行くまで、虫歯を堪えるために飲んだpainkiller。
娯楽という名のひと時の安らぎ。
娯楽が堕落して、僕らを転落させていく。
報道がワイドショーと大衆紙になったのはいつからだろう?
僕の見ている景色と、みんなの見ている景色が違い始めたのはいつからだろう?
それとも、そう思うのは僕だけなのだろうか?
仕事が辛い、生活が苦しい、そんな時に傷に塩を塗るような真実は見たくない。
『もっと、もっと嘘をください』
『自分が幸せなのだと信じられる嘘をください』
無限にお札が刷られるように、どんどん情報がメディアから、ネットから吐き出されてくる。
僕にはみんなの求めている情報が、娯楽が、painkillerに見える。
painkillerに麻痺した心は傷を癒そうとより多く、より甘美なpainkillerを求める。
虚構と現実が入れ替わる。
今、あなたが苦しんでいるのは何故ですか?
あなたがそれを欲する理由は何ですか?
生きているだけマシ、生きてるだけで儲けもの。
そんな言葉がまかり通るって悲しすぎるんじゃないですか?
人には幸せになる権利がある。
幸せは十人十色で、誰が何を望むか分からない。
でも、人には求める権利、叶えられて然るべき望みがある。
あなたが手にしたpainkillerはあなたに幸せをくれますか?
本当にあなたを救ってくれるものなのですか?
人間らしい生き方って、生きていればいいってモンなんですか?
苦労して得た、僅かな対価で得たものは何ですか?
またpainkillerに手を出すのですか?
多くの人が傷つき倒れ、命も失うこの国で。
生まれながらに希望から切り離されるこの国で。
僕が妄言を言っていると思う人も多い。
現在世界で最も人材派遣会社が多く、派遣会社で働く非正規雇用の人間が多い国。
就職できるだけ幸せと、働く労働時間が世界で最も長い国。
貧困家庭に育った子供の高度教育進学率が極めて低い国。
将来へのチケットだと手を出した奨学金が、未来を縛るほどの借金に変わる国。
子供たちに苦労をかけてはいけないと、高齢者の社会保障が削られる国。
高齢化社会だからと、一般市民への増税が容認される国。
富める者が栄えれば、貧しい者に恩恵があるというトリクルダウンという幻想が政策として行われる国。
増税すれば国から出て行ってしまうからと大企業や多国籍企業減税を行う国。
大企業の内部留保が毎年過去最大を更新し続ける金余り大国。
――そして、こんな事を言っていると友達を無くす国――
僕はおかしいのでしょうか?
沢山の情報で溢れて、濁流のようになった世の中で。
painkillerを打たない僕はポツンと立っている。
みんなの見ている景色と二重写しの景色を見つめながら。
無力感を感じながら。
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