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2017年02月24日23:30

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VXガスのこと

名前と、コリンエステラーゼの不可逆的阻害により毒性を発揮する有機リン系の神経ガスということくらいしか知らなかったので、ちょっと調べてみた。

VXガス、分子量311くらい、融点-3.9℃、沸点300℃、飽和蒸気圧0.09Pa(25℃)、半数致死量7μg/kg(マウス、経静脈投与)、大気中濃度では100μg・min/m^3。以上wikipedia調べ。

便所でうんこしながらiPhoneでした計算だから間違いがありそうで申し訳ないが、25℃で気液平衡に達したときの大気中濃度は11.7mg/m^3だろうかね。すると、飽和に達したら経皮吸収と併せ、一呼吸で死ぬ危険があるということかな?

尤も、室内とはいえある程度空気の出入りもあるだろう空港内だ、飽和に達することはまずあるまいし、上述の25℃で0.09Paという飽和蒸気圧の低さは水銀の1/3(水銀は0.3Pa。因みにサリンは3.87hPaなので桁がさらに3つ違う。水H2Oは3.2kPaなのでそのさらに1桁上)だ。毒性が極めて高いため微量のガスでも危険だが、しかし加熱でもしない限り非常に蒸発しにくい物質といえよう。毒ガスとはいうものの、ガスというよりは液体の毒薬というほうが適当かもしれない。

とすると、効果的に殺傷能力を発揮させるには常温気体では不向きで、沸点近くまで加熱して無理やり飛ばすか、経皮吸収されることと併せて液体を直接かけるなりエアロゾル化するなりするのが最も確実なのだろう。

ということを考えると、大量破壊兵器として使用するためにはそのための道具がいる。加熱して気化させるなり、ネブライザの要領で大量に噴霧するなりの。これらは手動で動かしては動かした本人も巻き込まれるため、基本的に時限ないし特定状況で作動する設置型の機械か、飛んで行った先で信管などにより作動する弾頭が向いているのだろう。

しかし密閉容器に入れれば意外と安全に持ち運べる上、脂溶性で経皮吸収されるので標的に直接かけるなり塗りたくるなりすれば標的選択的に殺傷することができよう。

ということを考えると、標的に直接接触できる術があれば暗殺用の毒として非常に適した性質を持つ有毒物質という訳だ。暗殺犯がこれを選んだのは至極合理的な判断だろう。

問題は、本件については実行犯は素手だったという情報と、手袋をしていたという情報とが錯綜していることだ。
上記の性質ゆえに、素手だと標的に塗りたくる前に実行犯の経皮吸収量が致死量を超えてしまう危険性があり、そこまで行かずとも何らかの中毒症状に悩まされる危険性が高い。ゆえに普通に考えたら素手で扱うことはありえまい。
そこから考えると実行犯は使い捨てだったという話が妥当性を帯びてくる訳だが、しかし捕まった実行犯が何の症状も訴えていないらしいことを考えると、やはりこの想定では説明しがたいものがある。
この辺りは手袋をしていたならば手袋の材質によっては矛盾なく説明できるので、手袋だろうと思うが、そうすると素手だという情報の尤度が気になるところ。

何にせよ捜査の進展を待つしかないが、VXと判明したのは疑問をひとつ氷解させるいいきっかけだった。性質を調べてなるほど暗殺向きだなと思った訳だしな。

うんこ終わり。



■正男氏遺体から猛毒VX検出 マレーシア警察
(朝日新聞デジタル - 02月24日 10:46)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=4447994
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