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2017年02月20日11:56

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● ◎ 物語を考えてみた ◎ (第1794回)

新しい物語です
暇なときにでも、読んで頂けると幸いです
面白かったら「イイネ」や「コメント」等をして頂けるとありがたいです(^_^)

※素人が書いてますので期待せずにお読みください
※抜けてる描写がありますが、各々が想像してください

タイトル「ほんの少しだけ…」

――

懐かしい日々というのは思い出せば沢山ある
それらのほとんどは楽しいモノばかりで、酒の席で友達と飲んでいたら、きっと酒の肴になっていることだろう
ただ、沢山の想い出の中には、たった1つだけ思い出したくない事がある
それは別に、思い出せば憂鬱な気持ちになるとかではなく、ただ恥ずかしい失恋という青春の1ページだから…

なんて、売れない詩人が語るような事を考えながら、俺は今、古さが目立つワンマン電車に乗っている
電車が向かう先は自分の故郷
俺は数十年ぶりの里帰りをしようとしている
俺の実家は今の時期、四方八方から蝉の鳴き声が響くような場所
昔はそこで、よく虫取をしていたものだ…
懐かしい日々を思い出そうとした時、到着を告げる車掌のアナウンスが流れる

『お、もうすぐサカガワ駅か…。皆、元気にしてるかな?』

俺は持ってきた荷物を手に持ち、電車が停車した後に扉を開けるボタンを押した

プシュー

懐かしい音だ…

少し笑みをこぼしながら、俺は駅に降りた

ゆっくりと小さくなる電車を見た後、俺は田んぼと木々が広がる懐かしい景色に安心感を覚えた

『帰ってきたなぁ…』

私は両端に草が生い茂る砂利道を歩き、自分の実家へ向かった

数十分後
俺は実家の玄関のドアを数回叩いて、それを開けた

『母さ〜ん』

そう何度か言うと、家の奥から母が出てきた
久し振りに見た母はシワが増え、明らかに老けていた

『うん? あら、お帰り』
『ただいま』
『アンタ、帰ってくるって連絡してたっけ?』
『電話したじゃん…』
『そうだっけ?』
『そうだよ!』
『ごめんごめん。忘れてたわ。それにしても、久し振りね。ご飯は食べたの?』
『食べないで来た』
『そうなの。じゃあ、素麺あるけど食べる?』
『素麺…』
『嫌?』
『別に。夏だなぁ〜と思っただけだよ』
『何言ってるのよ。ほら、居間に用意するから待ってて』
『ほ〜い』

俺は居間に荷物を置いて、座って素麺を待った
すると、そこに夏期休暇で家にいた父がやって来た
父は俺を見るなり少し驚く

『どうしてお前がいるんだ?』
『なんだよ。里帰りしちゃいけないのかよ』
『そんな事はないが…』

父は少し笑いながら俺の前に座る
少し父と雑談したあと、素麺と一緒に母も来て、俺たちは一緒に食事をしながら、談笑で久し振りの再会に花を咲かせた

その会話の途中で俺はある事を聞いた

『そういえば、ミユちゃんは元気なの?』

ミユちゃんとは俺の幼馴染みのことで、本名はマツモト ミユと言う

『元気にしてるわよ。アンタとは違ってちゃんとしてるわ』
『腹が立つ言い方だなぁ』
『で、ミユちゃんがどうしたのよ?』
『あ、いや…。挨拶した方が良いかなと思ったんよ』
『そうなの。なら、行くときなったら言ってちょうだい。ミユちゃんの奥さんに返さなきゃいけないものがあるから』
『おばさんに? 分かった』

数時間後…
準備を終えた俺はミユちゃんに会うために母から荷物を受け取り、ミユちゃんの家へ行ってインターホンを押した

『すみません』
『は〜い』

家の奥から、ミユちゃんのお母さんが出てきた

『どちら様でしょうか?』
『どうも、お久しぶりです。モリサキです』
『えっ?』

ミユちゃんのお母さんは『まさか?』という感じで、ジッと俺を見た
そして、俺が誰かが分かった瞬間、おばさんは興奮しながら様々なことを矢継ぎ早に尋ねてきた
ここを離れた暮らしとか
仕事の事とか等々…
俺は戸惑いながら質問に答えたあと、母から渡された荷物を渡して、あの事を聞いた

『そういえば、ミユちゃんっていますか?』
『ミユ? ミユは今、いないのよ。あ、何か用だった?』
『あ、いえ…。特に用という訳ではないですが…。いないのなら仕方ないですね。じゃあ、そろそろ帰りますので』
『あら、そう…』

?マークが浮かんだミユちゃんのお母さんを尻目に、俺は家を後にした

家を出ると、強い日差しが俺を襲う
光に目が慣れてくると目に入ったのは懐かしい景色
俺は思わず散歩したい気分になり、トボトボと子供の頃に通学していた道を進み始めた…

ゆっくりと流れる景色を楽しみながら、歩いていると田舎らしいボロボロのバス停が見えてきた
たくさん歩いて疲れた俺は休憩しようと、そこに置かれていたベンチに腰を下ろした

優しい風が吹く

ぼんやり周りを見渡し、慣れ親しんだ景色に想いをはせた

『変わらないなぁ…』

そんな事をつぶやくと、数時間に1本のバスがやって来た
バスが停車すると、そこから腕いっぱいに買い物袋を持った1人の女性が降りてくる
その女性は整った顔立ちに清楚な服装をしていて、思わず心が跳ねた

女性は俺に気づき目を合わせると、軽く会釈して俺の前から離れた
その去り際で女性から溢れた香水の香りが漂う
それは、その女性の雰囲気に合った、気持ちが優しくなるような感じの匂い
俺は思わず、その女性を呼び止めてしまう

『す、すみません!』
『はい?』
『あの…その…。荷物、大丈夫ですか?』
『え? まぁ、大丈夫ですよ』
『でも、腕がとても辛そうですけど…』
『えぇ…』
『俺、この辺りに住んでるんですけど…。荷物、持ちましょうか?』
『えっ? いや、本当に大丈夫ですよ…!?』
『ついでなんで、任してください』

女性は明らかに戸惑っていたが、彼女が優しかったのか、俺の押しが強かったのか…
彼女は荷物を渡してくれた
俺はそれを受け取り、心の中で感謝しながら、彼女の家へ一緒に向かった…

その目的地へ着くと俺は驚いた
なんと、到着した場所はなんて俺の実家だったのだ

俺が心の中で驚いてる間に彼女は玄関を開け、中へ入っていく
俺も後について中へ入った
すると、家の奥から俺の母が出てきて、俺を見るなりに母はこう言った

『あら。ちょうど、アンタを探しに行こうとしてたんだけど。ミユちゃんと一緒だったのね』
『えっ!?』

その母の言葉に俺は表情に出すほど驚き、女性は…もといミユちゃんも驚いた表情をして、互いが互いの顔を確認するように見つめあった
それはスゴく変な感じ
何故なら、今まで他人だったのに、急に幼馴染みにまで近づいたのだから

俺達は少し見つめあった後、母に促されて、誰もいない居間へ入り、荷物を置いた長机を挟んで互いに対面するように座った
そして、会話をと思ったが、座ったとたんに変な緊張感が俺を襲う
ミユちゃんに何を話せば良いのか、どう声を掛ければ良いのか分からない
すると、そんな俺を見てか、ミユちゃんの方から話しかけてきた

『久し振りだね』
『うん…』
『元気だった?』
『まぁね』
『……。そ、それにしても、まさかあんな形で再会なんて思わなかったよ…!』
『そう、だね…』
『……』
『……』

会話を続けたい
でも、言葉が頭に浮かばない…

すると、その時
この沈黙する雰囲気を破るようにインターホンが鳴った

『あっ! 来た!』

そうミユちゃんが言うと玄関から近所に住む子供や大人が大勢入ってきた
ミユちゃんが言うにはどうやら俺を帰ってくるというので歓迎会をしようとしてたようで、彼女が持ってたあの大量の荷物は歓迎会に並べる料理の材料らしい

人の多さに俺が驚いてる間、ぞろぞろと近所の人が家に入ってきて、皆が俺に声を掛けてくれる
都会の生活に慣れていた俺はその暖かさに心に来るものがあった

それから、ミユちゃんは台所で近所のお母さん達と料理を作り始め、その料理がテーブルに並ぶと同時に歓迎会が始まった

数時間後…
楽しい盛り上がりも佳境に入った時、母が俺にこんなことを言い出した

『そういえば、もうすぐサカガワ祭があるの知ってる?』
『え? もうそんな時期?』

サカガワ祭とは、この時期に行われる町で一番大きな神社に出店が並び、花火も打ち上げられるお祭りのこと
とは言っても、出店は数件で花火も都会とは比べられないほどショボいものだ

『お祭りか…。久々に行こうかな…』

そう俺がつぶやくと母が『なら、ミユちゃんと行っていきなさいよ』と言う
俺は思わず、ミユちゃんを見る
すると、ミユちゃんは『いいですよ』と一緒に行くことを了承してくれた
俺は、母の薦めでミユちゃんとこの町のお祭りに参加する事になった

正直、嬉しかった
だって、ミユちゃんと祭りに行くのは、あの時から何十年ぶりで、もう一度、自分の止まった時間を動かせると思ったから…


夕日が町を染める頃…
町で一番大きい神社に提灯に明かりが灯され、神社の中に作られた出店から美味しい香りを放ち始める
俺が待ち合わせ場所で待っていると、ミユちゃんは浴衣を着て来た
その姿に、あの時の感情が蘇る

『綺麗だね…』

何の照れもなく口にした俺の言葉に、ミユちゃんは恥ずかしいのを隠すように『行こう…!』と言って出店の中へ歩いていく
その時の彼女の背中は、子供の頃に見たあの景色と同じだった…

俺達は、お祭りの中を楽しい会話をしながら懐かしい時間を過ごす

祭りの終盤
花火が打ち上がるというアナウンスが境内に響いた
空を見ると、小さいが、綺麗な花火が夜空を色づけ始めた
その花火を見ていた時、ふいにミユちゃんの手に触れてしまう

『ご、ゴメン…!』
『……』

何故か動揺する俺に対し、ミユちゃんは何も言わずに空を見続ける
俺は優しく慎重にその手に触れると、ミユちゃんは俺の手を握り返してくれた

その瞬間、ほんの少しだけだが俺の中の時間が動いた気がした…

花火が全て打ち終わると一瞬だけ静寂が広がる
もう、お祭りが終わるのだ

『帰ろっか?』

俺の言葉に彼女は静かに頷いた…

その帰り道、俺たちはたわいのない会話で盛り上がりながら歩く
でも、俺はどこか上の空だった
何故なら、ずっと彼女に言いたいことがあったからだ

覚悟を決めた俺は心のモヤモヤを吐き出すようにミユちゃんに想いを伝えた
あの子供の時と同じ気持ちと言葉を使って…
でも、彼女からの返事は『ごめんなさい』だった

どうやら、ミユちゃんには付き合ってる人がいるらしく、俺の想いには応えられないだという

『そっか…ゴメンね。告白しちゃって…』

ミユちゃんは首を横に振る

『じゃあ、帰ろっか』

そう言って、俺はミユちゃんに手を差し出す
しかし、その手を彼女は握ってくれなかった

その意味は分かっている

俺は懐かしい帰り道をあの時とは違う彼女と一緒に帰った

同じ方向に足跡が続く
でも、それは同じ道じゃない

俺はミユちゃんよりも前に出て、彼女に背中を向けた
バレたくなかったのだ
泣いているのを…
見せたくなかったのだ
こんな姿を…

俺たちは黙ったまま歩く
明日になれば、きっと今日の出来事は無かった事になる

それでいい…
こんな情けない男の未練は消えた方が良いのだ

違う時間を動かすためにはね…

さて、お母さんには何て話すかな…

―――
どうも僕です( ̄∀ ̄)

今回は槇原敬之さんの「ほんの少しだけ…」という曲をヒントに書きました
なので、エンディング曲はその曲を聞いてもらえたら嬉しいです(^_^)

この話は大人の淡い恋を描いている感じではないのかなと思っています。
そんなつもりでは無かったが、昔の恋をいつまでも引きずり
彼女に会ったら、恋に近い想いがあふれ出してしまって
また、同じ辛さ失敗を経験してしまうなんて感じ。
自分もこんな恋があったら、同じような事を感じてしまうのかな
なんて思いましたね(^_^)

ただ、こんな話を書いていて、もっと雰囲気が伝わるような文章力があればなぁ
なんて事を諦めながら書きました(・ω・)

次回も読んで頂けたら幸いです(・・)

――


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