斜め左上方向にキレる。

シナリオのお仕事をしているとお芝居についても、
ある程度は勉強をしておかないといけない。

自分のお芝居の勉強、研究は中学の頃に自分で芝居をしていた経験を基に
様々な台本や小説を自分で演じ、物語の意図を引き出す芝居を構成する事だったり、
人気ではなく、自分の関心を持った役者の芝居を見たり、真似たりする事だったりする。
（化物語とか、エヴァンゲリオンシリーズの台本を
　夜中に独り芝居で通したりと異常な事をしたりもする…）

あくまで本職はシナリオなので、お客様に見せられるところまで高める必要はなく、
専門用語がわからないにしても、プレイヤー（役者）さんに芝居の意図を伝え、
自分であればこうするという
見本を見せられるところに達している必要があると考えている。
まあ、簡単に言うと「変なシナリオライター」って訳だ。

で、今回、何にキレたかというと、数多の声優志望を名乗るぺっぽこ共にだ。

7秒ぐらいの自己紹介の台詞。
それにどこかで借りて来たキャラはめ込んで、
甘ったるいだけで、コクも深みも味わいも無い芝居を垂れ流す…。
まあ、好きでやってるんだから良いのか…。良いのか？
イイワケあるかっ！
こっちはサンプルとして受け取って、仕事として聞いてるんだよっ！

あのな、自己紹介ってのは名前を言えばいいってもんじゃねぇ！
ちゃんとキャラ票を渡してるんだから、ちゃんと芝居を構成して来いっ！
「その芝居の意図はなんですか？」って質問に
「何が不満なんですか？」「一生懸命やりました」って意味が解らねぇんだよ！
どうして「その芝居をしたかの理由」を聞いてるんだっ！
理由を話してくれなきゃ、改善も解決も出来ねぇんだよ！

あのね、物まねで一番やっちゃいけないのは「名前を言う事」だ。
名前を言わなくても「あ、あの人だ」って解る所まで持って行って初めて
「物まね」って物は成立する。
別に、そこまでやれって言っている訳じゃない。
キャラとしての自己紹介なんだから「名前を言っていい」わけだ。
だったら、名前以外、記号的な芝居以外に盛り込むべきものがあるだろ！
声の調子とか、喋りの間とか、呼吸とか、
「かくして、こういう芝居になった」というプレイヤーなりの思慮とかだ！

いいかい？　お仕事なんだ。
身近な人や友人、同じ趣味の人に「上手い」って言ってもらうんじゃなくて
お金を払ってくれる人、払ってくれた人に「上手い」って感じてもらう仕事なんだよ。
お金ってのはね、その人の労働の対価。
その人が時間や行動、つまり人生の一部を削って得た尊い物なんだよ。
そんなお金を芸や技術で頂くのだから、聞いて下さる方に畏敬の念を持ちなさい。
まあ、それ故に自分の過去作を見ると、
恥ずかしさと情けなさにもがき苦しむわけだがｗ

それはさておき、とりあえずさ…芝居に意図が込められないのは
才能の有無の話でもあるのでダメなのはダメで仕方ないけど、
滑舌や発声は練習や訓練で改善できる物なので、
それをやっていない時点で話にならない。
運転できないタクシードライバーみたいなものだ。

誰かが声優に憧れるのは勝手だけれど、練習もしない、
芝居に思慮も込めないヤツのへっぽこな憧れは迷惑だ。巻き込まないでくれ。
憧れるならキッチリ憧れろ。どうしたら憧れに近づけるかを考え、
憧れに向かって必要な事を行い、思慮を巡らせろ。
個性云々は、基礎と常識っていう発射台が無いと飛び出さない物なんだぜ？
（たまに、発射台なしで飛ぶヤツがいるので勘違いを招くけど、
　そういう人は飛んだあと苦労する。積み重ねて来たヤツよりも数倍…。）

とりあえず、しばらく声優志望って人たちの
サンプルとか聞きたくないであります…。というか、一生聞きたくないでござる…。