mixiユーザー(id:4997632)

2017年02月12日23:51

384 view

中日新聞社説   蜜月の影響見定めねば 安倍・トランプ会談

 今日の中日新聞、社説の転載です。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2017021202000104.html







 日本にとって、米国との関係が重要であることは言うまでもない。しかし、あまりに傾倒しすぎると、外交の選択肢を狭める。適度な間合いも必要だ。


 トランプ米大統領による大統領選期間中の日本に関する発言内容を考えれば、トランプ氏就任後、初の日米首脳会談は、安倍晋三首相にとって、胸をなで下ろす会談だったと言えるのではないか。まずは日米安全保障体制である。

片務的との誤解を解く


 トランプ氏はかつて「日本が攻撃されたら米国は助けに行かなければならないが、米国が攻撃されても日本は助ける必要がない」「われわれは日本などを防衛しているが、彼らは(経費を)支払っていない」などと述べ、米軍撤退に言及したことがある。


 日米安保体制は米国だけが義務を負う「片務的」で、日本が「ただ乗り」しているとの主張だが、日本は条約で課せられた基地提供義務を誠実に果たし、条約の義務以上の在日米軍駐留経費を負担している。明らかな誤解である。


 今月三、四両日来日したマティス国防長官の発言により、新政権の誤解は解けているかにも見えたが、大統領本人がそうした認識を共有していることが重要だ。


 大統領は共同記者会見で「日本国民に米軍を受け入れていただき感謝します」と語った。大統領からアジア太平洋地域への米軍関与の継続と、日本の役割に対する理解が得られたことは意義がある。


 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)返還問題では、名護市辺野古での代替施設建設が「唯一の解決策」であることが、共同声明に明記された。残念でならない。


 沖縄県には在日米軍専用施設の約70%が集中する。同じ県内で基地を「たらい回し」にする「県内移設」では、県民の基地負担は抜本的には軽減されない。

尖閣適用が示す脆弱性


 中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発を考えれば、この地域における警察力としての米軍展開は当面、認めざるを得ないとしても、一地域に過重な基地負担を強いる安全保障体制はいびつだ。


 両首脳には「国外・県外移設」の検討を引き続き求めたい。


 共同声明によると、日米両首脳は沖縄県の尖閣諸島が、米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約第五条の対象だと確認した。


 日本が有効に支配し、施政権下に置く以上、尖閣諸島に武力攻撃があった場合、米軍が防衛義務を負うことは条約上、当然だ。


 尖閣諸島の領有権を主張し、公船などによる領海侵犯を繰り返す中国けん制の意図は理解するが、政権交代のたびに確認する必要があるのか。確認しなければ履行されない恐れがあるなら逆に条約の脆弱(ぜいじゃく)性を示すことにならないか。


 共同声明は「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」とも強調した。トランプ氏がかつて日本の負担増に言及したことを意識したのだろう。


 しかし、すでに五兆円を超えた防衛費のこれ以上の増額や、憲法違反と指摘される集団的自衛権の行使まで容認した「軍事」分野での役割拡大には同意できない。


 米国でどんな政権が誕生したとしても、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない、戦後日本が貫く平和主義を揺るがせてはならない。


 首相が共同会見で言及したように、地域紛争や難民、貧困、感染症など、世界はさまざまな課題に直面している。こうした課題の解決に向けた「非軍事」分野での貢献こそ日本の役割だ。


 これらは米国にとっても平和と安定を脅かしかねない深刻な課題である。「米国第一」を掲げて内向きになりつつある米国に、関心を失わないよう促し続けるのも、日本の役割ではないか。


 経済問題も首脳会談の大きな柱だった。トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を宣言した通商問題や、各国批判を強めている為替問題を協議するため麻生太郎副総理とペンス副大統領らによる枠組み新設で合意した。


 協議は担当閣僚らに委ねられ、トランプ氏の対日批判は鳴りを潜めたが、火種は残された形だ。

多角的、重層的関係こそ


 フロリダ州にあるトランプ氏の別荘やゴルフ場への招待、大統領専用機への同乗など、首相に対しては異例の厚遇ぶりである。


 移民政策をめぐって対立する欧州主要国と対峙(たいじ)するためには、日本を味方に付けた方が得策との判断があるのかもしれない。


 首脳同士の個人的な信頼関係構築が重要だとしても、トランプ氏との蜜月関係が日本外交全体にどういう影響があるのかも見定めなければなるまい。


 過度に米国に傾斜せず、首脳同士だけではない、多角的で重層的な日米関係構築こそ必要である。







1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年02月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728