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2017年02月01日19:53

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1月の読書記録。

例年1月はなかなか休日や遅出の朝、なかなか起きられなかったりして、読書が滞るというのが定石だったのだけれど、今年は上旬高山宏の『新人文感覚2』にかなりてこずらされたわりには、いつになく読書が進んだ。一つは中旬以降は主に文庫新書を中心に読んでいたというのがあるけど。それから、今回は光文社古典新訳文庫を読んでいた。後、ナイスが90を超えたのがうれしい。

2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:6260ページ
ナイス数:93ナイス

https://elk.bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■ドゥルーズの哲学 生命・自然・未来のために (講談社学術文庫)
平明な文体で思いのほかさくさく読み進めることができたが、後書きにもあるように、著者がもともと理系志向だったため、特に前半は理数系の話が多く、理解の程はかなりあやふや。それでも、現在常識とされている多くのことについて、激しい憤りを覚えているということは理解できたか。その理数系のトピックの中でもとりわけ興味深かったのは、πについての論議。数学音痴の僕でも、このπの存在は以前から気になっていたので。それと印象的だったのが、著者が障害や、病人、ケアについて度々言及していること。この傾向を発展させると面白いかも。
読了日:01月31日 著者:小泉 義之
https://elk.bookmeter.com/books/9869852

■インヴェンション (La science sauvage de poche)
ほんの二百頁程の本にこれでもか、というくらいに出てくる夥しいまでの文学者、芸術家その他の数々にまず圧倒される。そしてそれらの人々について縦横無尽に語りまくる、知の達人二人に感服。この二人が提示する、今後のアカデミズムの課題を目にすると、そのテーマの重さと今後の可能性、そして若い世代に課せられた使命の大きさを感じざるを得ない。それに、その二人の眼鏡にかなう学生がそれなりにいるという事実に希望を感じる。後、この二人のバックにいたともいえる亡き山口昌男の存在が何とも印象的。ああいう人間関係は過去のものだろう。
読了日:01月31日 著者:高山 宏,中沢 新一
https://elk.bookmeter.com/books/8015733

■マウントドレイゴ卿/パーティの前に (光文社古典新訳文庫)
表紙の紹介分にもあるように、まさに珠玉とも言うべき作品が収められていて、殆ど甲乙つけがたい程。訳文も平明で読みやすい。個人的にとりわけ印象的だったのは、「パーティの前に」だったか。楽しい一日になるはずの一家に明かされる凄惨な事実。しかも、更なる傷ましい真相が隠されていたというオチには、驚愕の念さえ覚えた。後「雨」はその昔別の訳で読んだのだけれど、おぼろげな記憶に残っていたものとはかなり違っていたので、これにもちとびっくり。それから、解説で言及されているモームの同性愛の事実とそれを鍵にした読解が興味深い。
読了日:01月30日 著者:ウィリアム・サマセット モーム
https://elk.bookmeter.com/books/3070357

■木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)
以前読んだブラウン神父シリーズでは、主人公のユーモラスなキャラクターとは裏腹にどこか陰湿で暗いイメージを感じたのだけれど、本書では訳文のせいか、乾いた明るさを感じたのが何とも不思議。それと、大げさでかつ人を食ったような展開に、モンティ・パイソンに通じるものを感じた。読み進むにつれて、「これはもしかして…」と思った通りの展開にほぼなったのだけれど、最後の最後で『猿の惑星』的なオチに収束したのは、賛否両論あるだろうけれど、僕的にはあり。本書について突っ込んだことを語ろうとしたら、どうしてもネタバレになる…
読了日:01月28日 著者:チェスタトン
https://elk.bookmeter.com/books/10526

■生きること 信じること
これまで読んだアランの著作と同じく、平明な文体にもかかわらず、その内容を理解することは途轍もなく難しい。抽象的な議論でも、具体例を用いて、かなり噛み砕いて説明しているようでも、特に断章の最終部のほうで、文章の前後に飛躍のようなものがあり、そこを深読みすることをどうしても強いられる。とにかくこれは、その文体につられて、さっと読み通して済まされるような類のものではない。常に手元に置き、折に触れ気になる箇所を繙くことによって、初めて自分のものになるというタイプの本だと思う。それはそうと、訳注が一切ないのが残念。
読了日:01月27日 著者:アラン
https://elk.bookmeter.com/books/9760521

■フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)
何となし際物的なイメージを長らく抱いていたこの作品。廣井由美子の著作でその概要を知り、手に取ってみたが、思った以上に引き込まれて、ほぼ一気に読了。理知的な反面、エゴイスティックで、激しやすいフランケンシュタインに対し、怪物のほうが冷静で実は結構寛容なのが印象的。前者が良かれと思ってやったことが、ことごとく裏目に出ているということに当の本人が全く気付いていないというのが、読んでいて何とももどかしい。後、話の要所要所に雷が描かれているのも、気にかかる。本書での雷の意味を読み解いた評論があったら読んでみたい。
読了日:01月25日 著者:メアリー シェリー
https://elk.bookmeter.com/books/660058

■寛容論 (古典新訳文庫)
解説にもあるとおり、ヘイト・スピーチを始めとする不寛容な言論が跋扈する昨今だからこそ読まれるべき一冊。確かに歴史的事実や聖書の内容を自分の主張に引き寄せて語っているのでは?あるいは、あまり理性の力を過信しているのでは?と思わせる箇所は少なくない。だが、いかに理性の力があてにならない脆弱なものだとしても、あえてそれを信じないと何も変わらないのではないか?それはまさに本書の背景となったジャン・カラスの刑死とその顛末に如実に表れている気がする。一カトリック信者としても、この傷ましい事件の概要を重く受け止めたい。
読了日:01月23日 著者:ヴォルテール
https://elk.bookmeter.com/books/10996618

■ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット)
本作品を実際に日本語で舞台化したらどうなるだろう?本書を詠み進めながら、幾度となくそんな問いが頭に浮かんだ。難解な内容ではあるが、戯曲ということで、意外な程さくさく読み進めることができた。その一方でその不可解な内容は読了後も読者の頭からなかなか離れようとしない。更に面食らったのが、訳注で明らかになる、セリフの至る所に潜まされたメタファー、特に性及び糞尿に関するそれ。ここまで一筋縄ではいかない戯曲とはまさに空前絶後。また、見も知らぬゴドーを愚直に待ち続ける主人公二人はカフカの「掟の門」の主人公を想起させる。
読了日:01月21日 著者:サミュエル ベケット
https://elk.bookmeter.com/books/516563

■文化人類学入門 (中公新書 (560))
佐藤優が推薦していたので読んでみたが、期待以上の出来。文化人類学の定義からその成り立ち、そしてその概要と手際よくコンパクトにまとめてある。本書を繙くことによって多くの読者は、これまで自明だと思っていた自分たちの文化や常識が、決してそうではないということを目の当たりにして、戸惑いを覚えるに違いない。そして、我々がいかに様々な偏見にとらわれやすいか、また逆に言えば偏見に囚われない公平な見方の難しさ…というよりむしろその不可能性を認識するに違いない。それから、本書の記述も暫定的なものであることも認識すべき。
読了日:01月20日 著者:祖父江 孝男
https://elk.bookmeter.com/books/502210

■偉業 (光文社古典新訳文庫)
一見、平明な文体で読みやすい文章だが(原文はかなり読みにくとのことだが)、読み進めていくうちに「あれ!?」と思ったことは数知れず。解説にもあるように、著者ならではの仕掛けなのか、それとも単純にこちらの読みが浅かったのか?とにかく煙に巻かれたようなきになることしきり。また、著者の自伝的要素があるということで、成長物語的な趣も感じられるが、やはりそこは一筋縄ではいかないのが、著者ならでは。教養も財産もスポーツの資質も男性的魅力もあるのに、どこか煮え切らない主人公マルティンは結局成長できずに消えてしまった感が…
読了日:01月20日 著者:ウラジーミル ナボコフ
https://elk.bookmeter.com/books/11199264

■読書と日本人 (岩波新書)
我々日本人の読書の在り方、ひいては人としての在り方はどう変遷してきたか?そのテーマを通史的に取り組んだのは、意外にも本書が初めてだという。平安時代から平成、音読から黙読、紙の本から電子辞書…幾多の変遷を経ながらも、今日まで続いている読書の歴史。確かに読書人口は減り、かつてほど教養が尊ばれなくなった昨今でも、古典の新訳が文庫で出るなど、新たな可能性の萌芽が伺えることに一抹の安堵感を覚える。また、平安期から日本には一般民衆にも高等な教養に触れる様々な試みがなされていたという事実が非常に興味深いものに思えた。
読了日:01月17日 著者:津野 海太郎
https://elk.bookmeter.com/books/11189921

■夏目漱石 (岩波新書)
岩波新書から出る漱石関連の書ってこれで何冊目になるんだろう?まあ、それだけ漱石関連の本は出せば売れるということか?それはともかくとして、評伝としてかなりコンパクトにまとまっていて、新味はあまりなかったが概ね興味深く読めたか。個人的にはやはり複雑な生い立ち、かつての義父母、及び実母との関係に興味が行く。ただ、別の書では母から愛されなかったと書かれていたが、本書ではそうした面には触れられていないのが気になる。それから、致命的な欠陥と言えるのは、参考文献表がないこと。こういう評伝には必携だと思うのだけれど…
読了日:01月17日 著者:十川 信介
https://elk.bookmeter.com/books/11227676

■神と私 人生の真実を求めて (朝日文庫)
今、いわゆる平信徒の立場からキリスト教について、これだけ深くしかも平易に語れる人がいるだろうか?というより、かつては一つの流れとしたあった、キリスト教文学というのは、最早過去のものとなったのか?そんなことを思わされた。先に読んだ『ぼくは〜』と同じく、いまだキリスト教後進国において、キリスト教を信仰するとは、いかなることか?ということについて深い知見が散りばめられている。かつて、著者独自のキリスト教観は一部で非難されたようだが、日本におけるキリスト教受容について考える際、今でも大いに示唆的であると言える。
読了日:01月16日 著者:遠藤 周作
https://elk.bookmeter.com/books/372009

■ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか (光文社古典新訳文庫)
キリスト教後進国において、キリスト教を信じるということはどういうことか?百年以上前の作品であるにもかかわらず、本書が投げかける問題は、宗派を問わず、全日本人クリスチャンが受け止めるべきものである。とりわけ、興味深く読めたのは、キリスト教国アメリカに渡った著者が目にした、非キリスト教的世界の実情と、それに対する批評。また、そこで露になる西洋と東洋、キリスト教と異教との埋めがたい溝。巻末での橋爪大三郎による解説は、著者に対してかなり辛辣なのが気になるが、個人的には著者のひたむきな思いを素直に受け止めたい。
読了日:01月15日 著者:内村 鑑三
https://elk.bookmeter.com/books/9565195

■道徳と宗教の二つの源泉 (ちくま学芸文庫)
かねてから読もうと思いながら後回しになっていたベルグソン四大主著の最後の書。最晩年に書かれたということだけあって、確かに集大成的な趣を感じるが、正直殆ど理解できなかった。ただ、本書の主要概念である「生の躍動」には何とも言えず魅力を覚えたが。後、先に読んだ「新人文感覚」でフランスの哲学書はただの哲学書に止まらない文学書の要素もあるみたいなことが述べられていたが、そのことは実感できた気がする。それから哲学に止まらず宗教や文化人類学にまで及ぶその内容にドイツ観念論との違いを感じた。いずれまた読み返したい一冊。
読了日:01月13日 著者:アンリ ベルクソン
https://elk.bookmeter.com/books/9781257

■フランス文学は役に立つ! ―『赤と黒』から『異邦人』まで
「役に立つ」なんてタイトルにあると、つい斎藤某を連想して、ちょっと眉に唾を付けたくなるが、本書はその類の物とはやや趣を異にしている。それは今すぐ役に立つというのではなく、人生をよりよく知るのに役に立つと言い換えてもいいだろう。一作品につき十頁程でその作品の内容と解説をシンプルにまとめている。既読の本はもちろん、未読の本の紹介もかなり興味深く読めた。とりわけ男女間の問題や恋愛観に現代に通じるものがあるというくだりが面白い。ただ、フランス語の原文を掲載するのだったら、文法の解説もつけて欲しかったのだが…
読了日:01月13日 著者:鹿島 茂
https://elk.bookmeter.com/books/11096052

■新人文感覚2 雷神の撥 (新人文感覚 2)
前巻「風神の袋」と同様ヴォリューム、内容共にその読み応えに圧倒されることしきり。とにかく著者の膨大な知識量、関心の広さ、鋭い切り口と、時に攻撃的にもなる軽妙で小気味よい語り口に惹かれて、どうにかこの千頁近くある大作を読了した次第。上下巻読了しても、著者が信奉するマニエリスムがいかなるものは?ということは結局今一理解できなかったけど(笑)。後、個人的に印象的だったのは、上巻でも時折触れられていた、著者の家庭の事情。世間的にはダメンズ的な行為でしかないけれど、そこに著者なりの倫理観と拘りが伺える気がした。
読了日:01月10日 著者:高山 宏
https://elk.bookmeter.com/books/4338496

■ユダヤ人の生活―マゾッホ短編小説集
解説にもある通り、マゾッホに対する先入観を抱いて読むと肩透かしを食らうはず。それと同時に「マゾッホってユダヤ系だったの?」と思うくらいにユダヤ人及び、その文化や歴史への愛が感じられる。特に巻末のエッセイにおけるユダヤ賛美と擁護はちょっと奇異にさえ思えるもので、著者にここまでのことを書かせるものは一体何なのだろう?という気になる。聖書に関する知識がないと理解しづらい箇所が少なくないが、ストーリーはどれも単純。しかし、微妙に嗜虐趣味や女性崇拝的な要素が垣間見られるのが、著者の真骨頂と言えるかもしれない。
読了日:01月01日 著者:L・v・ザッハー=マゾッホ
https://elk.bookmeter.com/books/188612


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