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2017年01月23日00:08

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「ミス・サイゴン」(愛知県芸術劇場)1/20

一度見たかったけれどなかなか機会がなくて今回初観劇。曲はいくつか単独で耳にしたこともあるし、大雑把な筋は知っていたけれど、全体をちゃんと知ったのは初めて。背景がベトナム戦争だから、わかってたことだけど、テーマはひたすら重たかったです。でも、その重たいテーマを彩る歌は、壮大で美しかったです。戦争という極限状態の中で必死で生きている登場人物たちの生きる気持ちそのものみたいで。
最初から多少自覚はあったけれど、私のベトナム戦争の知識レベルって全然たいしたことないので、歴史的背景にはぴんとこないところも多々あったのも正直なところでしたが、国とか人種とかそのへんのところが物語のキーになっているとは思ったけれど、やっぱり感覚的には理解しきれないところもあって、そういうところは難しいな、と思いました。とりあえず、ベトナムの少女キムと、アメリカ兵のクリスの恋が幸せな結末になるとは到底思えないところはまだ分かりやすいところで、エンジニアが混血で蔑まれているのが劇中であったけれど彼のそんな背景にまで気持ちをめぐらせるところまではたどりつけていないので、このエンジニアという人物がいまいちつかみきれなかったりします。自分で生い立ちを語り始めるのはほぼラストの「アメリカン・ドリーム」ってところがまた・・・。
それから、お国柄というか、アメリカらしいなあと思った、クリスとジョン。ジョンメインで歌う「ブイドイ」って、曲は聴いたことあったけれど、そういう内容だったというのは初めて知りました。「ゴミクズ」と言いながらその同じ口が「みんな我らの子」と歌うのが、悪気も何もなくて普通に同居しているところとか、良いとか悪いとかではなくて、いかにもその国らしいというか、そんな感じがしました。それと同じ匂いを感じたのは、クリスとエレンの最後のキムに対する結論。純粋に彼らのため、と思っているがゆえに、なんとなく、そこに傲慢さというか、そんなものを感じました。とはいえ、意外とそこに嫌悪感とかはなくて、まあ、そうなるよね・・・と妙に納得してしまうものもあるのはなんだろうなあ。いや、見る前には、クリスの馬鹿!って気持ちになるかと思ってたけど、意外とそうならなかった(笑)。クリスがキムを愛したのは本当だと思うし、アメリカへ連れて行きたいと思っていたのも本心だと思うし、エレンと結婚してたからって裏切ったとかそんな風には思わなかったし、クリスって常に純粋に生きてるんだろうなあ、って思ったので、戦争の中では生きづらい人なんだろうなあ。

キャストに関しては、絶対この人!っていうのもなくて、一回見ておこうくらいな感じだったので、とりあえず、という感じ。市村さんが今回をもってエンジニア卒業ってことなので、市村さん回は激戦必至だったので回避(笑)。そもそも、市村さん回だと大千秋楽になってしまうので、それはそれで別の盛り上がりがあって、初めて見る身としてはその独特な空気についていけなさそうなところもあったし。近頃いろんな作品が、全国まわってきたラストに名古屋!ってパターンが多くて、いや、私、千秋楽じゃなくて普通に見たいだけなんですけど・・・っていう無駄な激戦区がちょっと・・・。っていうか、こういう大作は名古屋なんかで終わってないで、最後に東京帰って凱旋公演やればいいのに。まあ、色々事情もあるんでしょうけども。

エンジニア:駒田一さん。前にも何度かミュージカルで見たことはあるし、器用な人なんだな、という印象があるのですが、エンジニアの小物感(笑)はなんだろう・・・。したたかに生きてるように見えるけれどとても大成するようには見えない人物像ってどこから来るのかなあ。この人、本当にアメリカに渡れたとしても成功するイメージがまったく見えないんですけど。

キム:昆夏美さん。東京からずっと全国公演を休演されていて、最後の名古屋だけ、たった2公演だけ、戻ってくることができた人でした。そのわずかな公演に全力で向かっている気持ちがたぶるのか、全力で生き抜こうとしているキムの強さが印象的でした。小柄なからだで全力で立ち向かっているようなまっすぐさは、母となってからも最後まで少女のようにも見えました。休演のブランクを感じさせない歌声の迫力もありました。「命をあげよう」は心を揺さぶられますね。

クリス:小野田龍之介くん。たぶん前にも見たことあるはずなんですが、過去の印象がまったくなくて(すいません・・・)、でも、「神よ何故」の歌声から、あっいいな・・・って思いました。体格ががっしりしていて、ポロシャツなんか、結構ぱっつんぱっつんだったのがすっごい気になったんですけど(笑)。それはともかく、小柄な昆キムと並ぶと体格差が際立って、なんだか結構良い感じでした。がたいが良いけど純粋な人、って、見てていらっとすることもあるけれど、なんだかいとおしくなっちゃうところもあるんですよね。


翌日の大千秋楽を前に、この公演で千秋楽を迎えるキャストも多数。カーテンコールで、ひとりずつご挨拶がありましたが、昆さんに誰よりも長くあたたかい拍手が客席から送られていたのが印象的。おかえりー!って気持ちですね。
駒田さんは名古屋ご出身なので、生まれた病院の名前まで言ってました(笑)。
最後に、「アメリカン・ドリーム」をみんなで歌って盛り上がりました。物語は壮絶で悲劇的なラストですが、こうして最後にみんなで歌って終われるだけで、重苦しい気持ちのまま帰らなくて良いのは救いかな、と思います。
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