というわけで高校時代から読んでいたハリーポッター日本語版をようやく最終巻まで読み切りました。今更ですが念のためこれから読む人がいればこの先はネタバレなのでご注意を。
最後まで読んだ感想としては物語自体は良くできていて面白かったです。
ただ、２点ほど自分が感じた問題点について。
まず１点目は児童文学としては問題だらけだと思いました、穢れた血などの差別用語に近い言葉やいじめを彷彿とさせる描写が多く登場することです。また、後半は不死鳥の騎士団VSヴォルデモート一味との戦争になってこれまでのワクワク感が無くなり次々と人が死んでいく恐怖しか感じられなくなり児童文学としては
２点目は多くの人が指摘している通り日本語訳の酷さです。高校の時に読んでいたが訳の分からない慣用表現や日本語になっていないような文章で一時は途中で読む気が無くなった。結局結末が気になったので今になって大人買いという形で無理矢理読み切りましたが当時のバカみたいに高い価格で買わなくて良かったと思いましたw
訳についてはこの後の各巻のまとめでも触れますがこの翻訳者は英語はもちろん日本語ですらまともな教育を受けていないんじゃないのかと思えるレベルでした。
英語に関しては英検２級しか持っていないザコの自分でも間違いを指摘できるほどの酷さ。例えば「banished giants」という言葉があり「追放された巨人たち」という意味ですがこれをまさかの「消え去った巨人たち」と誤訳ww
そりゃbanishじゃなくてvanishだろ、FF６じゃないんだから・・・。こんな初歩的な間違いをしたまま出版するとかチェックしていないというのは本当なのでしょうね。
ちなみに私は第三巻だけは高三の誕生日プレゼントに英語版を貰ったので日本語版と両方持っていて当時読み比べてみましたがやっぱり訳がおかしいと思うところが何か所もあった。
日本語に関しても主語と述語が一致していない、なぜかよく使いたがる慣用表現は誤用ばかり。特に慣用表現が間違いだらけで魔法で脅すようなことを言って「殺し文句を言ってやった」とか思わず笑ってしまうような使い方。
特に最終巻が酷くて最終決戦が誤訳だらけで緊迫したシーンなのに笑ったりズッコケそうになったりしてしまったw
人によってはあまりの日本語の酷さに第一巻の第一章の冒頭を少し読んだだけで読むのを止めた人までいるみたいですがその気持ちはよく分かります。
では各巻ごとのまとめを。
�‖茖唄� 賢者の石
記念すべき第一巻。ハリーの誕生から復活しようとしているヴォルデモートとの最初の戦いまでが描かれています。最初から「おかげさまで」等の日本語訳に違和感を感じます。
ホグワーツに入るまでの話は完全に児童虐待であり読むのが辛くなりましたがそこからの脱出と学校生活。ハリーは主人公にしては仕返しをしたり暴言を吐いたり校則違反だらけとかなり素行が悪い印象だったが実際はそこまで酷くないようでこれも誤訳が原因と言われていますね。
あとやたら食べ物の話が出てくるあたりがやっぱり児童文学だなと思いました、当時はこれがきっかけでイギリスの食べ物にも興味を持っていた。
数々の校則を破りながらも２人の親友の協力で別の人物に憑りついたヴォルデモートを何とか退けることに成功して終了。
この巻の面白い誤訳はイギリスで生まれてブラジルには行ったことがないブラジル産ニシキヘビ、ブーンと吠える犬、やあこんにちはと挨拶する意地悪教授のスネイプ、「ダドリーは〜」の主語に対して述語が「〜という事件も終わっていた」。
そして最大の誤訳があの有名な論理パズル。毒入り瓶が３つ、イラクサ酒の瓶が２つ、先に進む薬の瓶が１つ、後ろに戻る薬の瓶が１つあってヒントからどの瓶に何が入っているのかを考えるのだが第一のヒントで「毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左」とある。これを左隣と解釈した場合、イラクサ酒の数が足りずに矛盾が生じるし隣ではなく左方向にあれば良いと解釈したとしても今度は他のヒントとの矛盾が生じる。ちなみにこのパズルは正しく翻訳しても先に進む薬は判別できないため「翻訳が酷いのが原因でパズルが解けない」という考えは間違っている。後ろに戻る薬は判別可能でその薬の場所は作中で答えを教えてくれるため原作が間違っているわけでもなく意図的に全部は分からないようにしている模様。
あとスネイプの一人称が「吾輩」であることも違和感という声が多いが私はそれほど気になりませんでした、何となく魔法薬というイメージにはあってる気がして。
➁第２巻 秘密の部屋
ホグワーツでの２年目と幼少時代のヴォルデモートの意思が宿った日記帳が呼び寄せたバジリスクとの戦い。最初は虐待された家からの脱出と初めて行く魔法使いの友人の家などワクワクする展開。しかし、後半はホグワーツの生徒が次々と謎の生き物に襲われてハリーは周りから犯人扱いされるという重苦しい展開。
最後はダンブルドアの助けで日記帳を破壊して終了、実はこの日記帳は最終巻にも関わる重要なアイテムだった。
この巻に関してはそれほど目立った誤訳は無い、ズームアウトして消えるビーブズくらいかw
あと厳密には誤訳ではないが意味が伝わらない部分が１箇所。日本でいう人にものを頼むときに「お願いします、は？」と子供を躾けるのと同じ表現がイギリスにあるのだがこの時に使われているpleaseを「どうぞ」と訳しているため全く意味が伝わらないww
➂第３巻 アズカバンの囚人
ホグワーツ３年目、ハリーの父親と親しかった人物たちとの話で今回はヴォルデモートと直接の戦いは無し。そのせいかあまり印象に残っていない巻だがハリーの唯一の身内と呼べるシリウスとの再会、恩師ルーピンとの出会いと守護霊の呪文、裏切者ワームテールが重要な人物。ダンブルドア以外に反対されながらもワームテールを逃がすという判断を下したハリーだがこれが７巻に影響する。
この巻も誤訳は少ないが致命的なのが１つ、それはハリーの後見人であるシリウスを名付け親と訳していること。ハリーの名前は両親が付けたはずだしわざわざ名付け親のシリウスと何度も呼ぶのは違和感がある。この巻だけではまだ違和感ぐらいで済むが最終巻で完全に誤訳ということが証明されてしまったww
詳細は７巻の感想で。
�ぢ茖幹� 炎のゴブレット
この巻から上下巻に分かれます。ホグワーツ４年目、そして遂にヴォルデモートが復活してしまう。クィディッチのワールドカップや魔法学校対抗競技大会の裏で暗躍するデスイーターたちとの戦いで最終的にはハリーの体の一部を使ってヴォルデモート復活。杖の不思議な現象でハリーは何とか生還するが一緒にヴォルデモート復活の儀式の間に飛ばされたセドリックがヴォルデモートに殺害されてしまう。
さて、この巻は前述のbanishの誤訳に加えて最大の違和感というかもう誤訳と言っていいレベルのものが。復活した闇の帝王ヴォルデモートの１人称がまさかの「俺様」ww。
児童向けにしたのかなとも思ったがさすがにジャイアンじゃあるまいし怖さがあまり出ないですね。素直に「我」で良かったのではと思わざるを得ない。
しかも決闘の前に「互いにお辞儀するのだ」とかお辞儀はないだろ・・・。
➄第５巻 不死鳥の騎士団
ホグワーツ５年目、復活したヴォルデモート＋デスイーターと不死鳥の騎士団との戦いが始まる。最終的にはデスイーターに半分乗っ取られているような魔法省の神秘部で予言を巡っての戦いとなるが予言は誰にも見られずに消滅してしまう。ダンブルドアは内容を知っていてハリーに知らせたところで終了。
シリウスが死亡するなどハリーにとっては辛いことが続く。予言のもう１人の男の子であるネビルがこの巻から見違えるように成長する。
誤訳は父さんの家でキャンプする、文机から飛び出す妖怪など。
あとこの巻ではダンブルドア軍団を結成してハリーが色々な呪文をメンバーに教えるのだがその中で頻繁に使われる「「ステューピファイ!麻痺せよ！」について。確かにstupefyは麻痺させるという意味だがこの呪文の説明を失神呪文としているため麻痺せよというのはおかしい。麻痺せよと訳すなら麻痺呪文だし日本のRPGとかを例にとると麻痺はparalyzeの方が馴染みがある。実際にこの呪文を受けると一瞬気絶したような状態になるので失神呪文で気絶せよとか失神せよで良かったはず。
あとこの巻から登場するルーナというキャラクターについて。変人だが賢いという設定なのだがこの翻訳者は彼女のことが嫌いなのかプリパラのひびき様がそれこそ失神しそうな妙な語尾がついているww
この語尾のせいで彼女の印象が悪いという人が自分も含めて多い、特に７巻で地下牢に閉じ込められるという緊迫した状況でこの語尾を連発するのだからたまったもんじゃない。
ホントに謎の語尾なんですけど・・・。
�β茖挟� 謎のプリンス
ホグワーツ６年目、スネイプの秘密、分霊箱、ダンブルドアの死という重要な巻。
第７巻への伏線も多く、ダンブルドアと行った洞窟で起きたことやダンブルドアがスネイプに殺害された場面はこの巻だけでは理解できないようになっている。
ヴォルデモートが唯一恐れた人物が亡くなったのは大打撃、でも最初からこの人は死ぬような気がしていました・・・。
この巻は誤訳は少ないが分かりにくいのが１点。
「はい」「はい、先生」「僕に先生なんて敬語は必要ありません、先生」とハリーがスネイプに怒られたシーンの会話でこれだけだと全部ハリーが言っているようで意味が分からなかった。
２つ目はスネイプの台詞でハリーの「はい」に対してスネイプがそうじゃない、先生を付けろという意味で「はい、先生」と返してそれにハリーがブラックユーモアで返すというシーンだった。まあこの後は勿論「グリフィンドール減点！」となるわけですがw
��第７巻 死の秘宝
最終巻、今回はホグワーツには通わずロン、ハーマイオニーと共に分霊箱破壊の旅へ。
前半はひたすら逃亡生活を続け、後半はホグワーツに乗り込んで最終決戦。
今までの伏線を回収し、分霊箱をすべて破壊してから死ぬ直前にスネイプの本当の目的をスネイプに渡された記憶で知ってヴォルデモートと最後の戦い。最後はまさかのマルフォイのおかげでヴォルデモートを倒すという何とも言えない結末に。
さて、最終巻ですが恐らく一番誤訳が多かったですね。
ただ、誤訳か微妙なものもあります。
例えば「I wish I were dead」の訳が「私も死にたい」で直訳すぎると批判されていますが個人的にこれは問題ないというかむしろ自然だと思います。最愛のリリーを殺されたスネイプがダンブルドアに言った台詞ですがリリーがいない世界など生きていても仕方ないから私も死んでしまいたいという素晴らしい訳だと思います。否定派からは「私があの時リリーの代わりに死んでいればよかった」と訳すべきと言われていますがそもそも仮定法のwereは過去を表しているわけではない上に代わりにという単語も入っていないのでさすがに意訳しすぎかなと思います。
明らかな誤訳としては自由な屋敷しもべ妖精、➂で触れた「テッドという名前に決めたんだ、君が名付親になってくれという」誤訳バレ、ヴォルデモートとハリーの絆、ちょっとした奉仕を期待する、俺様がご所望の杖、死が語り掛ける、ブンブン飛び回るゴースト、クィディッチのファンブル王、計画が失敗したことが裏目に出る、滅亡した分霊箱、daggerが手裏剣、いつでも希少価値、迷信どっさり、ありふれた死を迎えたヴォルデモート。これが最終決戦なのだから笑うしかないww
以上、日本語訳の酷さを除けば面白い作品でした。
もう少し英語が得意なら英語版で読みたかったです。
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