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2017年01月09日20:29

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書評 山藍紫姫子「堕天使の島」

新年の抱負に何か文章をもっと書こうということを宣言したものの、久しぶりだと何から書いて良いものやら迷ったので、しばらくは書評じみたものを書こうと思う。とりあえず年末年始に読んでいた本から。


いきなり最初はBL書評。でも、これをBLに分類していいのか、耽美小説と言っていいのか、脱獄・脱走モノに分していいのか正直分からないのである。BLであることは間違いないんだけど、そんなライトに読める作品ではないから迷う。
個人的に脱獄・脱走モノというジャンルが大好きである。デュマの「モンテクリスト伯」も脱獄するし、舞台「「第十七捕虜収容所」(実は映画版知らない)、スティーブン・キング「ショーシャンクの空に」、映画「大脱走」、ドラマ「プリズン・ブレイク」、映画「孤島の王」・・・脱獄・脱走モノは結構ある。(・・・最初、舞台「BENT」を入れていたけど、この作品だけ脱獄要素が無いのに気付いたので外しました。代わりに小説・映画「メイズ・ランナー」も加えていいかな?)
脱獄モノは舞台が男だらけの監獄なのでかならずといっていいほど、性的欲求処理の問題が描かれ、だいたい誰かがレイプの犠牲になるか、男同士でヤッてしまうシーンが出てくる。だから当然BL的な展開になることはよくある。


山藍紫姫子「堕天使の島」角川文庫

この方、1980年代からご活躍のBL作家さんです。Wikiの解説にも書いてあったよ!(笑)

個人的には和製アン・ライス(「夜明けのバンパイア」=インタビュー・ウィズ・バンパイアの原作者)とひそかに呼んでいる。アン・ライスの偉大さを説明するのは別の機会にするけど、一言で説明すると「自分の読みたいBL本が無いから自分で書いたアメリカの貴腐人」です。
たぶん山藍先生も同じタイプだと思う・・・というか、たしかアン・ライスがA・N・ロクロール名義で書いているSM小説?の眠り姫シリーズの解説でそんな事書いていた気がする。アン・ライスの本の解説を山藍先生に依頼する編集者も同じ印象を抱いていることを確信したね。

チャラくてライトなBL小説とは文章力のレベルが各段に違うんですわ。80年代からの同人作家って偉大と思った。ただ、濃厚すぎて、ぎょっとすることも多いんだけどね。バイオレンスな描写がお得意なようで、貴腐人上級者向けなので、初心者には絶対すすめません。

さて、肝心の内容ですが、最初に書いたとおり脱獄モノ。孤島にある少年矯正施設に送られた少年たちの過酷な日々と脱獄までの物語ですが、そこに麻薬製造やら、所長らの虐待やら、少年たちの間で起こる摩擦や暴力や愛憎劇やらてんこ盛りです。(あと、もちろんBLなシーンもね)
ミステリアスな絶世の美少年クリスのにおい立つ色気もすごいけど、脱獄場面はほんとハラハラしていて、臨場感たっぷり。BL小説なのに(?)、スリル満点(笑)

ところで脱獄モノって逃げてからの後の展開が書かれることがあまり無いんだけど(書いてあってもサラリと描かれる程度)、この小説の場合は結構丁寧に書かれている。
これはたぶん別シリーズにつながる展開のため、という見方をするのが正しいのかもしれない。脱獄後の展開を匂わせておくのは、次のシリーズ展開を期待させるので、読後に残される嬉しいプレゼントです。
(amazonのコメント見ていたら、この本の場合は実際に別シリーズにつなげるため、再版された段階で大幅な書き換えがあった模様)

 冒頭で脱獄モノが好きって書いた時点でふと気付いたのは、脱獄モノを見たい時は何かから逃げたい願望があるということ。でも脱獄していく展開をワクワク、ドキドキしていて読んでいるのは、楽しい。たぶん脱獄モノは、個人が抱える問題を解決していくプロセスに伴う苦痛に希望を与える物語であり、安全なカタルシスを起こす物語なんだなと思う。
さっきざっと挙げただけで、脱獄モノは結構な作品数があったから、必要とされる物語なんだと思う。特に映画や舞台になっているのは、いずれも名作と呼ばれているものだし。
カタルシスの効果って偉大だなー。(カタルシス効果を解釈したアリストテレスもフロイトもすごいけど。)

まあ、今回読んだのは、分類的にはやっぱりBLだけどね。・・・うん、BLだけど面白かったよ。
(ジャンル分けの結論:BL ・・・脱獄モノには入れないことにする)
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