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2017年01月09日13:09

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『海賊とよばれた男』(山崎貴)・・・日本のエンターテインメント映画としてすぐれた出来/『ジャッキー・ブラウン』(クエンティン・タランティーノ)・・・タランティ―ノの静かで見事なセリフ劇

正直いって今年の正月の日本映画は用意されていたのだろうか。昨年ヒットを飛ばした『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『世界の片隅に』、『聲の形』などがまだ映画館でかかっているゆえなのか。公開の差し控えをやっているのではないだろうか。いかがだろうか。そのようななかで『海賊とよばれた男』が公開されている。思ったよりも話題になっていないが、見て損はない。エンタメとしては日本でこれだけの作品を撮れるチームはそうないと思う。山崎監督はそういった意味でとても安心して見られる監督の一人だと思う。

『海賊とよばれた男』は、原作者が反時代的というか、いやむしろ同時代的なのかもしれないがややナショナリズムの臭みをもっているためか、随所にそれを感じるセリフが入っていてそこは好みがわかれるのかもしれないが、話としてはベストセラーになったことがよくわかる、とてもおもしろい人物だと思う。モデルは、言わずと知れた出光興産の初代店主、出光佐三である。調べてみるとこの話に出てくる逸話はほとんが実話で、彼は敗戦前にすでに商売を始めており、そこでのし上がっていく過程が「海賊」という異名をとるほどだったわけで、アメリカとの戦争を前に満鉄の機械油を巡っての闘争もあり、メジャーに日本企業が負けない気概をみせたところも描かれている。

そして戦後に再びどこでメジャーとぶつかるのか。そこは見てのお楽しみだが、とにかく話がいくつも山場を作ってあり、あきさせない。とてもおもしろい。映画は質や撮り方がどうだろうとまず脚本が最低よく練られたもので撮ってほしい。できれば次にショットのおもしろさや撮り方のおもしろさを絡めてほしい。VFXは主に映画の舞台を用意して、映画の中の世界の大きさにできるだけ予算をかけないで迫ろうとしている。セットでやるとおそらくこのレベルの映画は撮れないだろうと思う。またアクションについても『永遠の0』での飛行シーンの切り返しショットや銃撃シーンの旋回、前後の追いかけシーンなどにもVFXは欠かせないものだ。今回も船のほとんどのシーンはロケもあったかもしれないが、ほとんどはそうではないだろう。

そうやって予算を抑えながら、話と役者の芝居でちゃんと見せていく、これが日本映画の今後の可能性であることは間違いない。もちろん話の世界が大きくなければ無理にVFXは使わなくてもいい。しかしその使い方の方向性を示している点で山崎監督はちょっとだけ業界の先駆けになっていることは間違いない。
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『ジャッキー・ブラウン』は2回目だ。以前見たときは、あまり落ち着いてみてなかったように思う。TVでやっていたので、ゆっくり見た。この映画はアクションや銃撃戦などで見せる映画ではない。ほとんどはゆっくりと進めていく映画で、女性主人公のジャッキーが悪い奴ら、間抜けな奴らの間をかいくぐりながら出し抜いて生き延びる話だ。基本的にセリフ劇で、たんたんと進んでいくが、目が離せない。次どうなっていくのか気になってしかたがなくなっていくように映像を積みかさねていく。保釈屋と組んでサミュエル・ジャクソンを出し抜くところは見事だ。

サミュエルの存在は『パルプ・フィクション』で刻み込まれている。いい役かなと思っているとそうではない。またロバート・デ・ニーロや前者のジョン・トラボルタ、ブルース・ウイリスなど有名俳優は彼の映画では血祭りにあげられるようになっている。タランティーノは、いまだに68年以降の俳優の使い方を順守しているめずらしい監督だと思う。

68年以降の俳優の起用とは何かといえば、これは世界の映画の歴史で無名の俳優で映画を撮ろうとしたブレッソンをはじめ、日本でも脇役でしかなかったチンピラ役の俳優(川谷拓三やピラニア軍団を想起すべきだ)が主役をやる時代が来たことなどを指すだろう。

それ以降の時代に映画を撮っている自覚がある監督のひとりだと言える。ハリウッドでこれだけ自覚的なのは驚くべきことだ。また、日本でこういった自覚のもとに映画を撮っている数名の監督がいるようなので、それを今年は少しずつ見ていってこの日記に紹介したいと思う。

まずは「ディストラクション・ベイビーズ」かな。

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