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2016年12月31日22:00

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第六話:テンプテーション・パニック【その7】

【創作まとめ】
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【前回】
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『リア充許すまじ。リア充爆発すべし』
 何故そこまでリア充を憎むのか。
 何故そこまでリア充を恨むのか。
 赤黒い血を全身に浴びたようなその姿からは、計り知れない邪念のようなものを感じる。
 人はきっかけさえあれば、こうも変わり果てるものなのかと驚嘆してしまう。
 ひょっとして石動君、女性と付き合ったことって無かったのかしら。
 彼女居ない歴=年齢なら、性別こそ違えど同じ境遇の人間として、その気持ちは分からなくもないわ。
 まだ見ぬ王子様、その希望に満ち溢れた未来が閉ざされたのだとしたら、私も哀しみで血の涙を流すかもしれない。
 だからといってリア充を恨むのは、逆恨みとしか言えないわ。
『オーガイン、いや石動君。止まるんです。リア充を、世のカップルを恨んでも何の解決にもなりませんよ』
 オーガインに追い付いた酒田さんが呼びかけるが反応はない。
「酒田さん、無茶しないでください。今のオーガインは理性を失い、リミッターも解除されてる状態です。攻撃されたらひとたまりもありませんよ」
『大丈夫、私は石動君を信じてますから』
 暴走したオーガインを相手に、何でそんなに信じられるのかしら。
『それが仲間ってもんでしょう!』
 酒田さんはオーガインに組み付いて、足止めしようとする。
 しかしパワーに差がありすぎて、オーガインは気に止めない感じで歩を進める。
 幸いと言うには不謹慎だが、近隣のリア充はヤミが連れ去ったので、今のところ被害は無い。
 だがそれも時間の問題で、オーガインが移動を続けている限り、いつかは民間人と遭遇するだろう。
 そうなると本気で動くブラッドフォームのオーガインを止められる者はここには居ない。
 エントラロイド以上の悲劇が起きることは間違いない。
 それを避けるためにも、早くオーガインを正気に戻さないといけないわ。
『こうなったら仕方ありません。少し手荒になりますが、不可抗力という事で許してくださいよ』
 酒田さんはオーガインから距離を取ると、拳銃を構える。
 通常装備の拳銃がどこまで通用するかはわからないけど、何もしないよりはマシね。
『正気に戻ったら謝りますから、とりあえず正気に戻ってください!』
 発砲された銃弾は、轟音を響かせる空気を突き破りオーガインに迫るが、その装甲の前では威力を発揮することはできなかった。
 しかし気を引くことは出来たのか、オーガインは酒田さんを見つめる。
『石動君、酒田です。帰って来てください!』
 想いを言葉に乗せて呼びかけるが。
『警視庁特別強襲機動隊副隊長、酒田俊之。妻子持ち、リア充と断定』
 オーガインは左腕を振り上げ、パイルバンカーの撃鉄を引き上げる。
 マズいわ、このままでは酒田さんがオーガインに殺されちゃう。
 でも指揮車両の中ではどうにも出来ない。
『うおおおおおおッ!』
 オーガインが左腕を降り下ろす瞬間、戻ってきた氷室さんがアクセルレイダーで体当たりを仕掛ける。
『石動! お前、今何をしようとしたのか分かっているのか!』
『氷室忠司、恋人と浮気相手が三人。クズリア充断定』
『ちょ、お前みんな無線で聴いてんのに、何口走ってんだよ』
 かっこよく現れた氷室さんの最低なプライベートが暴露された。
 あの人、女の敵ね。一回くらい爆発させてもいいかもしれない。
『人間は一回爆発したら死にますから!』
 あら、声に出てたみたい。
 私のいけない癖ね。
『排除開始』
 今度は氷室さんに迫るオーガイン。
『マジかよ』
『マジです。さ、とりあえず標的から外れるまで逃げますよ』
 いつの間にか酒田さんは氷室さんの後ろに座り、逃走体勢に入っている。
『しっかり掴まっててくださいよ』
『逃がさん』
 アクセル全開で走りだして逃走を図るが、オーガインも超過駆動で加速する。
 アクセルレイダーだからまだ逃げられているが、捕まるのも時間の問題といったところね。
 何とか打開策を考えないといけないけど、あのパワーとスピードに対抗する手段なんてそうそう無いわ。
「あの、通用するかどうかは分かりませんけど、こういうのはどうでしょう?」
 水無さんが申し訳なさそうに、作戦を提案してきた。


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「ねえ、本気でやるの?」
「他に手が無い以上、仕方ありませんよ」
「あの、すいません。こんな作戦で」
「師匠、私も精一杯頑張ります!」
 指揮車両から現場に出たボス、水無さん、ゆづきちゃん、私の四人が横一列に並んで氷室さん達が合流するのを待った。
「ホントにこんなんで大丈夫なの?」
「保証は出来ませんが、可能性はあると思いますよ」
 この作戦と言うには陳腐な策に、ボスは不安を隠せないようね。
 私も出来ることなら、こんなアホな作戦は避けたかったわよ。
「あ、そろそろ来ますよ」
 ゆづきちゃんの言葉に全員の気が引き締まる。
 一か八かの作戦だけど、これを成功させないともう打つ手がない。
 腹を括ってやるしかないわ。
 遠方から走り来るアクセルレイダーとオーガイン。
 バイクと並走する姿はまるでアニメの一コマのようね。
「だっしゃああああ!」
 私達の横を通り過ぎると、アクセルターン&受け身で急停止。
 スピードを出さないと車体が安定しないから、その停車方法しか無いのね。
 これは要改良だわ。
 オーガインもそれに合わせて立ち止まる。
「観念したか、リア充ども」
 映像で見るより、直接対面する方が違和感が半端無いわね。
 まずはオーガインの気をこちらに引き付けないいけないわ。
 いやこの場合、惹き付けると言ったほうがいいのかしら。
「みんな行くわよ」
「はいっ!」
「せーのっ」
「石動く〜ん」
 女性スタッフ全員で呼びかけると、オーガインはこちらに視線を向けてきた。
 暴走してても自分の名前に反応してくれて良かったわ。
「うふ〜ん」
「あは〜ん」
「こっち来て〜」
「ちょっとだけよ〜」
 慣れない行動で全員の動きがぎこちない。
 でも、もう引き下がれないわ。
 私は作戦を思い返しながら、必死でオーガインを誘惑する。
「誘惑?」
「はい、石動さんは去勢されて女性に反応しなくなったから悲しみに囚われてるんですよね」
「たぶんね」
「なら、去勢されてもモテてたらどうでしょう?」
「さあ?」
「去勢されて性欲を失ってもモテモテなら、少なくともリア充を逆恨みしなくなるんじゃないでしょうか」
「そういうもんかしら?」
「だって自分がリア充になるんですよ? 逆恨みする理由が無いじゃないですか」
「それもそうね」
「もし少しでも動きを止めるの事が出来たなら、チャンスはあります」
「なるほど」
「名付けてテンプテーション作戦です」
「は?」
「テンプテーション・パニック作戦です」
「なぜパニック付け足したし!」
 アホな作戦だと自覚してる。
 でも戦力で太刀打ち出来ない以上、相手の予想を越える奇策で攻めるしかないのよ。
「あは〜ん」
「うふ〜ん」
 私達は思い思いのセクシーポーズで誘惑する。
「何て言うか」
「気持ち悪いですね」
「うるさい外野!」
 氷室さんと酒田さんの二人は好き勝手言うけど、こっちだって必死なのよ!
 でもここまで誘惑すれば何か反応あるんじゃない?
 オーガインをチラ見してみると。
「鬼爆嵐撃!」
 手痛いツッコミが飛んできた!
 いやいやいや、生身の人間相手にマイクロミサイル乱れ撃ちとか洒落にならないわよ!
 蜘蛛の子を散らすように、マイクロミサイルから散り散りに逃げる私達。
 暴走しているせいか、軌道計算が雑で助かったわ。
 しかしこれでテンプテーション・パニック作戦も失敗に終わったわけね。
 もう私達にオーガインを止めるの手立ては残されていない。
 オーガインのエネルギーが尽きるまで、日本のリア充は爆発させられるわ。
 だいたい何で私ばかりこんな悲惨な目に遭うのよ。
 思えば今回、シャドールの作戦に介入したのも、元を正せば博士が原因じゃない。
 その当の本人は早々に逃げていったし、後始末としては割りに合わないわよ。
 そうよ、何で私がこんな所で苦労しなくちゃいけないのよ。
 それにまだますらおヘヴン・参もプレイしてないんだし、死んでられないわ。
 あれは制作発表の時から楽しみにしてたんだから。
 あー腹立ってきたわ。
 こんな作戦、さっさと終わらせてますらおヘヴン・参をプレイするんだから!
「リア充、爆発」
「うっさいわよ、こっちは人生最後になるかもしれないモノローグを語ってんだから邪魔しないで!」
 まったく、暴走してても空気だけは読めない男ね。
「だいたいリア充爆発とか言うけど、こんなに女性比率高い職場で何の不満があるわけ?」
「・・・・・・」
「文句があるなら八つ当たりじゃなくて、ハッキリ言いなさいよ」
「・・・・・・」
「黙ってたら何もわかんないでしょ!」
 私は怒りに任せてローキックを打ち込む。
「ほら、不満があるなら言ってみなさいよ」
「あ、いえ、不満なんて」
「は? あんだけ暴れておいて、今さら無いで通るわけないでしょ」
「あの、桜子さん、落ち着いてください」
「反論しないの、ほら気を付け!」
「はいっ!」
 オーガインは私の気迫に圧されたのか、条件反射で背筋を伸ばす。
「今よ!」
 その瞬間を見計らって氷室さんに合図を送る。
「任せてください!」
 そこにはオーガインがブラッドフォームになった際に投げ捨てたヘブンズゲートを構える氷室さんが居た。
 私達が時間を稼いでいる間に車田さんが拾ってきてくれたものよ。
 本来なら生身の人間が扱うと、強烈な反動で腕が引きちぎられるかもしれない。
 だか、三人がかりならあるいは。
 氷室さんが照準を絞り、酒田さんと車田さんが両脇から銃身を固定する。
「石動、戻ってこい!」
「目を覚ましてください、石動君!」
「いつまでも寝ぼけてんじゃねえよ!」
 三人は息を合わせて引き金を引くと、大地を揺るがす轟音と衝撃を合図に弾丸が発射される。
 それは闇を切り裂く閃光のように、一直線にオーガインへと向かう。
「いや自分はもう・・・・・・」
 言い訳するオーガインを無視するように、弾丸は彼の顎先、わずか0.01ミリをかすめる。
 改造人間オーガインは人間の、石動雷馬の脳を使用している。
 顎先をかすめた衝撃はフレームを通して、脳へと伝わる。
 その結果、オーガインは人間のように、いや、人間として脳震盪を起こす。
 直撃させるのではなく、かすめるだけ。
 その衝撃が脳を揺らす。
 その瞬間、オーガインは糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
 まったく、世話のかかる男ね。
「あの、ヘブンズゲートを撃つ前に正気に戻ってませんでした?」
「そうね、心なしかアーマーも元の色に戻りかけてたし」
「それって私達の色仕掛けよりも、桜子師匠の言葉に心打たれたってことですか?」
「なんか愛を見せつけられたって感じね」
 え? なにその流れ。
 私と石動君の愛?
 勘弁してよ、そんなもんあるわけないでしょ。
「いやいや、やめてくださいよ」
 女三人集まればかしましいと言う通り、彼女達の推測は止まらないわけで。
「リア充爆発しろって、お前がリア充やないかーい」
「でもでも、それで寂しさを感じてたってことは〜」
「桜子ちゃんにかまって欲しかったってこと?」
「キャー」
 こっちがキャーって恐怖の叫びをあげたい気分よ。
 ごめん、本気で勘弁してください。


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 恋ばなっぽい何かに花を咲かせるボスたちとは裏腹に、オーガインはしばらく警視庁にて封印されることになった。
 ブラッドフォームの副作用とはいえ、暴走した事実は容認出来ないということだった。
 幸いにも一般人にこそ被害は出なかったが、特機の仲間を攻撃した事実が決め手となったようね。
 まったく、これじゃしばらくオーガインのデータが採れないじゃない。
「いやー、僕が逃げた後、かなり大変だったみたいだね」
「大変どころじゃありませんよ。危うくオーガインに殺されかけたんですから」
 博士は陽気にエロゲーを堪能している。
 元を正せば、この人がエロゲー買いに行ったことが原因なのよね。
 風が吹けば桶屋が儲かる、みたいなピタゴラ事件だわ。
「僕も見たかったなー、オーガインのブラッドフォーム」
「残念でしたね、データだけで我慢してください」
「でもまあ、おかげで貴重なデータが手に入ったよ」
 そう言うと博士はパソコンの音声ファイルを開く。
『あは〜ん、うふ〜ん』
「そのデータ、消してくださいって頼みましたよね?」
「ダメだよ、こんな貴重なデータ消せるわけがない」
「消・し・て・く・だ・さ・い」
 私は指をポキポキと鳴らしながら博士に迫る。
「そうだな、僕ことをお兄ちゃんと呼んでくれたら消してあげるよ」
「この卑怯者め」
「何とでも言うがいいさ」
 そんな日常会話をしていると、突然研究室のドアが開けられる。
「園咲はいるデスか?」
 入ってきたのはミカエラ博士。
 凄い剣幕だけど、何かあったのかしら。
「ユーに買いに行ってもらった『世紀末巫女伝説アンジェラ』、メーカーにユーザー認証登録されてて起動できないネ」
 あ。たしか特機で博士の荷物検査した時に水無さんが登録しちゃったんだっけ。
「それは特機の連中がだな・・・・・・」
 事の顛末を博士が説明する。
「オノレ特機、許さないネ。ワタシのエントラロイドも殺されたシ、このまま黙って引き下がるワケにはいかないネ」
 陽気なミカエラ博士が珍しく怒りに燃えているわ。
 それだけ世紀末巫女伝説アンジェラへの思い入れが強いと言うことね。
「いいだロウ、ワタシが相手シテやるネ!」
 うーん、ミカエラ博士に同情するべきなのか、特機として理不尽と感じるべきなのか複雑な気分ね。
 だがミカエラ博士の目を見る限り本気のようね。
 オーガイン不在の特機でどこまで戦えるか分からないけど、何か手を打っておいた方が良さそうね。
 アクセルレイダーの改造プランも固まってきたし、試してみるのも悪くはないわ。
 私の発明品がミカエラ博士のバイオロイドと対決する。
 これはなかなか楽しめそうなシチュエーションね。
 ミカエラ博士、胸を借りるつもりで勝負に挑ませていただきます。
 私は決意を胸に、新たな強化プランを練りだした。


【次回予告】
エミール「ついに次回は四大長の一人、ミカエラ博士が動き出しますね」
桜子「私の発明品がどこまで通用するのか見ものね」
エミール「おー、勝つ気満々じゃないですか」
桜子「まあね、私も色々経験を積んだわけだし」
エミール「でも大人の階段はなかなか昇らない乙女(笑)だった」
桜子「乙女に年齢制限は無いのよ」
エミール「次回、超攻鬼装オーガイン第七話『疾走、超速走攻』に」
桜子「チャージ・・・・・・」
エミール「ブースト・イグニッション!」
桜子「え、なにそれ聞いてないわよ?」

【第七話へ続く】
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【捕捉】
やっと終わった。
長かった。
元々は二つの話に別れてたんですよ、今回。
博士がエロゲー買いに行く話と、オーガインがブラッドフォームに目覚める話で。
でもまあ、両方下ネタっぽい話なので一つに纏めたら、この有り様です。
本当に長くなってごめんなさい。
でもね、このオーガイン。
コメディな会話劇みたいなのも売りにしたいから、会話が無駄に長くなるのよ。
各シーンで、必ず重要なことや伏線を張ってるから、バッサリ削るわけにもいかないわけで。
長々としましたが、お付き合いいただけると幸いです。

それでは、次の話もよろしくお願いします。
ここまで御拝読いただきありがとうございました。

追伸
信じられるか?
今回、途中からパソコンの調子が悪くて、その3以降はスマホのフリック入力で書いたんだぜ?
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