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2016年12月29日20:46

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>東日本大震災と原発事故の一連の出来事は「政策の窓モデル」において、衝撃的出来事(東日本大震災と原発事故)とインディケーター(原発停止による電力構成比の変化)にあたり、エネルギー問題への注目度を高め>

第二章 東日本大震災前後における地熱発電の政策的分析

 第一章で示した通りであるならば、地熱発電は、
1970年代〜1980年代は石油代替のエネルギーとして、
1990年代〜2010年代は、再生可能エネルギーとして、時代の要求に沿って順調に設備量を増やしているはずである。
ところが現実はそうではない。前述した、新エネルギー法(1997年)、RPS 法(2002年)には地熱発電(バイナリー発電は除く)は対象とならず、1999年の八丈島地熱発電所を最後に、10年以上地熱発電開発(バイナリー発電を除く)は動きを見せなかった。

図4<日本の地熱発電設備容量及び発電電力量(万kW)>

出所:資源エネルギー庁HP「平成25年度エネルギーに関する年次報告」


ところが、2011年付近から次々と地熱発電所の新規建設計画が立ち上がり始めた。この背景には、2011年3月11日に発生した東日本大震災が大きく関わっていると推測される。

そこで、エネルギー政策案の一つとしての地熱発電の重要性と存続可能性を、
東日本大震災の前後で「政策の窓モデル」の”政策の存続基準”によって分析したいと思う。
存続基準は
(1)技術的実行可能性、
(2)政策共同体構成員の価値との整合性、
(3)許容できるコスト、
(4)一般大衆の黙認、
(5)選挙で選任される政治家の支持、
の5項目である。政策案はこの5項目を満たすことで、重要かつ存続可能な政策案であるとみなされる。


2−1 東日本大震災以前の地熱発電の存続基準分析

 東日本大震災以前の地熱発電の、政策案としての重要性と存続可能性を、存続基準の(1)技術的実行可能性、(2)政策共同体構成員の価値との整合性、(3)許容できるコスト、(4)一般大衆の黙認、(5)選挙で選任される政治家の支持、の5項目で評価。評価は「○/△/×」で行う。
図5<震災以前の存続基準分析>



分析の考察

(1)と(2)に関しては、地熱発電技術が確立していることと、地熱専門家の中で意見の相違が見られないことから基準を満たしているとみなす。
(3)は、稼働までの初期費用の高さ、国立・国定公園内における規制によって、採算性が悪く高コストであると判断する。
(4)については、一般国民の大半は、地熱に対して反対はないと推測する。2012年の日本経済新聞本社の調査でも、熱源を持つ21の都道県に地熱発電開発で明確に反対したところはなかった。しかし
利害関係が強い、温泉組合や自然保護団体の反対は強いと判断。
(5)長年政権与党である自民党は、経済界との結びつきも強いことから、原子力発電推進の姿勢である。またその他も地熱発電の政治的バックアップは弱いと判断。


以上5項目を満たしていないため、震災以前の地熱発電は、重要かつ存続可能な政策案とはみなされなかったと推測する。


2−2 東日本大震災が政策過程に与えた影響

 東日本大震災は未曾有の大災害である。被災地のみならず日本国民全体が大きなダメージを受けた。特に、副次的に発生した福島第一原発事故は、ショッキングな出来事として、国民の原発への不信感を極限にまで高めた。また、原発が停止したことで、火力偏重へと電力構成比が変化し、温室効果ガス排出量と貿易赤字の増加を招いた。


エネルギー政策に対する影響

 東日本大震災と原発事故の一連の出来事は「政策の窓モデル」において、衝撃的出来事(東日本大震災と原発事故)とインディケーター(原発停止による電力構成比の変化)にあたり、エネルギー問題への注目度を高めたといえる。


東日本大震災以降の政策的な動き
•超党派地熱発電普及推進議員連盟の発足
2011年9月に結成。福田康夫(元総理大臣)、二階俊博(自民党総務会長)、武部勤(元自民党幹事長)などの大物議員や地熱資源を持つ選挙区から選出された議員を中心に構成される。政策案の決定過程に一定の発言力を持つことが推測できる。


•再生可能エネルギー特別措置法(固定価格買い取り制度)開始
2012年7月より開始。企業などが太陽光や風力、地熱などで起こした電気を、電力会社がすべて固定価格で買い取る仕組み。


•国立・国定公園(第1・2・3種特別地区)における規制緩和
2012年3月に、第2・3種特別地区の「自然環境の保全と地熱開発の調和が十分に図られる優良事例」は、熱源の真上からの垂直掘削や発電所建設を許可。2015年10月には、第1種特別地区での建設物に対する高さ規制の撤廃、規制対象地域の周辺から地熱資源までの傾斜掘削を許可。これにより、開発可能地域が広がった。


•地熱関連予算の増大(2011年度:約4.9億円→2012年度:150.5億円)
震災の次年度以降、地熱発電関連の予算がつくようになった。地熱資源開発調査事業費助成金交付事業の拡充により初期コストが低減。地熱開発理解促進関連事業支援補助金におり温泉業者へのバックアップ支援が行われるようになる。

2−3 東日本大震災以降の地熱発電の存続基準分析
図6<震災以降の存続基準分析>



分析の考察

(1)と(2)と(4)については震災以前と同じ。
(3)については、開発段階における補助制度が充実したこと、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に地熱発電が適用されたこと、2012年と2015年の2回に渡る国立・国定公園(第1・2・3種特別地区)における規制緩和によって、許容できるコストまで落ち着いたと判断。
(5)は、東日本大震災以降、国民のムードが反原発に高まっていることで、原発促進派の議員も反原発に耳を傾けなければならなくなっていること、総理経験者も所属する超党派地熱発電普及推進議員連盟が結成されたことで政治的なバックアップを得たと判断。


以上5項目をほぼ満たしたため、震災以降地熱発電は、重要かつ存続可能な政策案とみなされるようになったと推測する。


第二章 まとめ
•震災以前の地熱発電は、重要かつ存続可能な政策案とはみなされなかったと推測できる。
•東日本大震災と原発事故の一連の出来事は、「政策の窓モデル」においてエネルギー問題への注目度を高める要因となる、衝撃的出来事(東日本大震災と原発事故)とインディケーター(原発停止による電力構成比の変化)に当てはまり、地熱推進政策が増加したことから「政策の流れ」と超党派の議員連盟が結成されたことから「政治の流れ」に大きな影響を与えたと言えるだろう。
•震災以降の地熱発電は、重要かつ存続可能な政策案とみなされるようになったと推測できる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーーー
http://www.waseda.jp/sem-fox/memb/14s/hamashima/hamashima.index.html
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